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猫と能力と夢映し  作者: れぇいぐ
#5 能力対決とマッドグループとSST(下)
61/75

#9 ごめんね....

ほんと、呆れたわ。


自分が誰かに狙われているの気がついていて、1人では危険だと分かっているはずなのに、なんで彼女は1人で追いかけたのか....


それも、抵抗出来ない猫の姿になって...


何でそんなに焦るの?

ゆめとと一緒に探せばいいじゃない...

見つからなければ一緒に買いに行けばいいじゃない....

たとえそれがゆめとから貰った大事なものでも....ゆめとから離れちゃ...だめ....


だからと言って私の声はカンナには届かない...

なら渡し自信が表に出ればいいことだが、完全な猫の姿になったカンナの状態では私は絶対のおもてへ出ることも出来ない。


猫の姿で普段よりもすごく低い視点は風で宙に舞うリボンに集中していた。


「おい!カンナ!」


ゆめとカンナを呼び止める声が聞こえた。そのときにカンナは止まってくれればよかったのに。


そして、あっという間に捕まってしまった。


ただの猫では抵抗も出来ず、そのまま意識を奪われしまった。


ほんの数十分で体は人間の姿に戻り、カンナの意識のないうちなら私は楽に表へ出れる。

けど、今更私が表に出ても腕を縛られて何も出来ないし、もうカンナには呆れかえってどうにかしてやろうと言う気にもなれなかった。


きっと私を捕まえたのは私の〈能力辞典(スキルブック)〉を必要としているから....

私ではなく。


そこでカンナは目を覚まし、しばらくするとこちらに1人の白衣を着た女性と後ろでスーツを着た男が私たちを閉じ込めている牢獄の扉の前にたった。


「....私をどうするつもり?」


しかし声が届かなかったのか、返事はこなかった。

カンナは質問を続けた。


「...何が目的?」


カンナも、<能力辞典(スキルブック)>が目当てなのだということは薄々思っている様ね。


その人影の女性は口を開いてくれたが、質問の答えにはなっていなかった。


「ふふふ、見れば見るほど本当に面白い子ね。」


その透き通った女性のような声は狭い部屋によく響き通った。


「猫の<擬獣化(アニマフィー)>にこの世で唯一の<能力辞典(スキルブック)>の二つを持つ<同時所持者(デュアル)>ねぇ。

本当に可愛らしいわぁ。」

「....」


やっぱり私の能力を知っているってことは利用が目的...


「私のペットにしてあげるわぁ。」

「?」


この人は何怖いことを言ってるの!?

けど...何だろう、この人の声...聞き覚えが....


「....目的は?」

「まだ教えられないわぁ。まぁ、楽しみにしているといいわよ。

そのために貴方には協力してもらうのだから、訓練を受けてもらうわよぉ。」

「?」

「そのためあなたの前にはいろんな人が来るけど驚かないでねぇ。」


この人一体何をするつもりなの?

私の能力が目的なら、私が表へでなければいい話、例えカンナ自身が〈能力辞典(スキルブック)〉を使おうとしても私の許可が無ければ使えないのだから。


それに....


『こんな姿のまま表へ出たくないわ!!』


猫の姿に一度なれば、着ていた服は全て脱げてしまう。

そして、人間に戻れば産まれたありのままの姿だ。


裸でいるのに抵抗のないカンナは平気そうだけど私は嫌よ!!そもそも私の体だよ?

知らない人に見られるなんて恥ずかしすぎるでしょ...


本当にカンナのばか....

絶対表に出ないからね!〈能力辞典(スキルブック)〉だって絶対利用させない!





6月8日


11:⁇


「....うっ....」


私はずっと裏にいたので知っている。カンナの一種の暗示系能力をかけていることを。


そこまでして私の〈能力辞典(スキルブック)〉を...けど無駄よ...カンナにいくら暗示をかけて操っても〈能力辞典(スキルブック)〉を使うには私が認めなければ使えないわ。

私の存在を知らない限り何をしても無駄ね。

とりあえず暗示系能力の影響で混乱していて状況の理解出来ていないカンナにはこれだけは教えておいてあげる。


「...<記憶操作(メモリーコントロール)>....」


特殊能力(スペシャル)で暗示系能力の一つ。

対象の記憶を操る(書き換える)、記憶の改ざんをする暗示系だから少しすれば勝手に効果は消えるけど、数時間以内に連続してかけていればしばらく...場合によっては永久的に書き換えられたままに出来ちゃう....


