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猫と能力と夢映し  作者: れぇいぐ
『昇と黄華とハク』
66/75

#5 昇と黄華1

猫能70(→65)


中学時代


12月31日


昼過ぎ


何が入ってるのか重い段ボール箱抱えて、足元を見ることのできない状況で初めて上る家の階段を慎重に上った。


目的の場所へ運ぶと段ボール箱を下ろし一息ついた。


「ふぅー。」

「これで全部のようね。お疲れ様。」

「うん。」


昨日一昨日で急いで必要な物だけを選別して段ボールに詰めたのだが、中々手放しにくい物もあり結構な数の段ボールになってしまった。


しかし、必要なものと言っても、家具のほとんどはこっちで揃っているようなので、家具のような大きなものはは家といっしょに売り払ったらしい。


「ねぇ、昇?」

「なに?」

「この昇の段ボールに『エロ』って書いてあるんだけど....」


お母さんは段ボールの上にマジックで書かれた文字を指差して聞くので慌ててその段ボールを死守した。


これは俺の大事なコレクションが入っていた段ボールの証だった。


「ち、違うよ!!ほらこれ、アルファベットの大文字で『アイディー』って書いてあるんだよ!」


確かに横線のある大文字のIDを崩せばエロの見える。


「なんでこんなところにそんなの書くの?」

「ええ?いや、それはたまたま突然『エロ』を....じゃなくて『ID』ってどうやって書くか気になったんでついここに書いちゃったんだ〜。」



慌てて間違えそうになりながら、ごまかそうとしていたが、お母さんは信じてくれたような目をしていなかった。


「ちょっと中を見せなさい。」

「ええ!な、なんで!!いいじゃん見なくて!」

「結局段ボール片付けるときに開けるんだからいいじゃない。」

「じゃあ、その時でもいいじゃん!」


段ボール一つにここまで争う親子はそうそういないだろう。


「うっ!」

「母さん!?」


段ボールの引っ張り合いに母さんは手を滑らせ、腰をついたようだ。

そんなお母さんを心配して油断した瞬間だった。


「隙あり!!」


母さんは俺の横をゴキブリのようにすり抜け、エロもといIDと書かれた段ボールを開けた。


「....あんたこれ....」

「あぁ...ばれちゃった....」


中は小学生の頃に書いた作文や幼稚園の頃に書いたお母さん大好きの絵などの思い出の品ばかりだった。


「恥ずかしくて見られたくなかったけど...」

「こ゛め゛ん゛ね゛ー!」


母さんは感動のあまり泣きながら抱きついて謝り出した。


「いいよ、母さん。」

「あなたがそんなにお母さんのこと思っていてくれたなんて!!もうお父さんの元にいってもいいわ!!」

「え、向こうの親父じゃなくて新しいお父さんの元にいってよ。」

「うん。」


そう言って、泣きながら階段を降りて荷物の整理を手伝っているであろう新しい家族2人の元へ行った。


(ごめんね、母さん。

母さんには出来れば心配かけたくないから....)


元々この段ボールに入っていたはずの昇コレクションは念のために先日ユキエの元に預けておいたのだ。


幸い、引っ越しといってもそれほど遠いわけでもなく、むしろユキエのいる霧狐山に近づいた。


今まで自転車で2、30分かかっていたのが5分ちょっとになったのだ。


母さんの言う通り元の学校まで電車で数分の距離なので特に変わることはなかった。


「よし。」


新しい家は元々使っていなかった部屋があったため、ちゃんと自分の部屋も確保出来たので、心置きなく昇コレクションの回収にいける。



(けどまぁ、能力のこともあるのにこんなに穏やかなのは正月だからかなぁ。)


「にしても、新しい兄妹って誰だ....」


考えことをしながら階段を降り終えたところで突然出てきた小さな子にぶつかった。


そのままその子は手に持っていたマグカップの中の水をこぼし、後ろへ倒れた。


「おお、ごめんごめん。

大丈夫か?」

「....」

「あぁ...濡れちゃったな。着替えるか?」


その子はうつむきながら頭をコクリと頷いた。


「ん?」


(あれ、この子ユキエみたいな耳が....)


その子は焦って一度手で頭を隠すと、何もなくなっていた。


(気のせいか....)


「じゃあ、脱衣所にいくか。」

コクリ



にしても、この子は何なんだ?

見た目からして同い年には見えないし、着替えを見ていたがブツも付いているようだから、女の子じゃない....

お母さんや新しいお父さんに聞いても、「えぇ?ハクくん?ああ。そんなことより、荷物はもう片付いたの?」

とうやむやにされてしまう。


ちなみに新しい妹?姉?のほうは、部屋から出てくれず、まだ姿も見ていない。


試しに彼女に会おうと、閉じこもっている部屋に乗り込もうとしたが、鍵をかけられ。なぜかさっきのハクという男の子だけが自由に出入りしていた。


(気になる....その女の子が凄く気になる....主に胸....)


出かければ毎日のように眺めて過ごせる。

ユキエ?ああ、眺めてると四方固め食らうから....まぁそれも最近気持ちよく感じてきた自分がやばいことは分かっている。


(ん?まてよ。これは利用できるんじゃないか?)


