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猫と能力と夢映し  作者: れぇいぐ
#1 猫と少女と五大能力
7/75

手がかり

12月26日16:21


目の前に座る猫娘カンナから目を離し、壁に掛けられた丸時計を確認すると既に4時を上回っていたことに気がついた。


(そろそろ下校の時間か....)


この時期の三年生はすでに部活を引退して、塾や勉強するために帰宅しているはずだ。

学校をサボった俺を除いては。


(まぁ、俺以外にもサボっている人はいるだろうがな。)


しかしいつまでも休んむことは出来ない。

夢渡は推薦組ではなく一般受験組なので、願書のことなどがあるので学校に行かなければならなかった。

そしてカレンダーを確認し、あることに気がついた。


(それに明日は終業式じゃねえか!)


ということで明日は行くという方針にした。


「まずは、カンナをどうにかしないといけないな....」


もしも本当に人間だったら親がいて、帰る家があるはずだ。

いつまでもここに監禁するわけにもいかない。警察に届けがでているかもしれないけど、結局この子自身自分のことを知らないのではどうしようもない。

しかし、可能性は一つだけではなく、この子はあの日夢渡が拾った猫と同じである可能性も高いのだ。

もしも元は猫だった場合....


(どうしようもないな。)


たぶん姉ならここに住むことを許すかもしれない。

両親は帰ってくることは無いので気にすることはない。

問題は昇や近所、他の人にどう思われてしまうかだ。


そんな可能性を避けるためにも出来るだけカンナ(この子)から情報を聞き出す必要があるのだが....

あれから数時間、向き合って質問攻めをするが、ほとんどの解答は「....知らない。」と一言。

そして唯一彼女の口から聞き出せた記憶は、あの夜猫のそばに置いてあった牛乳が美味しかったことだけ。


(ダメだこりゃ...)


こいつを外に連れ出したいところだが、外すことの出来ない耳と尻尾を見られたら通報されるか、痛い目でみられてしまう。


(どうすればいいんだろうか...)


「あ。」


昨日の襲って来た二人組の、BL夫婦でも捕まえて、聞き出すという手があった。


・・・


能力(スキル)の使えない俺が一体あの二人にどう立ち向かうのか考えた。


(あの二人に蜂の巣にされじゃん...)


耳と尻尾を隠せる服装を準備しないといけないから、姉ちゃんを待つとするか...


「....ねぇ、暇」

「俺もだよ...」

「.....なんか面白いことないかな」


(今この状態がある意味面白いわ。)


「....何が面白いの...?」

「おい!勝手に人の考えを読み取るな!!

それにしてもさ、その頭の耳って聞こえてるの?」

「...知らない。」


(さっきからずっとこれかよ...流石に我慢ならない。

なら、ちょっと遊んでやるか。)


自分は椅子から立ち上がり、カンナに近寄り顔と顔が5cm位の距離に近づいた。


「...なに...?」

「じっとして。」


カンナの顔を両手で固定した。


「...」

「目を(つぶ)って。」


カンナは素直にゆっくり目を瞑ってくれた。


(からかっているのにここまで、冷静でいられるとちょっと悔しいな....

まぁこれからだ...)


俺はそのまま顔を上に持って行き、カンナの頭についてる猫(?)の耳の入り口を近づけ....


「バーッカ!!!」


大声をだした。

するとカンナはビクッと身体を跳ね上がらせて驚き、そして目を大きく開いていた。


「よし、本物だな。」


俺は最初からこの耳が本物であること知っていた。

こいつを拾ったとき、耳を触り彼女が反応したことでこの耳には神経が通っていて、ちゃんとした耳としての役割も果たしているのでは無いかと....


「...」


すると、彼女の顔は赤くなっていて、今でも泣きそうな顔をしているのは分かった。


「ちょ、泣きそうになるなよ。ごめん、本当にごめんってば!!」

「...」

「美味しい牛乳あげるから!!」


(ま、冷蔵庫にある余り物だけど...)


「...」


それでもダメのようだ。


「分かった、一回だけなんでもしてやるから!!」

「....じゃあ私を抱いて」

「ファッ!?」

「....抱いて。」


(こいついきなり何言ってるんだ!?)


「....私じゃ嫌?」

「いやってわけじゃ....」


(確かにこいつはプロポーションも大分良いし...

結構俺好みだったりも...)


「じゃなくて!無理だろ!!俺は中学生だし、お前だったまだおれと同じくらいの....」

「....抱くのに年齢関係あるの?」

「え、いや、だってねぇ...」


そこへ姉が帰ってきた。


「ただいまー」

「おかえりー」


何も知らないお姉ちゃんを笑顔で迎えてやった。

姉ちゃんは泣きそうな顔をしているカンナを見て俺を睨みつけた。


「..あんた...女の子を泣かせてるんじゃないよ!!」


パチッ


「よくも...よくも殴ったね!!親父にもされたことないのに!」


姉はビンタした俺を無視しカンナに声をかけた。


「大丈夫?ゆめとに何されたの?」

「....いじめられた」

「ごめんね、ゆめとったらバカで。」


俺自身カンナをいじめたことは認めよう、けどここまで怒るようなことでは無いとは思うんだが。


「ほら、謝れ!ゆめと!!」

「もう謝ったけど、許してくれないんだ....」

「じゃあ、もう一回!!」

「...悪かった。」

「...」


(はぁ....)