このままでは危険ということは伝えた。

ゆめとたちもすぐに助けに来れるとは思わないし、カンナ次第。


もし私が表に出れば能力をかけられて〈能力辞典(スキルブック)〉が使われてしまうわ。

それにどうせみんな私に気づくことはないんだし....

投げやりみたいだけど、どうにかしてね。


再び牢獄の外からコツコツと足音が聞こえてきた。


さぁ、また来てしまったみたいね....

精神力さえ強ければ能力にかかりにくくなるから、少しでも耐えて。

それじゃあ、私は....


奥深く、暗闇の中に沈んでいった。

ここなら私は呼ばれることはない....

このまま行けばずっと表に出ることも.....


「出てこい香月。」


(え!?)


突然名前を呼ばれ、驚いた。

けど、どうして...


「いつまでも隠れていてもSSTにはバレてる。」


(けどこの声は....)


私は完全に闇の中に入り込む前に浮き上がり、強制的に表へ出た。


「元旦以来ね...いえ、学校で何度か見たからそうでもないわね。」


ゆっくりと瞼を開け、目の前に立つ逆立った髪型をした男性を確認した。


「黒塚くん。」

「ああ、そうだな。」


そして思い出したかの様にあることに気がついた。


(あれ、けど私今の格好って...)


「きゃー!!」


(恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい!!)


「うるさいぞ。」

「いや、だってこんな姿誰かに見られてるなんて....って、あれ?

服着てるじゃん。

それに手錠も外れてる....」


悲鳴はフロア中に響き、他の人に気づかれた様だ。


「チッ。お前が騒いだせいでゆっくりと話している暇はねえな。」

「ご、ごめん。」

「今お前のところの男が必死に探してる。」

「ゆめとが...」

「明日....明日の朝に助けに来るはずだ。いいか、それまで俺の言った通りにしろ。」

「けど...なんであなたが?同じSSTでしょ?」

「俺は誰の味方でもない。」

「は?」

「俺はただ思う通りにさせないだけだ。」


(前からそうだったけど、この男がなに考えてるか私には全くわからない....)


「とりあえず、俺の言う通りにしろ。

次にお前に能力をかけに来る奴がくる。」

「隠れていればいいんでしょ?」

「ダメだ。」

「え?」

「次に能力をかけに来る奴は裏の人格に直接能力をかけられるやつだ。」

「けど、そんな能力存在しないはず...」


私の〈能力辞典(スキルブック)〉をフルに利用してもそんな能力の情報はない...他の能力と組み合わせれば、出来ないこともないけど....

能力を組み合わせることは不可能なはず。

なら.....存在しない能力。


「存在しない...能力?」


一つ引っかかった。


存在しない能力を作り出す能力...


五大能力(ソース)ね。」

「ああ。」

「けど、その五大能力(作る能力)ってあなたじゃ...」


え、けどなんでその本人がネタ晴らしに?


実は私の〈能力辞典(スキルブック)〉にも五大能力(ソース)の情報は単純な物だけしかない、詳しくは知らない。


「それじゃあ、別にいたとして...あんたは一体....」


能力を作り出す創作系能力は五大能力(ソース)しかないはず....

けど、この男は自分で他の能力を使え、存在しない物を作り出せる....


「今はそんなことはいい、他のやつが来る前に言っておく。

その裏に能力をかけられるやつは表にはかけられない、だからうまく表へ出たりして騙せ。

もう1人の方はもう手遅れだ、だからお前だけでも意識を維持しろ。」

「なるほど、私が表へ出ている間は黙って従えってことね。」

「ああ、あと....」


黒塚は右手をぎゅっと握り力を加え、ゆっくりと広げるとまるでマジックかの様に手のひらから長い白生地の水色の水玉模様の布が現れた。

そして「ほら」っと言ってそれを私の方へ投げた。


「これってゆめとがくれたリボンと同じ柄の...」

「体の何処かに隠して付けておけ。

これ以上無くすなよ。」

「うん。」


これならカンナも少しは安心するかもね...


