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猫と能力と夢映し  作者: れぇいぐ
#5 能力対決とマッドグループとSST(下)
55/75

#3 アイ フォールド ラブ

(ふぅ、気まずかった...)


走って闘技場の外の廊下に出て一息入れた。


しかし廊下に出ても油断出来なかった。


(げ...)


廊下には一定の間隔でサングラスをかけたSSTの警備隊の様な人が微動だにせず、突っ立っていた。


その警備隊とすれ違いざまのチラッと近くで様子を見た。


(ん?何か様子が変だぞ....)


どの警備隊も顔が少し引きつっていて、何処かもどかしそうな顔をしていておかしかった。


「あの、すみません...トイレは何処ですか?」


やはり、どうも気になっていたので声をかけてみる。

するとゆっくりと口を開いて。


「と、とくに異常はありません!!」


とまさに答えになっていないことを答えた。


「....あ、そう。」


自分はそのままトイレのありそうな方向へ歩いた。


(やっぱり様子が変だ....)


時々違う人にまた同じ様に尋ねるが同じ答えが返って来るだけだった。

おかしく思いつつもトイレがあったので入った。


(とりあえずルイを探すか。)


そう言って個室のトイレのドアをノックしては鍵の掛かっていないところは開けていった。


3つ全部確認したがルイの姿はなかった。


(まぁ、普通鍵を閉めてるよな。)


ついでなので自分も尿を出すことにした。

すると、隣の便器に見たことのある男の子が立っていた。


(昇!?)


すると昇は遠慮なく俺に声をかけてきた。


「いや〜、さっきはびっくりしたぜ〜。

気づいたら知らない家の犬小屋にいてさ、俺は犬になっててよ。」

「...」


(何で普通に声かけて来るんだよ。)


「そんでよ、その飼い主がまたボインな女性でよ〜」

「...」


(いつもの昇だし、別に誰かに操られているわけでもないし、何でSSTに?)


「その女性が俺に抱きつこうとしてよ、大歓迎してたら闘技場に戻って気づいたら勝ってて.....あ。」


尿を出し終えた自分は便器から離れて洗面器へ向かう。

昇もそれを追う様に焦って下を閉めて、隣の洗面器に向かう。


「....」


急いで手を洗う夢渡に合わせる昇。

トイレを出ても後ろを追う昇に声をかけた。


「なんでついて来るんだよ?」

「え、だって親友じゃん。」


思わぬ答えに少し驚いた。


「なんだよ、裏切っておいて。」

「だから青野も裏切った裏切ったいってるけどそれは!」


すると何処からか、大きな爆発音と一緒に大きく建物内が揺れた。


「な、なんだ?」

「とりあえず闘技場に戻るぞ!!」


2人の少年は廊下を走り抜けた。



「それでは三回戦、マッドグループは1-F落合黄華(おうか)さん対SSTは2-Bミヤビさんの対決を始めます!」


「夢渡殿は間に合わなかった様じゃのう。」

「....」


知り合いのいなくなった美時はだいぶ静かになってしまった。


「結局カンナちゃんを探しに行ったのかな?」


さっきまで夢渡の座っていた席には青野が座って、舞台を眺めてそう言った。


「それは無いじゃろう。

あやつもこの戦いに対する考えを変えた様じゃからのう。」

「そっか。」




「あはは。さっきの戦い面白かったね〜。

あの変態くんが犬みたいになって遊ばれてるんだもん。」

(お主もバナナを追いかけておったじゃろう。)


茶髪短髪で活発そうな水屯高校の制服をきた女の子は楽しそうに話しかけてきた。


「そのリボンは先輩ですよね?」

「あれー?わかっちゃた?」


(っていうことは、普通科だから能力のない私でも勝てる!....かもしれない。)


「先輩だからって容赦しないよ〜。

まぁ、私と英くんとしては〜どうでもいいんだけどねー。」

「そうですか!」


黄華は長々と話そうとするミヤビのお腹にめがけて、シュっと拳を飛ばすがミヤビはギリギリでそれをよけてしまう。


「っく。」

「おお!危なかった〜!もう少しで当たるところだった〜。」


(治科ちゃんは能力を使わなかった傷も治せるって言ったし、思う存分やっても大丈夫。)


「君、いい拳してるね!」

「これでも空手をやってたからっね!」


さらに素早いパンチを繰り出すが、ミヤビは体をくねくねとさせてよけていく。


(何で当たらないの!?)