「カンナ!!!ごめん!!」


(ちょっとからかってやっただけなのに、こんなことになるなんて...)


「カンナ?彼女の名前?」

「え?ああ。そうだよ。さっきつけた。」

「いい名前じゃん」

「....でしょ」


(俺が付けてやった名前なのになんでこいつが威張っているのだよ。)


姉はカンナの頭を撫で、そうされているカンナは気持ち良さそうに受け入れていた。


(やれやれ...)


「そうだ姉ちゃん。今日バイトないよね?」

「ん?そうだけど、どうしたの突然?」

「これから塾だからさ、カンナの外出用の服を準備してほしいんだ。もちろん耳と尻尾を隠せるやつね。」


流石に、今の耳と尻尾をさらけ出している服装じゃあ流石に外を歩き辛い。


園花は嬉しそうに答えた。


「え、いいよ!それじゃあカンナちゃーん。

一緒に服装選びましょ〜」

「....うん。」


カンナは姉に引っ張られ、2階の姉の部屋へ連れ込まれた。


「さて、俺も行きますか。」




22:10


(やっと終わった...)


結局授業中に、腹の虫が鳴りまくり、先生に「うるさい」と言われ、名状しがたいバットのような何かにケツを思いっきり叩かれ....

何で塾にバットがあるかっていうと、塾長 (いわ)く理科の作用反作用の法則の実験で使うとかなんとか。


(絶対嘘だろ....)


そんあ出来事がこの塾では当たり前だった。夢渡にはそれが面白くて塾へ通い続けられる理由でもあった。

痛い目見るのは嫌だけど。


そんなことよりも結局何も食べずに家をでたので、お腹が空きすぎて急いで家に帰ることにした。


数分漕いで、昨日奇襲された辺りの路地についた。


「あ、あれは」


暗い道の脇の電灯の下に、1台の黒い車が止まっていた。

この辺りで車が通ることもなければ、こんな綺麗なほどに真っ黒な車は見たことは無い。

見たことがあるとすれば、テレビの中か....昨日俺とカンナを襲った車だけだ。


(丁度良い、情報収集と行きますか...)


ちょっと離れた電柱の影に荷物と一緒に、自転車をおき、ゆっくり影に隠れながらその車のそばに近づいた。


「...ないじゃないの!」

「...がないだ....」


一つは力強い男の声、もう一つは枯れてて声がさらに低くなった声だ。

はっきりとは分からないが、昨日奴らの声だ。


しかし、車の中にいるせいかうまく聞きとることが出来なかった。

だからといって諦めるわけにもいかないし、堂々と声をかけるわけにもいかない。

ならば、聞き取れるだけ聞き取るしかなかった。


(何か探偵っぽくね?)


「どう...よ!!」

「しょうが...鷺笑(さぎわら)先生...命令..な。」

「ちが...野田原(のだはら)じゃ...の?」

「え?荻原(おぎわら)じゃ...?」


(荻原(おぎわら)?...萩原(はぎわら)のことか?)


タイミング悪くお腹の空いた夢渡のお腹から虫の音が響いが。


ぐぅ。


(げっ!!)


「誰だ!!」


1人の男が車の扉を開け、顔を出して確認した。

しかし、夢渡は幸いその扉とは反対側の扉に隠れていたので見つからなかった。


「にゃ〜。」

「何だ、猫か。」


(ふふふ、俺の意外な特技であるモノマネがこんなところで。)


「ん?猫?ってことはあの子じゃ無いのか!?」


(やべっ!もしかしてこいつらってカンナが猫であることを知っていて!!

急いで逃げなきゃ!!)


急いで車のそばから移動して、物陰に隠れた。


「大丈夫よダーリン。あの子は猫の姿から人間に戻ってたじゃない。」

「それもそうだな。しょうがない、今日は諦めて帰るか。」

「そうね。今日は美味しいところで食べたいわね。」

「そうだね、ちょうどこの先に美味しいレストランがあるんだ。」

「いきましょ。」


車の扉は閉まり、俺に気づかないまま車は走り出し、徐々に見えなくなっていった。


「ふう、いったようだな。けどこれで手がかりは掴んだ。」


(よし、明日だ。)



22:35


家に着くと、さっきとはちがう姿のカンナが出迎えてくれた。

違う姿っつても、また裸っていう読者サービスではない。


「結構似合ってるじゃん。」


紺色のパーカーにピンクのスカート。

ちょっとスカートが上と合わないような気がするけど....まぁこれぐらいなら大丈夫だろう。


多分、姉が準備した外出用の服を試着しているらしい。


パジャマといい、姉ちゃんよく10cm以上も差のある服を持っているんだ?