「ちょっと待って。」

「何だ?」

「私はあなたを信じるからね。」

「ああ。」

「あと...ありがとう。」

「...。」


牢獄を出た黒塚は少し歩いて足がよろけ、壁に持たれた。


「大丈夫?英くん。」


そこへ着いてきていたのか、ミヤビが心配して体を支えた。


「ああ。大丈夫だ。」

「なんで英くんそこまでして...無理しないで。」

「....それは出来ない。

絶対に、奴の思い通りには...」


そこへ、悲鳴につられてやって来たのか、月夜がゆっくり歩いてきた。


「あ ら、黒塚クン何でここにいるのかしら〜?」

「月夜さん。いえ、ちょっと彼女の様子を確認ついでに着るものを与えただけです。」

「あら、ごめんね〜。

私も着替えを選んできたのよね〜。」


片手に垂れかけている派手なコスチュームをちらつかせた。


「いえ、ただの隠す程度の素朴な物なので別に構いません。

それでは急いでいるので。」

「あら、そう?

それじゃあ。」

「あ、英く〜ん。

待ってよー。」


月夜とすれ違ったとき、彼女の後ろに知らない男性がついてきていることに気づいた。


多分その男が月夜さんの作った能力を使える者だろう。


「ミヤビ。」

「なーに?」

「あの変態を呼んでこい。」

「ラジャ〜」


地下から外へ出たところでミヤビは軽々と移動して探しに行った。

そして黒塚は携帯電話を取り出し、電話をかけた。


『もっし、も〜し?

いつもあなたに幸せを、弱音屋でーす。』

『あ、ちょっと、あんたが出ると客が逃げるって言ってるでしょ!』

百合(ゆり)...営業妨害よ....』

『ちょ、お前ら静かにしろ!』

「....」


電話の向こうで勝手に会話が進んでいた。


『あ、はい?もしもし?』

「....おい」

『何だ、お前か?どした?』

「例の件、明日のまでに任せる。」

『あー、はいはい。わーったよ。

けどよ、相変わらず可愛げねえな。

それに一応俺はお前より年上なんだから....っておい?聞いてるか?』


ッピ。


「めんどくせえ。」


そう呟いて、学校を出た。



同日


16:30


あれから大分時間が過ぎた。

すでに5人から暗示系能力者が私にかけようとしに来た。


毎回違う人で、裏にかける能力と表にかける能力が交互に来た。

おかげで表へ出たり戻ったり....本当に疲れたわよ....

けど、カンナは大丈夫かな....

私の分も含めて、7人の人から能力を受けている。

完全に操り人形になっていてもおかしくない。


「おい、月夜様がお呼びだ。出ろ。」

「....はい...」


私はカンナの真似をして言われた通りに牢獄をでて、迎えの人の後ろについて行こうとしたときだ


「....っ!?...」


出たところで不気味な違和感を感じ、息を詰まらせ立ち止まった。


迎えの人が向かっている反対側から血生臭いような匂いが漂った。


「おい、どうした?」

「....いえ...長く座っていたので、歩きなれていませんでした.....」

「そうか、もう大丈夫だろ?行くぞ。」

「....はい。」



(きっと気のせい....よね...?)



にしてもこの格好....メンヘラすぎじゃない?

流石にこれは無いわ....

それにスカート短いし。


階段を登り、真っ白な廊下を歩き、ある部屋についた。


そこには巨大な装置とその操作盤の前に座ってキーボードに打ち込んでいる人影があった。


「連れてまいりました月夜様。」

「ご苦労様、秘山。下がっていいわ。」

「はい。」


そういって迎えに来た人は私をこの部屋へ置いて出て行った。


「えーっと、今はカンナちゃん?それとも香月.....ちゃん?」

「....カンナです。」

「あら、それじゃあ香月ちゃん変わってもらえるかしら?」

「....分かりました....」


香月と言っておけばよかった後悔しながら入れ替わるふりをした。


「お呼びですか?」

「久しぶりねー香月ちゃん。」


(久しぶり....?)


「まぁいいわ、こっちに来て能力の情報を頂戴。」


少し躊躇いながらも、言う通りにすると決めた。

そして一つ一つ能力の情報を伝えた。


「やっぱり、このスキルブックには載っていない物もあるのねぇ。」


(スキルブック?能力じゃなくて?

それにしても、この人の匂い....何処か懐かしい....それにこの声も...)



