#8 昇と黄華4
1月13日
17:20
昇は急いで荷物を取りに行き、足を休めることなく走り続け、先日ユキエと回った駅前の商店街の辺りで黄華に追いついた。
人目を避けるように商店街の本道とは一本ずれた面白い喫茶店のあった道を歩いていた。
「おいちょっと待てよ!!」
黄華の肩を掴むと、彼女は振り向きざまに俺の手を強く弾いていった。
「何よ!女装してまで女子校に来て、何がしたいの!?
私のことを考えてきてたわけ、それともこんな私を見ていて面白がってるの?ふざけないで!
こっちはお父さんのために我慢して再婚を受け入れたのに、あんたみたいな兄弟ができてほんっとにむかつくのよ!もう私のことなんか放っておいてよ!」
「な....」
すごく一方的に言われた。
「んでさ、お前はいじめられて嬉しいか?」
「ちょっと私の話は!?」
「どうなんだよ。」
「....嬉しいわけないじゃない...いじめられて心の底から喜べるわけないでしょ!」
「じゃあ、なんでお前は抵抗しない?人数で勝てないから?もっと酷くなるのが怖いから?
いや、そんな風には見えなかった。」
いじめられていても、全く泣くこともなく何かが彼女を縛っているのではないかのように見えてた。
「....資格がないの...
私にはいじめを止めさせる資格なんてないの。」
「は?」
「私は昔ある子をいじめていることに気づかず、その子を傷つけた。
だからこうやっていじめられるのも報いだと思ってる。だからっ!」
「なに言ってるんだよ。
自分がいじめられるのは当たり前で自分はそれに抗うことができない、だから誰かに助けてもらいたい?
なに甘えたこと言ってるんだよ。
いじめるのを止めさせる資格とかそんなもんねえよ。
過去に自分が犯してたからってそれを止めさせる理由になるわけねえだろ。
むしろ、止めさせることが償いだと思えよ。例え、いじめられるのが自分だとしても。
それになんだよ、自分がその子をいじめていたことに気づかなかったって。
んなもん当たり前だろ。
いじめなんて、やってる本人が気付いてないってこともあるんだぜ。
いじめられてる子が本当にいじめられてると思った時がいじめなんだから、いじめてる本人が今、自分がしていることがいじめになるとは思ってないってことだってあるに決まってるだろ。
お前は自分がいじめをしていたことに気づいて、罪を感じてるんだろ?
ならいいじゃねえかそれで。
自分がいじめられるからそれで許されるとか舐めたこと考えんじゃねえ。
本当に嫌なら抵抗しろよ、必死に抗えよ。
最初から誰かに頼ろうとするんじゃねえよ。
そんなのは誰のためにもならない。
だからよ、まず自分の力で乗り越えてみようとしろよ。
お前がお父さんのいやったようによ。」
「なんであんたがそのことを?」
「まぁ、もともと俺がお前の父さんに頼んだんだが、最後は父さんの方から頼まれちゃったんだよ。
父さんは本当にお前のことを愛してるんだよ。
だから、その父さんにこれ以上心配かけさせないためにもさ。逃げるなよ立ち向かえよ。」
随分と前にも同じことを言った。もう二度目...いや三度目だろうな。
けどこれが俺なりに、相手が依存しないやり方。
「わかった....。
にしても、エロ本集めてるような変態にこんなこと言われるなんてね。」
「な、なんでそれを!?
どうせお前なんてBLとかそんないやらしい本持ってるんだろ?」
「あなた、なんでそれを!?」
「え!?まじかよ。」
「「っぷ....あはは。」」
2人で顔を合わせて笑いあった。
(ここで一か八か言ってみるか....)