うちの姉は自称、168cmと言っているが本当は174くらいはあるようだ。

普通に一般男性と同じくらい。

それに比べカンナは150後半ぐらいだ。

ちなみに俺は169cmと余裕で姉に負けていた。



カンナは少し照れ臭そうに「....ありがとう。」と答えてくれた。


パーカーのフードをかぶればすぐに耳だとばれないだろう...

ちょっと膨らんでても誰も気にしない...はず。


(けど問題は尻尾だな....)


カンナの背中からうねうねと尻尾がうごめいていた。

外を出歩くだけだし、俺のコートを貸してあげれば問題無いかな。


「おかえりー!!でしょ!?可愛いでしょ!?」


(うお!どこから湧き出た!?そして、聞いてたのか!?)


「けど姉ちゃん、こんな服持ってたっけ?」

「持ってたけど、なかなか着せる機会がなかったから。。」

「着せる..?」


少し嫌な予感がした。


「それより、カンナちゃん。フードかぶってみて??」

「...うん」


(丁度いい機会だ。ついでに、どのくらい頭が膨らんでしまうか確認しておきたいしな。)


「....」


フードを被ったが、フードにははっきりと耳のような形ができている...

はっきりとしすぎておかしいぐらいだ...


「まさかこれって...?」


(猫耳フード!?)


「キャー!!やっぱ可愛い~!!カンナちゃん、めっちゃ似合ってる!!!」

「....そう...?...嬉しい。.」

「ね....姉ちゃん...?こんな服着たことないよね...?」

「え?当たり前じゃない。これはあんたのために買っていたのよ。けどね、あんたがいつの間にか大きくなりすぎて、可愛くなくなっちゃたから着せる機会なくなっちゃったのよ〜。」


(よかったな昔の俺!!早く大きくならなかったら、こんなもん着せられるとこだったぞ。)


「それに俺言ったよね...尻尾も隠せるやつ探しておいてって。」

「ズボンに穴を開けるなんて勿体無いじゃ無い!」

「いや!隠す気ないじゃん!!

って、まさか下着は...?」

「え?あんな女の子に何聞いてるの?

それに下着?そんなお古はないわよ。」

「ってことは、ノーパン!?」

ちょっと!!」

「あー。顔が赤い~。何度もカンナちゃんの裸を見ているくせに、こんなことで興奮するなんて、変な性癖持ってるねー。」

「...ゆめと....変態...」


(泣きたい、思いっきり泣きたいよ)


「興奮してねいし、妄想もしてないよ!

ってかノーパンしてるお方が変態だろ!!」

「妄想!?そんなこと一言も言ってないよ。」

「OH!!」

「なーんて、嘘だよ。ちゃんとパンツはかせてるよ。あんたのをね。」

「ちょなんで!?」

「はいてたから。」

「はいてたから!?

まさか...俺が寝ている間に!?」

「.....落ちてたから」


(まさか洗濯機の前の脱ぎたてとかじゃないだろうな...)


「押入れの中に...」

「なら、良かった。

って、ちゃうわ!!

それって俺のパンツに穴を開けたってことだよね?

これじゃあ使い物にならなくなったじゃん!!」

「あんたまさか、カンナちゃんの脱ぎたてを履こうと!?」

「んなわけねーだろ!!

ってかなんで、姉ちゃんの下着貸さないんだよ!!」

「だって、私のじゃちょっと大きいから...」


(ケツがでかいからじゃないの...)


「ん?何か言った???」

「いや、何も言ってないよ!!ってか、寒いからさっさと上に上がらせて!」

「そうだね。」

「...お腹すいた」


(おまえ...お腹すきすぎだろ...)


「そうだね、夕食まだだったし。」

「まだだったの!?」

「服探すのに時間かかってね。。」

「かかりすぎだろ!!」

「じゃ、久しぶりの2人以上だし、今日はカレーにするか。」

「話聞け!!」



23:10


三人揃っての夕食だ。


いや、この時間じゃあ夜食と言うべきか?身体に悪いんだろうな


カンナは夢中でカレーを食っていた。


「ムシャムシャ」

「姉ちゃん...何か久しぶりだね、」


3人以上で食卓を囲む食事は数ヶ月ぶりなのだ。


「そうね...」

「...」

「...」

「ムシャムシャ」

「あ!!、姉ちゃん、結局こいつの服どうするんだよ!!」

「あ。じゃあ、明日私がバイトに行くときにでも準備して置くよ。」


「...じゃ、よろしく」

「....」

「....」

「ムシャムシャ」

「...」

「もっと、ゆっくり食べろよ!」


コクっ


カンナは静かに頷き、再び猛獣の如く食べ物を口に流し込んで行った。


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