RIDEIS
何となく思いついた話です。気が向いたら連載するかもしれません。
「――――あんたは、一つ願いを叶えることが出来るわ。何を願う?」
目の前の可愛い女の子はめんどくさそうに言う。
「そんなの、決まってる。俺の願いは――――」
―――――――――――――
……時は一日前に遡る。
セミが五月蝿いくらい鳴いている夏の日、俺はいつものように、親友の有也と一緒に学校で他愛ない話をしていた。
有也は保育園からの親友で、高校生になってもいつも大体一緒にいる。ただ、一つだけ有也に嫉妬してしまう事がある。それは、有也が俺よりモテることだ。俺は告白されたことなんて一度もないけど、有也は今までに十回以上は告白されたことがある。しかも、それを全て断ってきた。きっと、有也には本命がいるのだ。だからこそ告白を全て断ってきているのだ。そうに違いない。
「なぁ卓斗。明日肝試しするんだけど、卓斗も来ねぇ?」
「肝試し?別に良いけど……。誰が来るんだ?」
「えっと、俺と、北見と、長谷川と、古瀬と、蒼宮の五人かな。いいだろ、女子三人いるんだし」
「……まぁ」
正直、蒼宮が来てくれるのなら他はどうでも良かった。それに有也のことだから、きっと男女二人ずつでペアを組むはずだ。もし蒼宮とペアになれたら……。
考えただけで口が自然とにやけてしまった。
「じゃ、決まり!今日の深夜零時、学校集合な!」
そうして俺は、肝試しに参加することになった。
……深夜零時になった。学校に来ると、もうすでにみんな集まっていた。俺が最後のようだ。
「おーい!遅いぞ卓斗ー!」
有也がそう叫び、俺はみんなの所まで走っていった。
ペアはくじ引きで決めた。それなら誰も文句は言わない。俺も安心できた。まぁ、蒼宮さんじゃなかったらあまりやる気は出ないけど。
そして、ペアが決まった。有也と古瀬、北見と長谷川、そして――――俺と蒼宮。
まるで夢でも見ているようだった。これが夢なら覚めないで欲しい。こんなに嬉しく思ったのは何年ぶりだろう。俺は有也に感謝しなければならない。
「じゃ、最初は卓斗と蒼宮ペアな。俺達はここで待ってるから」
みんなに見送られて、俺達は出発した。ルートはいたって簡単で、学校の中の「理科室」「音楽室」「保健室」のどこかに入り、その部屋にある紙を持って出てくるだけだ。有也によると、何も仕掛けはしてないから安心して、ということだった。……本当だろうか。
俺達は一階の廊下を歩いていた。
「わたし、肝試しって初めてなんだ。赤根くんは何回もやったことあるの?」
「あ、ああ。まぁ、有也によく誘われるからな」
「へぇ~。白俣くんって、よくこうゆう企画考えるよね。わたしは今回初めて参加したけど、赤根くんはいつも参加してるの?」
「まぁ、そうだな」
「やっぱり、二人は仲良いんだね!」
そんな他愛ない会話がずっと続いていた。
そして、俺達は理科室に着いた。夜の理科室はいつ見ても怖い。置いてある骸骨が今にも追いかけてくるんじゃないかと思ってしまう。それなのに、蒼宮は恐れている素振りを全くせず、普通に理科室へと入ってしまった。
「えっ、ちょ、ちょっと……」
「あっ!あったよ紙!結構簡単だねー」
そう言って蒼宮は無邪気に笑った。やばい、俺の方が怖いかもしれない。蒼宮がこうゆうの得意だとは思わなかった。
「これで終わりなんだね。何だかちょっと物足りないかも」
「えっ」
そんなにつまらなかっただろうか。俺は結構怖かったと思うけど……。でも、蒼宮の前で怖いだなんて言えるはずがなかった。だから俺は、帰りの時もできるだけ平然を装っていた。
事件が起きたのは、その帰りの時。
「赤根くんにはさ、絶対に叶えたい願いとかって、ある?」
「ん~、今は特に」
「そっかぁ。実はわたしにはあるんだ。絶対にこれだけは叶えたいっていう願い事」
「へぇ~、どんな?」
そう言って蒼宮の方を振り返ったときにはもう、蒼宮はどこかへと消えてしまっていた。ほんの数秒の間だったと思う。
「……え?蒼宮?」
突然のことで、俺は頭が真っ白になってしまった。とにかく、蒼宮を見つけ出そうと必死になった。