私は忘れてしまっているのかもしれない。

この人と私の関係....

月夜....月夜....


「月夜さん。」

「なぁに。」


(あ。)


つい、名前を読んでしまった。

この状況、どうしようか迷ったが、一か八か質問をしてみた。


「なぜ私の能力を必要としたのでしょうか?」


(バレないで!!)


「....だから私はこの世界を作り直したい、そう思ったの....」


(作り直す?....お...思い出した....)


昔この声でその言葉を聞いたことがあった。

そうだ、まだ言葉も話せなかった頃だからよく覚えていないけど...そうだ、多分私のお父さんらしき人が死んだ時、聞いたんだ....

お母さんの声だ...お母さんの匂いだ...


ようやくわかり始めてきた。

この人は私のお母さんだった。

けど何で私を施設に送ったのか...私の能力(スキル)が怖かったんじゃ無い...私の安全のため....

それに今の計画もきっとお父さんのため、私のためにしているのだろう。

何で私を操ろうとしたのか?

それは私に心配をかけさせないため...


(なのに私は....この人を恨み、忘れようとしてた....

何も知らない私は...お母さんを...ひどい....私は最低...)


「って....あはは、今のあなたにこんなことを話してもどうでもいい話しよね...あれ?

あなた...何で泣くの?」


いつの間にか目から涙が垂れて流れていた。

「分かりません。」といってシラを切った。


「そう....じゃあ、香月ちゃん。あなたはもういいわよ。カンナちゃんに変わって休みなさい。」


(けど、違うよお母さん...私はそんなのは望んでない...お父さんもきっとそんなこと望んでないよ....)


「分かりました、ぉ.....月夜さん。」


ついお母さんと言いそうになったのをなんとか抑え、疲れた私はそのまま裏に戻ってしまった。

そしてゆっくり、静かに泣きながら眠った。



6月9日

5:20


「おい、起きろ」


そんな起こし声で香月は暗闇の中で目が覚めた。


その声は...黒塚くんね。


「出てこい、香月。」


私を呼んでる...出なくちゃ....


(っえ...出れない!?)


「....すみません、直接月夜さんの命令でないと表へ出すことは出来ません。」


完全に操りきられているカンナは無感情に勝手に答えた。


(違っ!!!....な...なんで!?表に出れないの!?

精神力は十分ある!なのに!!

それに外も見れない!)



無限に広がる心の中の暗闇空間。本当なら少し上へ泳げば外の様子が見れる、もっと上へ泳げば表にだって出ることは出来る。

けど、泳いでも泳いでも外の光は全く見えなかった。



(どうして!?)


「そうか...月夜さんの命令だ、着いてこい。」

「....分かりました。」


(ちょっと待って!!....どうして...

....まさか....暗示系能力がカンナを完全に!?

それじゃあ、失敗したってこと!?

いや...助けてゆめと...)





能力対決直前


私の前に突然誰かが出てきた。


付き添っていたそばに居た人は気づいたらいつの間にか居なくなっていた。


目の前にいるフードをかぶった誰か。


何かを話したようだが、最後にその人は私の頭にぽんと手をおいて....


あれ、何話したのだろう?確に1回表に出れた気がする。


気のせいだったのかもしれない。よく覚えていない、今は助けてもらいたい。ただそれだけ。




「おい、カンナだろ?

なんでお前がSSTなんかにいるんだよ。」



(その声はゆめと?

...この状況だと、カンナとゆめとが戦ってるってことね....)


「おい、カンナ!どうしたんだよ!」

「....」


(ごめん...ゆめと...傷つけちゃって...)


「俺だよ、夢渡だよ。」

「....」


(知ってるよ...カンナが操られていても私は知ってる。)


「ほら、お前を助けに来たんだよ!」

「....」


(ありがとう...もう私の体を傷つけてもいいから、さっさと終わらせて。

お願い...)


操られているカンナにはゆめとを全く理解出来ていない、完全に命令通りに彼を倒すつもりだ。


(やめて...)


結局彼は私のことを忘れているのかもしれない.....


(けどそれでもいい、私は彼を傷つけたくない...)


「....ごめんな...おまえを助けられなくて...

もっと早くお前を助けて上げていれば....」


彼の枯れて苦しそうな声が聞こえた...


(殺す...つもり!?