「僕も最近師匠から教わったし、やっちゃうぞ!」


さらにミヤビも空手の構えをして、右手を半回転させ、前へ突き出す。

黄華は避けきれず、左腕を壁にしてガードした。


「ッウ!」


(なんて力なの!?)


殴られた左腕は骨に響き、激痛が走った。

殴られたところはすぐに赤く膨れはれ、動かすとピキッと痛んだ。


「あれ?強すぎちゃった?」

「こんなの。」


(こんなので痛がってちゃだめ....。)


「それじゃあこれはどう!?」


ミヤビの左手が素早く黄華のお腹へ飛んでくる。

これも避けきれず、手で守るのも間に合わず、ミヤビの重いパンチをもろに喰らい軽く吐血した。


「っう!」


それなら....


ミヤビは続けてもう片方の拳を飛ばしてくる。


「え?」


私はその拳を掴みそのまま自分の体を相手の懐に入れ、相手を持ち上げるように引っ張り、背負い投げをした。


「っよ!」


ミヤビは背負い投げをされ、宙へ浮いたときに大勢を変え、叩きつける前に綺麗に着地して、そのまま黄華の腕を掴み、背負い投げのカウンターをして黄華を叩きつけた。


「うぐ!」


(な、あの体勢から!?....これも彼女の能力なの!?....能力のない私じゃ.....)


「でも.....でも....」



もう7年近く前の話だった。


私が小学3年生に進級して、彼と同じクラスになったのが初めの出会いであり、私が犯してしまった罪の始まりだった。


「ねぇ、あの子いつも大人しいよね。」

「そうなの?」


私は友達の女の子の言葉に疑問で返した。

それはそう、あの子と同じクラスになるのは初めてだから。


「他の馬鹿な男子より静かで嬉しいんだけどね。」


去年も彼と同じクラスだった友達は、彼のことを知っている様だ。

私はぼっーっと席に座っている男の子のことが気になったのか、しばらく見つめていた。

それを見ていた友達は私をからかう様に話しかけて来た。


「あれー?黄華ちゃんまさかあの子のこと気になっちゃう?」

「別にそういうのじゃないけど....寂しそうだなって。」


そう、私は同情していたのだと思っていた。


「え?黄華ちゃん?」


一人でいる彼が可哀想なだけ、だから声をかけてあげたい、それだけだった。

私は彼の席の前に立って声をかけた。


「こんにちわ」


自分の中で自然な笑顔でそう挨拶した。

彼は顔を上げて私の姿を確認しては再び伏せてしまった。


(む...何よ、声をかけてあげたのに...)