それから、俺は学校中を探し回った。もう怖さなんてどうでも良かった。蒼宮さえ見つけられるのならば、他の事なんてどうでも良いと思った。外で待ってくれている友達のことなど、この時の俺は気にしていなかった。
「蒼宮!どこだ!蒼宮ー!!」
いくら叫んでも、誰も応えてはくれなかった。
それから時間が経って、俺は理科室に戻ってきた。まさか、ここにはいないだろうと思ったけれど、俺は理科室のドアを静かに開けてみた。
――――そして“それ”は、俺の予想を裏切って、そこにあった。
「……うわあああああああああああああああああああ!!!」
それから、俺は気を失ってしまった。
――――どれくらいか時間が経ち、俺は目を覚ました。
「卓斗!大丈夫か?」
「……有……也……?あれ、俺……」
「理科室の入り口で倒れてたのを俺達で見つけたんだよ。……その、蒼宮は……」
有也は言いにくそうに応える。そして、俺はあの時のことを全て思い出した。
「……蒼宮っ!」
俺は起きあがって、理科室の中にある“それ”を見た。
――――やっぱり、現実だった。夢でも何でもない、ただの現実。できればそれが、夢であって欲しいと願った。
……蒼宮は死んでいた。それも、体にたくさんのナイフを刺された状態で。
他のみんなは、廊下いるらしい。蒼宮の死体は見ていられないそうだ。
そんなこと、俺だって同じだ。蒼宮が死んでいる所なんて見たくなかった。いや、死んでいること自体が信じられなかった。だって、蒼宮はさっきまで俺と一緒に喋っていたのだから。
「……さっき、警察と救急車に連絡しておいたんだ。だから、もうすぐ来ると思う。でも、もう蒼宮は……多分……」
「……くそっ!」
俺は床を思いっきり殴った。拳が腫れるように痛かった。
「卓斗……」
「ごめん、有也。俺ちょっと、近くの教室に行くよ。一人になりたいんだ」
「……分かった」
それから、俺は近くの教室に行った。三ーBの教室だった。
どうしてこんな事になったのだろう。蒼宮は殺されてしまったのだろうか。でも、俺が探し回ってたときは誰とも会わなかった。でも、蒼宮が自殺したとは思えない。あんな死に方、絶対に辛いに決まっている。……じゃあ誰が殺したんだ?
そう考え事をしている時だった。
急に目の前が明るくなり出したのだ。俺は驚いて、座っていた机から落ちてしまった。
「いてて……」
「あんたが赤根卓斗ね?」
声が聞こえて前を見てみると、目の前に可愛い美少女の姿があった。赤髪のロングヘアに、透き通るような緑色の目。どこかの外国人の人かと思った。
「えっと、キミは?」
「わたしはあんた専属の精霊よ。さっそくだけど卓斗」
少女の青い目がきらっと輝いた。
「あんたは、一つ願いを叶えることが出来るわ。何を願う?」
少女はめんどくさそうに言う。
俺は少し驚いたが、落ち着きを取り戻して少女に言った。
「そんなの、決まってる。俺の願いは――――蒼宮を生き返らせることだ」
「……その願い、しっかりと受け取ったわ。おめでとう、あんたは今日からRIDEISを使えるようになったわ」
「……は?RIDEIS?」
「RIDEISってのは、今使えるようになった力のことよ。そのRIDEISを使える奴らを全員倒すことが出来たら、あんたの願いは無事叶えられるのよ」
「は?いや、ちょっと待て。俺はそんなこと……」
「もう契約してしまったんだから、取り消しは出来ないわよ。全員倒せるまで精々頑張りなさい」
もう滅茶苦茶だった。何がRIDEISだ。何が契約だ。俺は俺の願いを言っただけなんだぞ。
――――でも、全員倒したら、蒼宮は生き返る。
「……くそ、やるよ。やってやる。蒼宮を生き返らせるためだったら、俺は何だって……!」
「そう。なら頑張ってね。あと倒さなければならない奴らは八人いるから」
それから、俺の人生は大きく変わったのだった。
――――蒼宮を生き返らせる、その願いのためだけに。
全然うまくまとめられませんでした。分かりにくかったらすいません。
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