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猫と能力と夢映し  作者: れぇいぐ
#5 能力対決とマッドグループとSST(下)
57/75

#5 ASC(アスク)計画

「これで無事にデータが取り終わりそうね。

ところで秘山?どうやって翔子が負けるように仕向けたの?」


戻ってきた月夜の秘書である秘山という男は呆れた顔をして答えた。


「いえ、私はなにも...」


しばらく沈黙が続き、月夜は切り替えた。


「.....まぁいいわ。

これで無事に全てのデータを取り終えられそうね。

ASC(アスク)計画発動へのした準備もここで終わるわ。

そのためにも協力してもらうわ、....香月。」




(ユキエさんが何を言っていた意味は理解できないけど、ここで勝たなきゃだめだ....)


「おーい、ゆめ〜!気楽に行けー」


ギャラリー席の方から昇の無神経な応援が耳に届いた。


(全くあいつは....よし、自分に出来ることをする。)


夢渡は一度深呼吸し、肩の力を抜き、正面に立つフードマントで姿を隠す相手に指を指してあの名台詞を決めた。


「ここで勝ってカンナを助け出して見せる....ジッちゃんの名にかけて!!」

「....」


寒い台詞に場内が沈黙した。


(....恥ずかしっ!)


恥ずかしさのあまり両手で顔を隠したいくらいだ。

そんな空気を立て直そうと審判である笹暮は選手の紹介を始めた。


「はい、今選手宣誓してくださったのがマッドグループ側1年F組の白地夢渡。」

「...一度言ってみたかっただけなんだ...こんな機会もうないんじゃないかと思ってたんだ...」


恥かしがる夢渡は完全に自分の世界に入ってしまったようだが、SST側の選手の紹介でそんな場合ではいられなくなった。


「対するSST側は....」


相手はフードマント脱ぎ去り、姿を現した。


「か....カンナ?」


夢渡の前にたつ少女は普段見る格好は違えど、この半年間ずっと夢渡のそばに一緒にいた見慣れた女の子だった。

そう、ここに来たのもその少女を助けるためだった。

しかし今、その少女がゴスロリ衣装で立ちはだかろうとしているのだ。


「おい、カンナだろ?

なんでお前がSSTなんかにいるんだよ。」

「...」


いろいろと質問を投げかけるが、カンナにはまるで聞こえていないようだった。

何度も声をかける夢渡の意思とはお構いなしに笹暮は勝負開始の合図をした。


「それでは....はじめっ!」

「ちょっと、俺はまだカンナと話を...!?」



困惑する夢渡にカンナは〈擬獣化(アニマニフィー)〉で容姿を猫に近づけ襲いかかる。

素早く間合いを詰め、猫のように鋭く尖った爪を生やした指で思いっきり引っ掻きにきた。


「っう!」


何とか軽い切り傷で済んだ。

姿は猫耳と尻尾を生やしたいつものカンナと変わりはないが、瞳は鋭く光ながらもその奥は光が見えず曇っており、動きもまるで猫のように警戒しながら四足歩行で移動していた。

そんな戦う姿勢を見せるカンナをみてもなお、夢渡は困惑してカンナに声をかけ続けた。



「おい、カンナ!どうしたんだよ!」

「....」

「俺だよ、夢渡だよ。」

「....」

「ほら、お前を助けに来たんだよ!」

「....」


どんなに声をかけてもカンナはまるで獲物を狩ろうとする猫だ。


(だめだ...俺の声が聴こえてない....誰かに操られてるのか?

もしこれが能力でされたなら.....)


「ごめんカンナ!」


夢渡はそう言って手から火の玉を出し、カンナに向けて撃った。

銃声のような音と玉は一直線にカンナの前足になっている手に飛んでいった。


(外部からの衝撃で解除できる.....)


しかし、猫のような反射神経で避けられてしまう。

その避けた先に再び撃つが玉の速度よりカンナの移動速度の方が速かった。




「夢渡くん....まさかカンナちゃんに怪我させる気?」


青野には夢渡がカンナに怪我を負わせ勝とうとしているようにしか見えないらしいが、それは違うと近くに来たユキエ否定した。


「よく見てみるのじゃ。」


夢渡の撃った火の玉はことごとく避けられているが、外れたその火は小さいが、しばらくその場で消えず燃えていた。


「これって....」

「場外へ誘導しているつもりじゃの。」

「ゆめのやつも頭を使うようになったか....」

「本当ね、夢渡くんはいつからそんな事を考えられるようになったんだろうね。」

「そうじゃの。」


聞こえないところで夢渡を知る3人は、今必死に戦っている彼を小馬鹿にするが、その本人はバカにされているとは思ってもいなかった。




(よし、追い込んだ。)


すでにカンナは舞台の端まで追いやられ、そのカンナの辺りを囲むように火の海がができていた。


このまま場外へ落ちてくれればマッドグループの勝ちで、カンナの暗示系スキルを解かせればいい。

もしくはカンナが捨て身でこの火の海を突破しようとして、外部からの衝撃として暗示が溶けるかでカンナを解放できる。

夢渡としてはカンナを傷つけずに済ましたいのだがそうはいかなかった。


カンナはなかなか舞台から降りてくれる様子はなく、むしろこの火の海を越える気のようだ。


「おいおい...まさか....」


そのまさかだ。

カンナは〈擬獣化(アニマ二フィー)〉で得た猫の跳躍力でこの火の海を飛び越えて夢渡の目の前に来た。


(けどあいつの手が火傷してるって事は喰らったのか?