お願い...やめて...)


すると突然、私の中に外からある感情が押し寄せてきた。


(なにこれ....なに、カンナの感情...?

哀しくて...愛おしくて....記憶操作されても...理解出来てるってこと?

ゆめとの言葉がカンナにも届いているのね....私にも届いてるよ....)


「.....カンナ....お前に殺されるならそれでいい....最後に俺のお願い....聞いてくれないか....?」

「.....」

「...最後に....お前の.....〈能力辞典(スキルブック)〉を見せてくれないか...?」


(いける!!今なら!)


私へ上へ上へ泳いだ、

しばらくして外の様子も見えるようになった。


(もう少し!)


そして少ししたら体が勝手に上へ浮き上がり始めた。


(今、行くからね...ゆめと!)


全身が今の体に繋がって、自分で動かせるようになった。

そして、急いで首を絞めている手を離した。


「ごっふぉ....ごふぉ!

はぁ...はぁ....おはよう....香月('')

「おはよう。夢渡。」


頬に自分の涙が流れていることに気付いた。


(カンナ...あとは任せて)


「ところで香月....パンツ丸見えだ....」

「い...いやっぁあああ!!」


足で思いっきり顎をけりあげた。


「あ、」


(やり過ぎちゃった。)



夢渡と香月は立ち上がり、ゆっくり会話を始めた。


「本当に夢渡はすごいね。」

「何でだ?」

「だって私の代わりに二重に能力(スキル)かかっていたカンナの心に響かせちゃうんだから....」

「え?」

「それだけカンナにとって夢渡は大事な人なんだよ。」


(カンナの影響なのか、私にもとっても大事な存在なんだよ...)


「それって....?」

「まぁ、私のこと覚えててくれたんだね。」

「ああ、もちろんだ。」


こんなに誰かを思って、誰かに思われていた...本当に幸せな気持ちだ。


(私はゆめとに出会えてよかった。

ずっと、裏からだけどゆめとの姿を見ていて惚れてしまった。

私は...ゆめとが好きなの...カンナ以上に。)


「それじゃあ、私が降参すればいいのね。」


(どうせ、勝っても負けても変わらない....

さっさとこんな無意味な戦いは終わらせるわ。)


「うん。」


その後は、黒塚くんの言う通りにことが進み、無事に解決すると思っていた。

王坂というマッドグループの長が計画を横取りしようとしたけど、ゆめとがそれを阻止した。

けどそれだけでは終わらなかった。


「いや...まだだ....」

「....!?」

「なら.....僕は...」


王坂は力の抜けたからだをぶらりと立ち上がらせ、壊れた装置にもたれ掛かる月夜に近づいて行った。

その男の右手にあるナイフに気付いた途端、すぐに体が動いた。


(ぜったいにそんなとはさせない!!)


他の人が彼の能力である〈絶対王政(ソロキングダム)〉によって動けない中、私もゆめとの様に体を動かせたのはきっと、彼が発動条件に必要な私の能力名を勘違いしていたのだろう。

確かに〈能力辞典(スキルブック)〉とは言っていた。

私もユキエと同じ〈同時保持者(デュアル)〉であることも知っていた。

多分彼は私のもう一つの能力を〈擬人化(パーソニフィー)〉と間違えていたのだろ。

私は〈擬獣化(アニマニフィー)〉なのにね。


だから私も体は動かせる、ゆめとはあそこまで間に合わない、私にしか出来ない。


(お母さんは殺させない!!!)


「っ!」


二人の間に割り込んだ結果、自分が刺された。


(....胸があつい.....苦しい....痛い...けどだめ....お母さんには...苦しい顔を見せたくない....)


「か....かづ....き?」


(それに、ちゃんとお礼を言わなくちゃ...)


私は涙を流しながらも微笑んでこう言った。


「ありがとう...

夢渡と出合わせてくれて....ありがとう...」

「何で...何であなたを一度捨て、利用した私なんかをかばって....」


(それだけじゃない...お母さんに思われていて、ゆめとにも気付いてもらえていた。

義理の父(おとうさん)にも心配されていて...

都合良く嫌なことはカンナに押し付けてしまって...勝手なところもあったけど....

そのおかげでいろんなことを感じれた、ゆめとと会えた、一緒にいれた。

本当に私は幸せだったのかもしれない。)



「産んでくれなかったら....私はこんな幸せになれなかった....

