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猫と能力と夢映し  作者: れぇいぐ
『昇と黄華とハク』
63/75

#2 黄華とハク1 ☆

能力とは全く関わらない重い回です。

12月23日


何時ものように目を覚ました。

ただ少し違うのは、眠っていた姿勢のせいか、体も鉛のように重くキーボードの上に乗せていた顔には所々跡ができてヒリヒリしていた。


「おはよう、ハク。」


隣で丸くなって寝ていた真っ白な毛の小さな柴犬の頭を優しく撫でて起き上がった。


「そうだ....昨日はずっとゲームしていてそのまま寝ちゃったのね....」


目の前のモニターには最近始めた暇つぶしのオンラインゲーム。

気がつけばレベルもカンストしていた。


(あぁ....もうどれくらい学校行っていなかったっけ.....)


もう、夏休み明けの始業式からだから...4ヶ月くらい....

4ヶ月も不登校....家を出るのはハクと散歩に出かける時くらいだ。


卒業まで残り3ヶ月か....まぁ、今更学校に行ったところで友達もいないし....どうせいじめられるし....


元々はお父さんが悪いのよ...


お父さんへの私なりの反抗で始めた不登校。

けど、お父さんはそんなこと気にする様子は見せなかった。


お母さんのことも私のこともどうでもいいんだ....自分の仕事だけ....


「ねぇ...お母さん....なんであんな人を好きになったの?」


窓の方に飾られた小さな私とお母さんとお父さんが仲良く手を繋いでいる写真を見つめ、静かに呟いた。


母と珍しく休暇を取れた父と一緒に出かけた最初で最後の遊園地。


そう、もうこの三人で出かけることは一生ない....


お母さんはもう死んじゃったのだから....いや...お父さんが....殺したんだ....


そして、再婚の話を先日聞いたこともあり父親への苛立ちが高まっていた。


トントン



「おい、起きてるか黄華(おうか)。」

「....」



お父さんの声だ。


「いるな?今日はもう帰らない。しっかり留守にしてろよ。」

「.....」

「ふん。」


しばらくして、玄関の方からドアの音がして、静かになった。


「....本当に家族のことなんて....どうでもいいんだ....」



11:20


寝癖についたの髪を整えて、暖かい服装に着替えた。



「ハク、行こうか。」


ハクは「行こう!」という眼差しでこちらを見つめたので、靴を履き、外へ出た。


そのまま住宅街を抜け、河川敷についた。


ここら辺なら例え休みでも学校の生徒に出会うことはなかなか無いはず。


リードを片手に川沿いをゆっくり下った。


(もう30分は歩いたよね。疲れちゃったしもう帰ろうかな。)


引っ越すまでは武道を習っていて、それなりに体力はあったはずだけれど、引きこもる時間が多くなって体がもたなくなってきていた。


「帰ろ、ハク。」


ハクのリードを引っ張るが、ハクは全く動こうとはしなかった。


「ハク?」


ハクの見つめる向こうから、誰から走ってくるのが見えた。


青いジャージを着た1人のおじさんだ。


私はその人を知っていた。


ここへ来て父親から一番に教えてもらった病院の院長。


長井クリニックの長井先生だ。


「あれ?黄華ちゃん?」

「お久しぶりです、長井先生。」

「おおーやっぱり黄華ちゃんかー。大きくなったね!

もう2年くらい会ってなかったけなー。」

「はい。」

「いや〜やっぱり変わったね〜。

お母さんに似て美人になってきたんじゃないか?」


(変わったといえば長井先生も....)


最後にあった時はこんなに横幅はなく、お腹も出ていなかった。


「にしてもハクくんだっけ?ちっとも大きくならないね〜?」


長井先生はしゃがんでハクの頭はガツガツと撫で回した。


「何ででしょう....もともと捨て犬だったので私も良く分からないんです....」

「こんなこと珍しいのかな?

もしかしたら、何かしらの神様だったりしてな!!

あっはっは、そんなわけないな!」

「あ...ははは...は....」



(どう返せばいいか分からない!!)


「長井先生はこんな時間からどうしたんですか?」

「いや、ちょっとダイエットを始めてジョギングしていたんだ。」


(成る程、流石はお医者さん。自分の健康もしっかり考えてるんだね。)


「そうだ、黄華ちゃん。近くに美味しいラーメン屋があるから一緒にお昼食べて行かないか?」

「え、いや。いまお金持ってきていないので。」

「大丈夫大丈夫、ここはおじさんが奢るから。」

「いや、そんな悪いです....」


例えお父さんの親しい友達だとしても、それは流石に遠慮しておきたい。

むしろ、お父さんの知り合いだからだろう。


「どうせ、お父さんは家にいないし、1人だろう?