ならこれで能力の解除が....)


「出来てない!?」


彼女は依然変わらず夢渡を敵として見ていて、〈擬獣化(アニマ二フィー)〉を解く様子も見られない。


「な...何で....」

「....」


『勝負にこだわるだけじゃだめじゃ。』

(それじゃあどうすればいいんだよ....)


そんなユキエのアドバイスに対して自分の中で言い返した。


手段を失い焦る夢渡にカンナは襲い掛かった。

夢渡を押し倒し、その上でしゃがみながら爪を立て彼の首を絞め始めた。


「う"!」


爪で刺された首は熱く赤い液体が流れ出した。


(完全に殺しにきてる....だろ...

なら....)


「....なぁカンナ。」

「....」


首を絞められうまく声を出せない中、掠れた声で彼女の名前を呼んだ。

それでも彼女の表情が緩むこともなければ、口を開くこともなかった。


「....ごめんな...おまえを助けられなくて...

もっと早くお前を助けて上げていれば....」

「....」


自分の喉を締める彼女の手を握っていた手を離し、猫耳の生えたカンナの頭に持って行き、優しくで撫ではじめた。

すると自分の頬にポツリと水滴が落ちてきたことに気がついた。


表情が一つ変わらない彼女の目からはポロポロと涙が流れていた。

それと同時に、首を絞めていた手が若干緩んだような気がした。



「.....カンナ....お前に殺されるならそれでいい....最後に俺のお願い....聞いてくれないか....?」

「.....」

「...最後に....お前の.....〈能力辞典(スキルブック)〉を見せてくれないか...?」


そんな夢渡のお願いを聞き入れたのか、コクリと小さく頷き、ゆっくり目をつぶった。

そして彼女が開いた瞼の先の瞳にはさっきとは違い、光も戻っていた。


「ごっふぉ....ごふぉ!」


夢渡ぼ首を絞める手は離れ、夢渡は吐血しながらも咳き込んで、荒く呼吸した。


「はぁ...はぁ....おはよう....香月('')

「おはよう。夢渡。」

「ところで香月....パンツ丸見えだ....」


香月は顔を赤くして立ち上がって、蹴りで夢渡にとどめを与えた。



「本当に夢渡はすごいね。」

「何で?」

「だって私の代わりに二重に能力(スキル)かかっていたカンナの心に響かせちゃうんだから....」

「え?」

「それだけカンナにとって夢渡は大事な人なんだよ。」

「それって....?」

「まぁ、私のこと覚えててくれたんだね。」

「ああ、もちろんだ。」


実はユキエの『相手は1人ではないからの。』という言葉が本当に役に立つとは思っていなかったようだ。


「それじゃあ、私が降参すればいいのね。」

「うん。」



五回戦、最終戦は香月による降参でマッドグループに白星3つでSSTとの能力対決(スキルマッチ)は勝ちとなった。



「治科ちゃん!早く!!」

「う、うん!」


青野に続き、次々とマッドグループ側のメンバーが夢渡と香月のそばに寄ってきた。


「それじゃあ、白地くんだっけ...治してあげるからじっとして。」

「う、うん。」


首と腕の傷を能力で治そうとしてくれた。


「私の力じゃ傷口を閉めることしかできないけど...」

「ありがとう。」

「ねぇ、本当にカンナ...ちゃん?」


(そうか、青野は知らないんだっけ...)


「はじめまして青野さん。

私は香月です。」

「え?え?どういうこと?」

「今は説明しておる時間は無い様じゃぞ。」


気づけば舞台の周りにはSSTの組織のメンバーらしき人たちがマッドグループのほぼ全員を取り囲んでいた。

その中には、さっきまで相手していた水屯高校の教師である四葉先生やしょうたん、高校で一度は見たことのある教師も何人かいた。


(おいおい...嘘だろ...)


すると、ギャラリー席の一番高い所にあるSSTのボスがいるであろう部屋の壁が上にスライドし、部屋の中が丸出しになった。


「あれ〜。香月ちゃんにも能力をかけるよう言ったはずなのにな〜。」


月夜は露わになった部屋と一緒に現れた。


「これはどういうことだよ。」


だいぶ傷も癒えた夢渡は立ち上がって少し怒りのこもった喋り方をした。


「ふふ...私はもともとこの勝負でマッドグループとケリをつけるつもりなんてなかったわぁ。」

「は!?」

ASC(アスク)計画の成功にはあなたたちに能力を使わせる必要があったのよ〜。」

「おい...それじゃあ俺らはその計画に利用されてたと?」

「そうよ。この計画はね、能力の発動する際に発生する波長の情報が必要だったのよ〜。

ほとんどはそこの〈能力辞典(スキルブック)〉から得られたけど、五大能力(ソース)は実際に発動させるしか方法がなかったの。」


(みんな必死に戦ったっていうのに、それはこいつの変な計画のためだったって言うのかよ....)


「ちなみに教えといてげるわ〜。

この計画はね、全能力を自分の思いのままに操れるという計画よ。

そしてその計画に使われるのがここの装置よ。」

「何でそんなこと...」

「...あなた方後天的能力者には先天的能力者の苦しみなんて知らないでしょうね....

だから、あなた方には教えることは無いわ。」


(先天的能力者の苦しみ?どういうことだよ....)



「さて、もうあなた方には用は無いわ。

始末しちゃってください!」

「な...」


舞台を取り囲むSSTのメンバーは数百人はいた。


(だめだ...完全に逃げ場無しだ....)

次回は月末に間に合えばいいな

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