「お前、元々関喃小の生徒だろ?」
「....そう....覚えてたのね。」
「まぁ、初めて名前を聞いた時前にも聞いたことあるなって思っててよ、背中の痣やお前の話を聞いて確信したよ。」
「....」
「けど、ゆめはお前のことを恨んでなんかないぞ。」
「な、なんで....」
「そりゃ、お前は悪気があってやってたわけじゃないって知ってたし、最初は初めて友達ができたと思ってたんだぜ。
まぁ、お前は友達じゃなくてそれ以上の関係になりたかったんじゃないの?」
黄華は何もかも見透かされ驚き、昇のニヤニヤ顔を引っ叩いた。
「そうだったのね。」
「ああ、あと感謝してるんだぜ。俺もゆめも。」
「なんで?」
「ほら、お前が引っ越す前にさ捨て犬を引き取ってくれたじゃん。
あの白い子犬。
あいにく俺の家は親父が断固拒否してさ、ゆめは家が忙しくて飼えなかったのよ。それでも何故かゆめがな、絶対に助けてあげたいって言ってさ引き取ってくれるところを探してたんだ。
クラス名簿片っ端から訪問して頼んでさ、俺はお前のところに行くの躊躇ったけど、あいつは何ことも無かったかのようにお前の家に行くって言うんだよ。
そしてお前が引き取ってくれた。
だから、ゆめはやっぱりお前を恨んだりして無かったんだよな。」
「ううん、私の方こそあれは感謝してるの。
ハクがいたから私は一人じゃなかった、ハクがそばにいてくれたから元気になれた。
ハクが話を聞いてくれるから、お父さんとも仲直りできた。」
「そうか、お互いさまだな。」
「そうね。」
黄華の手を掴みその手の上に手に握っていたものを置いた。
さっき学校裏で落としていった、黄華の髪を結っていた赤い紐だった。
「んじゃ、帰ろうぜ。」
「...うん。」
最初から帰り道を覚えていないわけではない。
いきなり新しい家族ができたら混乱するし、ストレスも溜まるだろう。
けど、これから黄華と家族として兄妹とし、昔の知り合い出会ったことを乗り越えてこうやって一緒に歩けるようになるための口実でしかなかった。
「ねぇ、昇。」
「ん?」
「私、逃げないよ。」
「ああ。」
「逃げないから....。」
「ああ。」
「それとね...ありがとう。」
「ああ。」
「ありがとね。」
「ああ。」
黄華がなぜ2回も同じ言葉を繰り返し言うのかは、昇には知る由もなかった。
「ところで犬はどうしたんだ?」
「え?ハクだよ....あそっか、信じられないかもしれないけど...」
「擬人化てるというわけか。」
「え?驚かないの?」
ハクの半獣モードは一瞬見たからそうだろうとおもっていた。
しかし既にそういうの(人外なのに能力を持つやつら)と遭遇したとは言えなかった。
ユキエやミヤビちゃんを紹介するにはまだ早すぎると思ったからだろう。
「まぁ能力なんてものがあるんだから驚くこと無いだろ。」
「え、でも....まぁいいや。」
(でも気になることはあるんだよな。
なんで、黄華の父さんは気にしないのか、いや。それは譲ってもいいが、お母さんはハクのことは一言も言っていないから、知らなかったはず。
俺でさえずっと気にしていたのに、なぜお母さんが困惑することなく、元から家族だったかのように接しられているのか。
一応ユキエと....いけ好かない奴にも報告しておくか。)
☆
それから黄華はいじめられる度に少しずつ抗う意思を強くしていくとともに、いじめる側もそれが気に食わなのかいじめもエスカレートしていった。
2月2日
一向にいじめがなくなる様子はなく、ある日いつもと違う雰囲気になった。
黄華の席をいつもの三人組が囲んでいた。
「ねぇ黄華さん、最近わたし達を見る目が怖くなっているわよ?
なに?不満でもあるの?」
主犯がそう言うと黄華は睨みながら怒り口調でこう言った。
「...当たり前じゃない。不満よ。あんたたちは楽しいかもしれない。けど、受ける側は嬉しくないに決まってる。
もういいでしょ?もう私に関わらないで。」
そう吐き捨て席から立ち上がり教室を出ようとした。
(おお、いいね。いきなりのことに3人は怯んでる怯んでる。)
これで終わったと思うったがそうは行かなかった。
主犯の子が黄華の肩を引っ掴み止めた。
「何を言ってるの?わたし達は仲良くしようとしているのよお。それに。」
主犯の子は掴んでいるその手にさらに力を入れて黄華の耳元で囁いた。
「あなたのその気持ち悪い傷。
みんなにバラしてもいいのよぉ〜。」
「.....」
流石にもう我慢出来なくなった。
教室の扉をあけて女子4人の空間に入っって言った。
「お前らいい加減にしろよ。」
「な、黄華さんの....
