表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫と能力と夢映し  作者: れぇいぐ
#6 過去と未来と現在と
72/75

人食い


15:46


「最近物騒な事件が起きてるからさっさと帰れよ。」


その、代理の体育教師の一言で今日1日の学校は終わった。


今日は朝から妙な空気で正直何も知らない自分には居づらかった。

今日来た転校生がなんなのか、昇たちとどう関係しているのか聞いたが「いや、多分俺らの勘違いだと思う」と言って教えてはくれなかった。


(勘違いだと思っている割には、みんな疑ってるじゃん...)


自分だけ仲間はずれにされているようでいい気分ではない。


そんなこともあり、今朝昇に約束されていた放課後の時間をこれから過ごすところだ。


帰りの電車まではいつも通りではあったが、いつも3、4駅早く降りる昇は1つ隣の駅、霧狐山という少し物騒な名前の山の前の駅に降りた。


昇は夢渡を連れて霧狐山を登り始めた。



なんの目的で俺をここに連れてきたかは分からないが、今朝の雰囲気からして何か真面目なことだろうと思った。


「なぁ、夢渡。一度死んだ生命が生き返る...いや生き返らせることは出来ると思うか?」

「なんだよいきなり、普通できないじゃない?

能力科の授業でも言ってたじゃん。

能力(スキル)にはたくさんに種類があっても、能力にも(ことわり)や禁忌があってそれに背く物は存在しえないって。」

「そうだよな。」

「あ、でも錬金術みたいに賢者の石とかそういうのあればできるじゃね?

それなりの等価交換とかあると思うけどね。」

「はは、そうだよな錬金術ねぇ。

....等価交換..か。」

「それで、なんでこんなところに来たの?」

「お、そろそろ着くぞ。」


少し先に山頂という看板が見えたのきっとそこだろうと思ったが、違った。


手前上がりで、道を曲がって軽く茂みを抜け、狭い獣道に沿ってまっすぐ歩いた。

次第に霧が濃くなり初めて少し不安になる。



「お、おいどこまで行くんだよ。」

「あー、そろそろの筈なんだけどなぁ。」


昇の「そろそろ」は当てにならないようだ。と思ったがそうでもなかった。

一度濃くなった霧はスッと消え、少し先にはまるでファンタジーとかで見るようなでかく、この山には合わない木が立っていた。


昇はその木の根っこの隙間から中に入っていくのに着いて行った。


(こんなでかい木の中に入れるのかよ...)