サイズの合う服が無かったのか、大きなシャツを着るのに苦戦している目の前の彼女のお気に入りのこの子を使えば....


着替え終わったハクは彼女に頼まれているのか、マグカップに新しい水を入れ彼女の部屋に向かっていった。


昇は何事も無かったかのようにその子後ろについていった。


ドアをノックして入ろうとするハクを止め、わざとらしく演技を始めた。


「ああー、ごめん!ハクくん大丈夫かー?

あっちゃー、水が溢れてべしょべしょじゃないかー。」


さっき起きた出来事を演技で表現した。


(さっきは向こうに気づかれなかったが、彼女との唯一の糸口のこの子に何か起きれば心配して出てくれるはず。)


向こうからドアノブを動かした。


(よしきた!)


するとドアが光、中からドワッと何か出てきたと思えば、突然パシャパシャという音がするが、眩しくて目が見えなかった。


「ば、化け物か!?」

「はぁ゛〜...はぁ゛〜...どこぉ...」

「え。」



身長は自分と同じくらい、髪は長めの薄い茶髪の女の子が四つん這いでこちらに向かって本格的なカメラで連写していた。


「べしょ濡れショタはどごだぁ゛....って、何もないじゃん。」


突然、平常に戻った。


「えーっと...黄華ちゃんだよね。」

「....」


目線がちらっとこっちに向いたが、すぐ目が合わないように斜め下に目がいっていた。

そんな俺はは彼女の首のちょっとしたに目がいってた。


(c...いやDくらいか....まぁ左右のズレはなさそうだし、美乳と見た....じゃなくて!)


新しい家族としてしっかり自己紹介しなければならない。


「俺は上ヶ赤....じゃないんだった。とりあえず昇な。

って、いないいい!!」


いつの間にか男の子と一緒に部屋の中に逃げられたようだ。

扉を叩きながら叫びだした。


「おぉい!せっかく家族になるんだからぁ、ちゃんと話そうや!ここ開けてくれよ!!」


ちょっと必死になってみたが、返ってきた返事はこうだった。



「うるさい。どっかいって。」



(シャイなのかな?)


昇はポジティブにとらえることにした。


そらから冬休みの間日中その女の子と話し会うことができるまで付きまとった。





1月10日


結局、あれから1週間ちょっと何も進展がなかった。


11時47分


「というわけで、ユキエッティはどう思うよー。」

「なんじゃ、近いくせに1週間も会いに来なかった上、どごぞの床の下に住んでそうな名前で呼びおっといて、相談じゃと生意気な。」


結局引っ越した先は元の家から見て霧狐山(きりこざん)の向こう側、ようは隣町と言うべきか。

むしろ霧狐山はその隣町の中であり、自転車で5分。むしろ歩いていけるぐらいだ。

やったね、これでいつでもユキエに会えるね。という感じだ。


「そこまで気にする!?」

「女性はデリケートなんじゃぞ。」

「ただの狐のくせに。」

「何度言わせるか、これでも神なんじゃから。」


(そうだったな。)


しかし、未だユキエが神様という実感がない。

心が読め人間にもなれる力も結局人間のもってる能力(スキル)と同じで、珍しい同時保持者(デュアル)ってだけ。

後は、なぜか格闘技が上手いといったところか....

神様というより、超人....いや超狐(スーパーフォックス)といった感じだ。

神様らしいところも見たことない。


「所詮は霧狐山(ここ)を守る守神ってだけじゃがな。」

「けどさ、ここに来る時初めて通る商店街を走ったんだけどさ、所々狐の像があるからそれなりに祭り上げられているんじゃん、それってなんだかんだでこの町も守ってるんじゃないの?」

「どうじゃろう...

わしも前の神様から「この山だけを守っておればよい」と言われただけじゃからの.....」

「曖昧だな。」

「そんなことはどうでもよい、そのお主の新しい家族と上手くやれておらんのじゃろう?」

「ああ、そうだった。」


いつの間にか脱線していてすっかり忘れていた。


「お主はわしに協力して欲しいと?」

「そうなんだ。」

「どうせ、わしの(胸)ではずっと拝むことができぬから、その()の胸を安心して拝みたいからじゃろう。」

「それもあるけど、やっぱり家族になるんだから仲良くなれないのは辛いんだよな....」

「ほう。いいじゃろう。」

「お、素直だな。」


予想では、前回のようにデートとか言って俺の財布をからにするのではと思っていたが....


「ところで、約束しておったあれはどうするのじゃ?」

「約束?」

「とぼけるでないぞ、また遊びに連れて行ってくれるというやつじゃ。」


(やっぱりか...)


「良いではないか、こんな可愛い女子がお主とデートするのじゃから。」

「デジャブ感がすごいあるんだが...分かったよ。

ここら辺は俺はあまり知らないから、ユキエに案内してもらおうか。」

「よかろう!」


(奢らないってあの時宣言したから、財布を忘れてもいいかな。)


「財布を忘れたら、何度でも連れまわすぞ。」

「はいはい...」


というわけで、明日、正月明けの商店街を回ることになった。


次回は来月中旬。

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