おじさんも1人じゃ寂しいからさ。」


この台詞だけ聞くとまるで私が危ない人に絡まれているみたいだが、大丈夫。


この人はそんな人じゃない。

お母さんを助けてくれようとしてくれていた人だ。今のところ一番信用できる人なのだから....



「それに、君にもいろいろ話しておかなくちゃいけないこともあるしね。」

「....それじゃあ、いただきます。」

「そうか?それじゃあ、この先ちょっと歩いたらあるから。」


長井先生の後ろをひたすらついて行った。


河川敷をさらに下って行った先に、大きな橋の下に小い小屋ような建物を見つけた。


その小屋は見た目からして綺麗ではなく、悪く言えばまるでホームレスでも住んでいるような建物だ。


けどその入り口にはのれんがかけられていて、中からいい匂いが漂い出ていた。


長井先生は何のためらいもなく、引き戸を開け、嬉しそうな顔をして片手でのれんをどけて中へ入った。


「おやっさん、いつものやつ。」

「お、先生また来やがったいな。」


(また?)


「それに先生、その隣のお嬢ちゃんはなんだ?まさか、誘拐とかほざかんなや?」

「私の娘じゃい。」


(ふぇ!?)


「冗談じゃ」

「なんば、驚かせおって。

おっさんからかうのもいい加減せんかい。」

「はっはっは、私もおやっさんもさほど変わらんよ。

そんで、この子は私の友達の娘でな。

いろいろ話さんことあって付き合ってもらってるんじゃ。」

「そうかい。」


(もうついていけない....)


おじさん同士の酔っ払っているかのような会話についていけなくなっていた。



「ささ、黄華ちゃん座って。」

「あ、けどハク....」

「大丈夫や、犬が入ってもなんも心配いらん。」

「ありがとうございます。」


カウンター席に二人ならんで座っては、長井先生は注文をとった。



「おやっさんこの子にも同じのをお願い。」

「あいよ。にしても先生、先生のような方が毎日こんなラーメン食っていいんか?」


(ま、毎日!?)


「ええんじゃ、ええんじゃ、こうして毎日ジョギングしてここに来てるんじゃから、大丈夫!」

「もう半年は来続けてるのに、全く痩せとらんとよ」


(確かに毎日のようにラーメン食べてたらダイエット意味ないよ・・・)


「先生にはいつもお世話になってるやから、先生が肥満で倒れたらシャレにならんと。」

「おやっさん分かった、分かった。

明日は来ないように努力するよ。

あ、あとビール一杯よろしく!」

「あいよ。」


(昼間からビールなんて....私を巻き込まなければいいけど....)


「お、そこのワンコにはこれやるよ。」


おじさんは小皿にチャーハンをのせ、ハクの前の置いた。



「ぷはー、やっぱここのラーメンはビールに合うね〜!!」


ビールを飲めない私には分からない感じだけど、確かにここのラーメンは結構美味しかった。

と言うよりもラーメンを食べるのはもう数年ぶりなので、他と比べることもできないから美味しいというのが正しい。



「おやっさん!もう一杯。」

「もう先生にあげるビールはねぇよ!!

それに、まだ仕事があるんだろ!!」


(仕事?)


「あれ、仕事って?」

「いや、今は昼休みなんだよねー!」

「え、それじゃあいつまでもここにいるのはまずいんじゃ・・・」

「あー、大丈夫、大丈夫。どうせうちの病院、患者少ないし。」


長井先生は少し酔っているせいか、喋り方もへなへなしてきた。



(医者としていってはいけないことを言ってるよこの人.....それに医者が仕事中にビールって.....)


「内科医の医者がメタボリックじゃあ説得力ないから、こうやって昼休みのジョギングも仕事の一環だから〜.....」

「そうですか...それより私に話ってなんですか?」

「ああ、そうだねその前におやっさん。

これあげてくれ。」

「あいよ。」


カウンター席に手を置くには食べ終わった器が邪魔なようで、店主にあげてもらった。



「さて、黄華ちゃんお母さんが倒れた時のこと覚えてるかい?」

「....はい....」


今でも忘れられない....苦しそうなお母さんの顔、必死に電話越しに叫んで、走った。



約2年前


10月20日 15:20


「黄華ちゃん、遅いよー。」

「早くー。」


坂道の先には同じクラスの女子が3人分の荷物ををみて、笑いながら呼んだ。


「ほらー、早くしないと日がくれちゃうよ〜。」


私はイヤイヤながらも頷いて足を再び動かした。


普通なら置いて行かれるような急な坂ではない、むしろ体力のある私のほうが早すぎる位だが、この荷物の量では無理だった。


「ほーら、武道習ってたんだから体力あるでしょ〜」


じゃんけんをして負けたら背負うのならば公平でいいのだが、一方的に背負わされている。

それも毎日のように。

それだけじゃない、学校でも悪口を言われ、いわゆるいじめだ。


けど、私にはそれを避ける資格なんてない。

それもそう、自分も元々はいじめをしていたのだから・・・・


女の子二人の重い荷物を学校から運び終え、疲れきった体で自分の自宅へ帰ったら。



「おかえりなさい。」

「....ただいま。」


お母さんは優しく私を出迎えてくれた。


「最近学校はどう?」

「普通だよ。」

「友達は出来た?」

「....うん。」


(できるだけ、お母さんには心配かけたくない。)


「そう?何かあったら抱え込まないで私にも言ってね。」


(お母さんは優しすぎるよ....私のことより自分の心配をしてよ....)