何の用かしら。」
「お前らそんに人が嫌がることやってて面白いのかよ。」
「はぁ?なんであなたが今になって入ってくるわけかしら?
それにわたし達の勝手でしょ?」
「ああ...ムカつく。おい、そこのでかい方に小さい方!」
いつもいじめっ子のそばにいる取り巻きの2人に指さして言った。
「お前らは本当はこんなことしたくないんだろ?
昔からの付き合いだからって、一緒にこんなことしてるんじゃねえよ。
それに、友達ならむしろ止めるべきだろ、なに一緒になっていじめなんかするんだよ。」
「「え....」」
二人はまるで自分達の考えが読まれがようにキョトンとしていた。
「それに、お前。心の底から誰かを傷つけ、苦しむのを見ていて楽しいのは分かってる。
けどよ、考えたことあるのか?
自分がいじめられる立場になったらってこと。」
「はぁ?そんなこと....」
「ねえよな。まぁ、お前のようなやつじゃ考えたって、自分のことばかりでそんなこと気にしねえだろうな。
昔自分がイジメられた、だからイジメられる前にいじめる側になる。
ああ、結局自分が一番なんだよな。」
「な....さっきから何よ。まるでなんでも知ってるかのようなことばかり...」
それはそうだ。
黄華と話した数日後に、上手くユキエを学校に連れてきて、3人の心を読んでもらったのだから。
(お陰でまた財布が軽くなったがな....)
昇は少しずつそのいじめっ子に近寄ると、昇が男だと知っているいじめっ子も恐れているような顔をして近づいてくる昇を止めようといろんなことを言ってきた。
「な、なに?
私をな、殴るつもりかしら?
いいわよ、すればいいわ。
そんなことをすればあなたは退学。
いや、しなくても私があなたが男ってことを言えば結局は退がk.....」
昇は彼女の目の前で立ち止まって、右手で彼女の左肩を押さえる。
「ああ、退学させたいならさせればいい。」
「そ、それじゃあ、
殴るつもり?」
「ああ、そうしたいところだが。
私には、いや俺には女の子を殴るようなことはできない。
最後に一つだけ、お前は本当に自分が悪いとは思わないんだな?」
「当たり前よ、いまさらそんな風に思ってどうなるっていうの。」
「そうか....
それじゃあ。」
昇は静かに目を閉じて自分の右手に精神を集中させた。
それから少しすると、そのいじめっ子は力が一瞬抜けて座り込み少しすると表情を一変させた。
「きいぃやぁあああ。」
突然叫び出す彼女に取り巻き二人が心配して近寄るが
「こ、こっち来るな気持ち悪い!」
「え...」
「ど、どうしたの?」
「だから近寄るな化け物!!」
二人を見るなり怖そうな顔をして近寄らせない。
「黄華、いくぞ...」
「え、う、うん。」
「次はこれじゃあ済ませないからな。」
昇は最後にそう言い残して黄華と一緒に教室を出ていった。
「ね、ねえ昇。一体何をしたの?」
「さぁな。」
昇は自分の〈五大能力〉の力で彼女自身の能力も力を無理やり強化して、暴走させたのだ。
彼女の〈透視能力〉はいまで以上に透けて見ることができるようのなったが、彼女自身の精神力では抑えきれなくなった。
きっと彼女には何もかもが透けて、人の体の中はの内蔵やいろんなものも滅茶苦茶に透けてみえて、見るに耐えないグロイものが見えているのだろう。
(といっても黄華に〈五大能力〉の話をしても分からないだろうしな。)
それから卒業までの1ヶ月間、そのいじめっ子は学校に来ることはなく、少しやり過ぎたと反省していいる。
そして、なんやかんやで昇は中学の卒業は女子校で済ますことになりました。
ちょっと最後は駆け足になってしまいました。
やっと次回から主人公が返還されますがその前におまけ入りマース




