#7 昇と黄華3
猫能72
1月13日 9:00
(や、ヤベェ...)
1時間目のホームルームに教師と教室へ行くが、小学校の頃に経験したあれとはかけ離れた状態で、とてつもなく緊張している。
先に行ってしまうとこの私立女子中関連者、今隣にいる若々しい先生にも俺が医学的性別上、戸籍上男であることは知っている。
なぜ、そんな俺がこんな学校に入れるのを許可されたかというと、黄華のいじめの事を話したわけではない。
医者である父がでっち上げた性同一障害の書類と約3年間そんな症状を抱えていたという調査書を学校側に渡し、「卒業までの数少ない時間だけでいいので、女子として扱われたいので」といえば「生徒が混乱を招かないよう、卒業まで生徒には男ということはばれないようにしろ」という条件で向こう側は快く受け入れてくれた。
その時はなぜそこまでしなくちゃならないのかわからなかったが、女子校というのを初めて知り理解した。
こんな事情の転校のため、以前の学校には全て秘密事項にしてもらった。
(これ、ばれないよね....)
緊張する自分に隣にいる担任の先生(女性)は気遣ってくれたのか、「大丈夫、男とは思えないくらい、すごく似合ってるよ」と言ってくれた。
(まじかよ。)
「えぇ...と、有難うございます。残り少ないですが、おれ...私をよろしくお願いします。
ってえ?どうしました?」
なぜか先生は驚いた顔でいた。
「いや、まさか声まで女の子っぽいもの...
本当にびっくりだわ...可哀想だわ....
こんなにも女の子になりたかったのに、神はあなたを男として生まれさせた....
大変だったのね....」
「先生.....」
本当は女の子になりたかった哀れな少年ではなく、巨乳好きのただの変態だと知ったら、どんなに悲しむだろうか....
(しかしまぁ、こんなときにに声帯が幅広さが役に立つとはなぁ。
これなら生徒に女装だとはバレなさそうだ....)
1時間目のホームルーム時に紹介するということでこうして教室へ。
(まぁ問題は...)
「はーい、みんな。こんな時期だけでこのクラスに転入生です。」
そういうと、突然教室中がざわつき始め、次第に騒ぎ出す。
私立で清楚だとは思えないようなざわつき。
「隣町から引っ越してきて、諸事情でこの学校へ転入することになった。落合 昇子です。まだ受験で忙しいひともいるはずだけど、残り少ない卒業までの時間、仲良くしてねー。」
さすがに昇という名前は女の子っぽくないので、名前は昇をとって昇子にしている。
決して「のぼるこ」何て呼ばず、「しょうこ」と呼んでほしい。
(先生からの紹介はおわった。さあ、始めの自己紹介はとても重要だ。
いかに、女装だとバレないようにするか....よし!)
「初めまして〜、落合昇子でーす!
好きなものはおん...えーっと可愛い女s....じゃなくて、ショートケーキでーす!
将来の夢は国民的アイドルでーす!」
(よし、言い切った。
女装だとわかっている人から見れば、なんとも気持ち悪い自己紹介。
しかし、知らない人はちょっとやばい女の子だと思うはず。
気持ち悪くてもいい、あくまで女子って印象をここで擦りつけるんだ。)
そんな、昇のバカバカしい自己紹介は教室を一瞬で凍てつかせた。
(流石にやりすぎか....)
すると突然の拍手喝采。
どこからか「よろしくねー」という声も聞こえた。
なんとか上手くいったようだが....
視線を黄華に向けるが、驚く様子もなく俺に気づいているが、完全にそっぽを向いていた。
そして、また感じだとワイワイ騒いでいる周りと比べて浮いているようにも見えた。
(学校じゃすごい暗いやつだな....)
自己紹介が終わってしばらくすると、一人の少女がピンポイントを突くことを言った。
「あら、黄華さんと同じ苗字じゃない。もしかして姉妹だったのかしら?
ねえ、黄華さん?」
黄華はそんな友達の質問も無視した。
(おいおい、せっかく友達が聞いてるのに無視するなよ....)
その質問に自分が代弁した。
「はい、おれ...私は黄華の姉です☆
よろしくね!」
「はい。それじゃあ、黄華さんの隣の席に座ってね。教材とかもそっちの方が借りれやすいだろうし。」
先生の言う通りにその席に座った。
「...ヒィ....」
(なんだこれ、すげえ座り心地悪いな....)
これからしばらくは、スカートで我慢しなくちゃいけないのかと思うと、呆れてしまいそうになった。
[なぁ、黄華。]
小声で隣の黄華に声をかけた。
[スカートって座りにくいな...]
もちろん無視だ。
そして、2時間の移動時間や、昼休みなどうざいと思われるくらいずっと黄華につきまとったが、一言も話してくれない。
15:20
「なあ、黄華!俺掃除があるみたいだから、終わったら一緒に帰ろうぜ。」
「....」
「なあ!」
「....もうさっきからなんなの。」
「いいじゃん。まだ通学路覚えてなくて一人じゃ帰れないんだよ〜
な?仲良く帰ろうぜ。」
少し時間が空いたが、黄華は一緒に帰ることを承諾してくれた。
「....分かった。校門で待ってる。」
「おお!!有難う!!!すぐ終わらせてくる!」
そう言って急いでその教室の方へ向かった。
廊下うぃる走っていると向かいからやってくる一人の少女とすれ違った。
その上、すれ違いざまに妙なことを言ったような気がして、ゾッとした。
...これからよろしくね、黄華のお兄さん。
そう聞こえた。
(き...気のせいだよな....そんなすぐにバレるはずが...)