普通なら何もない広いようで狭いこの空間は誰かが住んでいるような、実用的な内装をしていた。


「おーいユキエー」


昇が呼ぶ声と物影から一匹の狐が出てきた。


「狐?」

「連れてきたようじゃな。」

「しゃ...喋った!?」


まさか、狐が喋るとは思わなかった。


「うむ、その驚く様新鮮じゃのう。」

「喜んでないで、あれお願い。」

「わかったわかった。」


まだ驚いている夢渡を置いて一人と一匹は勝手に話を進め、唐突にしゃべるのをやめて静かになった。


「おい昇...何なんだよあの喋る狐は!!」

「そんな驚くものじゃないだろ。」

「いや驚くだろ!!」

「あ、こいつスゲエ女に変身できるだぜ。」

「え、まじで!じゃなくて、なんでお前がこんなすごい狐と...」

「でユキエどうだ?」

「おい。」

「....」


いきなりこんなとこまで来させられ、

喋る狐と対面させられ何がどうなってるか訳わからなかった。


「もういいぞ。」

「そうか。

すまんゆめ、先に帰っててくれないか。」

「なんだよ、いきなりここまで連れてきて一人で帰れって。」

「そのうちお前に教えるから!!」

「わ、分かったよ...」

「本当にごめん、ここを出てまっすぐ行けば山の入口に戻れるから。」


疑問ばかりで不満だが、昇は俺にためにしてくれていることなのだろう、そう察しこれ以上何も言わずにここを立ち去った。



「ああ、もう外は暗いな...」


本当は一人でこんな山を降りるのが怖いだけだったのかもしれない。

ユキエという狐の住処から離れて、誰かが通って出来たような狭い道をまっすぐ歩いた。

来るとき同様にすぐに霧は濃くなり、寒さを感じてきた。


すると、濃い霧の向こうで一瞬で黒い何か近づいてくるのに気が付いた。


「の...昇なのか?」




「で、どうだったんだよ?」


夢渡が去って少しして昇はまた聞いた。


ユキエの〈心読術〉を使えば、ゆめの中の本当の記憶があるかどうか分かるかもしれない、だからゆめをわざわざここまで来てもらった。


「うむ...上手く言えぬが、記憶が残ってるのかどうかはよく分からぬが、奥深くに何かあるみたいじゃから、きっとそれが夢渡殿の記憶である可能性はあるかもしれぬの。」

「それじゃあ...」

「じゃが、それをどう掘り起こすか...難しいかもしれぬ。

夢渡殿は能力(スキル)がつかえぬのでは?」

「うん、能力の存在も忘れてたし使い方も自分が持っているのかさえわからないって。」

「そうか....んっ!」


ユキエは唐突に頭を抑えて何かを堪えていた。


「どうした?」

「いや、ただの頭痛じゃ...そうじゃ、お主に言っておかないといけないことがある。」

「なんだよ...」

「もうここには来るでない。」

「え、どうして...」

「...っは!やばいぞ。」

「いや、いまの話の続きは...」

「後でいいじゃろ、夢渡殿が危険じゃ。」


ユキエは服に潜り込んで〈擬人化(ヒューマニフィー)〉の力で人間の姿に変わって、昇を引っ張って木の中から出た。


「ゆめが危ないって!?」

「お主は最近噂になってるあの物騒な事件知っておるか?」

「ああ、人食い事件の。」

「そいつが霧狐山(ここ)にいるかもしれぬ。」




霧の向こうから近づいてくる何かから、嫌なオーラがしてくる分かった。


「の...昇るじゃない...」


(なんかやばそうだ...逃げなきゃ。)


夢渡は振り向いてすぐに走り昇たちの方に行こうとした。

すると、後ろも猛スピード追いかけてきた。


「っ!?」


差ができることはなく、一瞬にして追いつかれ凄い力で後ろから取り押さえられた。


「うぁ!!」


肩から凄い力で地面に押さえつけられ身動きも取れなくなる。

なんとか後ろを見るとそこには、人間の形をした人間ではない化物のような姿が見えた。

ボロボロの服をきたそいつは黒い顔からは赤く光る目があり、何かを大きなものをまるごと入るような左右に大きく裂けた口に、何かの血がこびりついた鋭い歯。



(こ...こいつが人食いの...なんでここに...)



やつは口を大きく開いてまさに俺を食べようと顔を近づけた。


「う...うあぁああ!」


夢渡の叫び声と同時に横の茂みからなにか飛び出てきた、そのまま上に乗っかっていたやつを蹴り飛ばした。


蹴り飛ばしたやつの姿はすぐに消えてどこかへ行ったようだ。


「た、助かった...そのありが」


夢渡を助けてくれた人は夢渡がお礼を言う前に目の前から瞬間移動したかのように一瞬にして消えた。


正直何もかもが一瞬すぎて頭が追いついていないが、自分が助かったことだけは全身から強ばっていた力が抜けていたことでちゃんと分かっていた。


(...ははは...助かった...んだよな...

茶色く長い髪...明日ちゃんとお礼を言おう。)



力が抜けて寝転がっていると昇の声がした。


(俺の名前を呼んでる、俺の事心配になって来たんだ....)


「ゆめ!!」

「昇、俺は大丈夫だ。あの子が助けてくれた...」

「あの子って?」

「...おい...おまえその隣の超美人だれだよ!!」


夢渡は立ち上がって昇を蹴り飛ばした、それからさらに丸くなる昇を足で踏みつぶした。


「んだよ!俺を助けにくてくれたんじゃないのかよ!!!自分の彼女を自慢したかっただけかよふざけるなよ!

ってかいつの間に彼女が出来たんだよ」

「イテッ、痛いって!!確かにユキエは俺の彼女だが、イテッ!!」

「誰がお主のガールフレンドじゃ!」

「ちょ、ユキエ踏むな!!

あ、けど意外と気持ちいいかも....」

「気持ちが悪い、っぞ!」


グギッ


「ぐぁああ!」



その後この美人さんはさっきの狐であり、この山の神様であり能力で人間の姿になれるってことを説明されたが、昇がこんな美人になれる狐の神と知り合いであることが気に食わなかった。



次回は今年中に頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