「お母さん....無理しないで寝ててよ。」

「はいはい」

「もう....この間倒れたばっかなんだから無理しないでよね...」

「娘に心配されるなんてね。」

「ほーら、ベットでゆっくりしててね。」

「はーい。」


お母さんはずっと前から癌を抱えていて、何度か発作を起こしては心配させられていた。


私のたった1人のお母さんなのだから。



お母さんは大人しく自室に向かい、

私はお母さんのために水の入ったグラスを部屋へ持って行ってあげた。


「はい、おかあさん。」

「ありがとう、黄華。」



本当なら入院していなくてはいけないはずなのに、お母さんは私のことを考えて自宅にいることを選んだ。


けど、今も思うと私はなんで入院させておかなかったのか後悔している。


「そうだわ、今度お父さんが久しぶりに休暇がもらえたからあそこに行きましょう。」

「あそこって?」

「ほら、あの遊園地。」


二階の窓からでも見える距離に遊園地はある。


「半歳前に行ったばかりじゃん、それにお母さんはおとなしくしてなきゃいけないでしょ!」

「えー、お父さんの折角の休暇だよ!!」


お母さんの甘やかしい眼差しが眩しい。


「う....ん。」

「ほら、立派なお医者さんのお父さんから許可出てるし!」


(結構堅物なお父さんが?)


「分かったよ....それじゃあ来週行こう。」

「やったね。」


(もうこれじゃあどっちが親か分からないよ....)


「そうだ、黄華。

また柔道やらないの?」

「え?もういいの、私はやらない。」

「ええ?何で?大会で優勝してたじゃない。」

「それは小3の時の話でしょ。今の私じゃもう無理。」


(それにお母さんの代わりに私が強くなったって意味ないし....それに私はちっとも強くない。)


「なんで?かっこよかったわよ。」

「....」

「それじゃあ、いつかまた柔道をやってるところ見せてね。」

「...うん、分かった。

そうだ、お母さん。学校の手紙があるから持ってくるね。」



そう言って私は部屋を出ていき、部屋の前で座り込んだ。


「おねがいだから、自分の心配してよ....」


ガシャン


そんなガラスが割れる音が部屋の中から聞こえた。


「お母さん!?」


急いで部屋にはいるとベットのしたには割れたグラスとこぼれた冷たい水。


そしてベットの上では胸を押さえて苦しそうな顔をするお母さん。



私は急いで駆け寄ってお母さんの体を揺すりながら何度もお母さんと叫んだ。


(いつもと違う!!すごい苦しそう....

私はどうすればいい!?やばい!!お母さんが!!)


「そ、そうだ。

お父さん!!」



そうよ、お父さんは立派な医者!!

お父さんなら!!



私は電話に向かってお父さんの携帯電話の番号にかけた。


「もしもし。」

「お父さんっ!!!!」

「黄華か、どうした。」

「お母さんが!!お母さんが!!」

「......」

「お母さんが倒れたの!!」

「.....」

「だからお父さん!!助けにきて!!」

「.....」

「ねぇ!!どうしたの!?」

「.....無理だ。」

「え。」


そんな父親の一言で一瞬頭の中が真っ白になり、それと同時に疑問と怒りが頭の中でいっぱいになった。



「ね、ねぇ!!どうして!!!このままじゃお母さんが!!」

「だから無理だ。俺はこれから患者の手術がある。」

「けど、お母さんは....?」

「救急車は俺が呼んで置くから、黄華は....」

「もういい!!!」


私は電話を叩きつけるように切り、走って家を出た。



ここへ引っ越した理由は、近くにかかりつけの診療所があるから。

そして、ここに引っ越してまずお父さんに紹介されたのが、お父さんの古くの仲の長井先生の長井クリニックだ。



(お母さん!!おねがい!!)


それから、なんとか長井先生を自宅まで呼ぶことはできた。


けど、長井先生にできることはただ症状を確かめたり、お母さんの薬を飲ませたりするだけで、結局救急車が来て搬送するまで私は祈ってみていることしかできなかった。


そしてその日、お母さんは心臓発作により息を引き取ってしまった。



しばらく出番が無いので、そして夏というわけで....


挿絵(By みてみん)

しばらくは時間軸を行ったり来たりして理解しづらくてすみません。


次回は8月終盤までにはできればと

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