私は彼の態度にムカつき、呆れてしまったのでそれ以上は何も喋らず戻った。

そんな私を友達は無神経にもからかった。


「黄華ちゃん振られちゃったね〜。」

「だから好きなんじゃないってば!!」


しかし、後になってこの年頃の男の子は女の子と仲良くするのに抵抗があったりするのを知った。

ましては一人で寂しそうにしているところを女子に同情され、声をかけられるなんて男子にとっては恥ずかしいことなのだろう。


けど、私はそんなこと関係なしに何度か彼に優しく声をかけた。

挨拶はもちろん、何かしらの班決めなどがあればまず彼に声をかける様になった。

しかし、それでも彼は私に振り向くことはなく、梅雨へ入ろうとした。


私は彼を振り向かせようとあらゆることをした、彼の野球のクラブの試合を見に行っては声をかけたり何故か一生懸命になっていた。

私は何として彼を振り向かせてやりたい、その一心は徐々に私の犯してしまった罪へと変わっていくことになる。


何としても向こうから声をかけてもらうために、彼からノートを借りしばらく返さないでいたり、上履きを隠したりと敢えて彼にもバレる様に色々なことをしかけた。


それでも彼は文句も何も言わず、振り向こうとはしてくれなかった。

私はそれが、いじめているとは思わず、毎日繰り返していた。


夏休みが過ぎ、1、2週間が経った頃、ある放課後だった。

今日は彼を軽くからかっただけの日だったが、突然にも彼から私に声をかけてくれた。


その時「やった。」そう初めて彼が私に声をかけてくれて嬉しくおもった。


しかし、私の期待していたような台詞が来たわけではなかった。


「もう...やめてくれ!!僕をいじめて楽しい!?」


そう半分泣きながら怒鳴る彼の言葉は私を混乱させた。


いじめ?私は別に....そんなつもりじゃ....


しかし、私はこの数カ月に彼にしでかしたことは、いじめと変わらないものだと気づいた。


「....う....うう」


私はそんな...つもりじゃ....


自分が彼にそう言われ、彼を前に初めて泣いたとき自分が彼のことが好き(・・)だと言うことに初めて気がついた。

しかし、私にはその男の子に告白する権利なんてない、付き合える権利なんてなかった。


そこで私の初めての恋は自分のせいで終わってしまった。



あれから、6年経って再び彼と会えた。


あの時に私は許されないことを彼にしてきた。

そして自分の気持ちを伝えることができなかった。


「私には能力がなければ、あなたに勝てるような力がない....」


黄華はゆっくりと立ち上がった。


「あれ〜?まだやるの?」

「私は負けたくない....少しでも彼を償いたい、あのときの気持ちを伝えたい....」

「ん〜よく分からないけど、もうこれ以上痛い思いはさせたくないからこれで終わりにするね。」


ミヤビは再び早いパンチを黄華の腹部にめがけて繰り出す。


「私は...私は...夢渡くんのことが好きでした(・・・)!!!」


そのときだった、黄華の両手から黄色い光が光だし、黄華はミヤビの拳を両手で掴み、もう一度背負い投げをした。


「だから通じない...よ!?」


(あれ!?力が入らない...それに体もうまく動かせない!!)


ミヤビは勢いのまま背中から地面に叩くつけられた。


「うぐっ!」

「き...決まった?」




「黄華...夢渡くんのこと...」

「やっと言えたようじゃの。」

「....」

(告白....)


黄華の突如の告白に唖然としている青野に最初から分かっていたユキエ、少し顔を赤らめる美時がいた。


すると、上から大きな爆発音と共に場内が大きく揺れた。


「な、なんじゃ!?」

「何が起きたの!?あれ、黄華!?」


揺れが収まるとともに黄華はバタンと不思議と倒れた。




「勝負あり!」


それをみて、戦闘不能とみなした笹暮は合図した。



「治科ちゃん!」


青野は治癒能力を持つ同級生を連れて黄華の元へ向かった。

そして、治科は倒れた黄華の上に両手を乗せ、緑色の薄いオーラのようなものを出した。


すると黄華の傷は癒えはじめ、打撲の痣は目立たなくなるが、黄華は目を覚まさなかった。


「わ、私はこれ以上は出来ない。」


そう告げる治科のそばにユキエは近寄る。




「な、どうしたんだ?」


大きな揺れに反応して闘技場に戻ってきた夢渡と昇は倒れた黄華の姿をみて驚いた。


「黄華!!」


昇は一目散に舞台に向かった。


「ユキエ」

「大丈夫じゃ、ガス欠の様じゃ。」

「それじゃあ、黄華は能力を!?」

「そうじゃ、五代能力(ソース)を使っての。」



夢渡は一人で立ちすくむ美時に尋ねた。


「どうなったんだ?」

「負けちゃったみたい。」

「そうか、黄華ちゃんは頑張ったみたいだね。」

「うん。」


(これで1勝2敗....もう負けられないな....)



これで、5試合中3試合が終わり、相手のリーチになってしまった。


(残るは俺と美時だけ....ってかルイのやつこんな時に何処行ったんだよ!!)

次回は月末あたり。

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