私を産んでくれて...ありが....と...う....」

「いや!違う!!お礼なんて言わないで!だから死なないで!!」


(ごめんなさい....

最後にちゃんと、お母さんって呼んであげなくちゃ。)


「ありがとう...私の....お母さん。」


(あと...いろいろ辛い思いさせた挙句、これで終わらせてしまってごめんね...


「...カンナ....」


徐々に視界はフィードアウトして、周りの音も聞こえなくなった。

体ももう動かない、痛みも苦しみも感じない。


(もう...死んだのかな....)


意識も少しずつ消えて行こうとしていた。

最後はこの半年間ほとんど過ごしていたこの暗闇で終わる...

すると、目の前にもう一人の自分が立っていた。


「....カンナ...」


私は体を近づけ、彼女に抱きついた泣き始めた。


「ごめんね!!今まであなたに辛い思いを押し付けてしまって!!

私のわがままに付き合ってくれて...

もっとゆめとと居たかったよね...

本当にごめん....ごめん...ごめん....」


彼女は微笑んで優しく私の後ろへ手をやって言った。


「....いいわ...

....私も幸せだった....

....ごめんなさい...本当のあなたではないのに...勝手に体を奪ってしまって...」

「これで、最後ね。

最後にあなたと直接会えてよかった。」


彼女はコクリと頭えをしたに下げた。

抱いていた体を離し、両手を繋いだ。

最後に向かってくる終わりの真っ白な世界を待ち受けて。


「...ねぇ....幸せだった?」

「ええ、とても幸せだった。」


笑顔でそう言った。






6月15日

10:20


真っ白な天井、横から暖かい陽射しがさしていた。


「....ここは?」


誰かに捕まって能力をかけられていたことまでは覚えていた。

それ以降は全く記憶がなかった。

この一週間何があったのか何も覚えてはいない...


けど目が覚めてすぐに涙が流れあの子の名前を呟いた。


「....香月....」


落ち着いたところで立ち上がり、周りを囲んでいた水色のカーテンを開けた。


(....この部屋にゆめとがいる)


向かい側に私と同じ様にカーテンで囲まれているところがあった、私はおぼつかない足どりで近づき、カーテンをゆっくり開けた。


「....ゆめと...」


夢渡がベットに横たわって寝ていた。


私はそのベットの上に上半身を乗せ、ゆめとの温もりや、窓からの陽射しの温かさを感じ、気持ち良さそうに寝た。




7月18日


私は普段通り以前の自宅だった岡類斗大学から学校へ行った。


夢渡の姉の園花(そのか)に家にいてもいいのにと言われているが、私は夢渡が戻るまではあの家には住まないことにした。


学校もあれから2週間しない間に校舎は修復されたようで、1週間前に授業が再開したばかりだ。


学校が終わり、帰ろうとすると夢渡の仲のいい友達の昇が声をかけて来た。


「カンナちゃん今日も行くのか?」

「...うん。」


そう一言で答え、すぐに別れた。

制服のまま放課後は病院へ向かった。


夢渡のいる病院へ。


あれから1ヶ月も経つが目を覚まさない病院の許される時間まで毎日ここに来ては夢渡のそばで寄り添ってあげた。


いつか、目を覚ましてくれる。

そう信じて。


何時ものように体を夢渡の足あたりの上に乗せ寝ようとしていた。


すると、体が彼の体が微かに動いたことを感じだ。


「....!?」


私は体を起こし目を覚ましそうな夢渡の顔を確認した。


「うう....」


彼は少しうなだれながらゆっくりと目を覚まし、上半身を起こした。


「....ゆ...ゆめと!!」


起き上がってすぐの彼に抱きついた。

嬉しくて涙が流れ、彼の体を強く抱いた。


彼の名前を何度も何度も呼んだ。


ゆめととまた一緒にいられる、話ができる、遊びに行ける、いろんなことをができる、そんなことが嬉しくてたまらなかった。


すると彼は私の両肩を掴み、ゆっくりと私を離した。


「....ゆめと?」


彼はまるで知らない人を見るかのような顔をして、こちらを見つめながらこう言った。



「えー...と、何処かで会いました?」


(....え?)

次回は月末までになればいいなぁ

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