今日1日、女装とばれないようトイレは便器の下げ忘れのないように、毎回座っていたり、言葉遣いや仕草にも気をつけた。
黄華や教師たち以外は知っているはずがない。
(....けどさっきのは同じクラスの子だったし。
気をつけるに越したことはないよな。)
☆
ささっと掃除も終わり外に出るため下駄箱に向かおうとするが。
「迷った!!」
来るときは掃除場所を探すので通路を記憶するまで頭が回らなかった。
迷った末、なんとか校舎外へ出ることが出来たので、校舎の周りを回って下駄箱を探すことにした。
「ふぅ、黄華を待たせすぎたな。急がないと....っ!」
校舎と倉庫との間の不良が溜まりそうな人の目につきにくい狭い道を通ろうとした時だった。
誰かがいるのに気がつき、曲がるのを躊躇いつつ顔をのぞかせて様子を見た。
(黄華?...それにさっきのクラスメートと...)
さっきすれ違った女の子....けどその隣にいるもう2人は見たことのない子だった。
(他のクラスの子が...けど見た感じ仲良くしているって感じには見えないな...)
「黄華さんったら、この前はごめんなさいね。この子ったらまさかあんなに力が出るなんて。おかげでこの子は〈水作能力〉ってことが分かったわ。」
「....」
「ありがとう黄華ちゃん。」
「そのお詫びにね、この子の能力受けてもらいたいの〜。」
この会話からすると先日黄華がべしょ濡れで帰ってきたの彼女らがやったと推測できた。
(じゃあ、あいつらが黄華を...)
今日1日クラスのの雰囲気を見たかぎり、よく喋るあの子が主犯で周りの二人がとりまき、他の子はあまり関わりたくないといった感じだろう。
(まぁ、生徒全体のいじめよりは陰湿だな....)
「それでね、確かこの子の能力は....」
そう言うと、狭い通路ってだけの理由で起きるような風なんて言えない、すごい風が黄華を襲った。
「え...と?」
「〈舞風能力〉だよ。」
「そうそう。」
強風に煽られ耐えられずに体ごと飛ばされすぐ後ろの壁に叩きつけられ、そのまま座り込んだ。
「あ、そうね。こんな能力が使えるんだったら、この前濡らしちゃったときに使って乾かしてあげるべきだったかしら?
それにして髪はボサボサじゃない、ダッサ〜い。」
「ふふっ」
倒れた黄華をみて3人は面白そうに笑っていた。
(な...ひでぇ....3対1なんて....
それに何で黄華のやつ、抵抗しないんだよ。
助けに行くか?)
そう思い、あの間に行こうと足を動かそうとするが、すぐに止めた。
(....助けに行くのが当たり前、正義ってものかもしれない....
いや...これじゃあ助けに行っても意味がない...
それは俺がよく知ってる。)
「あ、そうそう。私ね実は〈透視能力〉っていう面白い能力が使えるのよ。
そして、あの転校生の秘密も知ってるのよ〜。」
「え〜、何それ?」
「それはね...女装。あの子男の子なんでしょう?」
「うわ、キモ。」
「きもー。」
そんないじめ3人の会話に胸をザクザク刺された。
(ゲッ、やっぱりばれてたのかよ。)
「まーぁー、その秘密は隠しといてあげるわ。
そうだわ、ついでに貴方の身体の隅々まで見てあげましょうかしら。」
「....」
(おいおい...さすがに抵抗しろよ...ってか、本当に気絶しちゃったのか?)
主犯の子はジロジロと黄華を見て、肩のあたりを見て言った。
「あら...背中に気持ち悪い痣があるのね、それもなに?小さい頃にやった傷?
いや〜、気持ち悪い。
もういいわ、あなたの身体を見ても気分が悪くなるだけね。
いきましょ。」
「はい。」
そんな一方的に酷いことを言って、去ってしまった。
(くそ...胸糞悪い....)
彼女らが去ってすぐすると、黄華は立ち上がって、その場を立ち去ろうとした。
「ちょっと待て黄華!」
そう呼ぶと立ち止まって振り向いた。
「何よ...見てたんでしょう?」
昇があの現場の一部始終を見ていたことに気がついていたみたいだ。
黄華の表情は泣きそうな顔でなければ、怒りで満ちたような顔でもない。
どちらかというと、期待していたのに裏切られた、もうどうでもいいと言った感じの虚ろな表情だった。
「お、おう。」
「そう....じゃあね。」
「は?ちょっと待てよ!」
今度は立ち止まってはくれなかった。
校舎のと倉庫の間の狭い道の向こうから流れ込む赤い空。
彼女はその空へ溶け込むように徐々に小さく消えていった。
次回は2周年とともに会いましょう。




