#6 闘技場
6月9日
7:00
「無事5人揃ったことだし行こうと言いたいどころだが...」
「どうしたんだ?」
「何処から入ればいいか分からない。」
「おい!」
「昨日は隣の公園にあるコンテナから攻めるつもりだったが、「学校の裏」と指定されてるからな。」
「じゃあ迎えが来るのを待ってればいいのか?」
「そうみたいだな。」
しばらく待つことにした。
登校日じゃない朝の学校は本当に静かなものだった。
この時期の丁度いい位の涼しさとを感じつつ、フェンスの向こうに見える紫陽花の花を眺めていた。
「なかなか来ないね。」
「私たち騙されたじゃなの?」
30分近く待たされて、黄華と青野は待ち飽きてしまったようだ。
「....」
その可能性はなくもなかった。
「ルイ兄あれ。」
美時は王坂の袖を引っ張り、伝えた。
美時が見つけた人物は綺麗に整ったスーツを着たメガネをかけた若い男性。
夢渡と黄華には大分見慣れた人物だった。
「すまんな〜8時だと勘違いしてたものでな。」
「「寺門先生!?」」
入学当時から天然なドジを見せびらかしてくれている、1年F組の担任、寺門大字。
ちなみに国語の授業を受け持っている。
「やはり彼もSSTか。」
薄々感づいていましたアピールを見せる王坂はさらに続けた。
「となると、少なくとも能力科担任は全員のSST側となるのか....
それは厳しいぞ....」
王坂の言葉が気になる夢渡ではあったが、そんなことは関係なかった。
(俺はカンナさえ救出すればどうなったっていいさ。)
「さて、案内するから着いてこい。」
学校にいる時のように先生に気軽に話しかけられるような雰囲気ではないようだ。
寺門先生に着いて行った先は裏から入った校舎内のすぐ隣にある鉄の扉だった。
「学校にこんなものあったか?」
「私も知らない。」
「多分ここは普通科の校舎だからじゃない?」
「なるほど。」
(そうか、普通科に知り合いがいるわけじゃないから普通科校舎に来ることなかったもんな。)
「この扉の先だ。」
寺門はそう言ってその鉄の扉を引いた先は、地下へと降りる暗い階段ががあった。
(地下にあったのか....)
「おい待てクソボウズ!」
そんな怒り帯びた声が聞き覚えのある夢渡を引き止めた。
(....うわ!松本!)
彼の彼女を傷つけた件と、彼が朝低血圧であるせいかこの人には会いたくなかった。
「お前、ボスの言ったこと破って勝手に行動しやがって!!」
そう言って夢渡の手を引っ張る松本に寺門は間に入った。
「おっと。これから彼らには重要な仕事が待ってるんだ邪魔させ無い。」
「てめぇ寺門!そこをどけ。俺はそこのボウズを連れて行かないといけねえんだよ。」
「たとえ鉄平だろうとそんな事はさせないよ。」
(こいつら知り合いだったのか?)
寺門は振り向いて夢渡たちに言った。
「お前らは時間が押してるから先に進め。」
((お前のせいだろ!!))
彼の受け持つクラスの生徒2人は心でそう叫んだ。
「行くぞ。」
王坂は気の緩んでしまった3人を引き締めるかのように声をかけた。
そして、5人は扉の向こうの階段を下りていった。
「鉄平は相変わらず短期だね。」
「うるせえ。お前は相変わらずのドジっぷりのようだな。」
「学生時代は落ちぶれてた君が荻野先生の下に就くとわね。」
「優秀だったお前がよくもわからない機関に入るとはな。」
「ははは、ここは心地がいいぞ。お前もSSTに歓迎してあげるぞ?」
「興味がねえからそこを通せ!
例え同じ学問を学んだ仲でも容赦しねぇ。」
松本は指先に3センチ大の火の玉を作り投げつけるが、その火の玉は寺門の体に当たったところで大きな炎によって打ち消された。
「俺と同じ....」
「いいや、そんな〈発火能力〉みたいな低級な能力と一緒にしないでもらいたいね。
〈灼熱の炎〉、SSTによって開発された〈特別能力〉にさらにレベルを上げた。
だから貴様のような落ちぶれた奴に負けるはずがない!」
☆
階段を降りるたびに光は無くなって行き、足場がギリギリ見えるところで階段は終わった。
そこから少し平坦な道を歩いて広い部屋に着いたようだ。
「ここはどこだ?」
「暗くて何があるか分からないわね。」
「ここは確か...」
夢渡と青野の疑問に答えようと王坂が答えようとした時だった。
その部屋の電気が一気に付いき、突然の光に目の前が真っ白でなにも見ることができなかったが、しばらくして瞳孔が慣れ部屋の様子が見えてきた。
「ここは....」
そこには約50M四方のコンクリートででできた土台の周りにギャラリー席が置かれた広い部屋だ。
「これって天下一武道」
「夢渡君それ以上言っちゃダメよ。」
黄華に強制キャンセルさせられた。
代わりに王坂がこの部屋の解説をしてくれた。
「ここはSSTの研究施設の一つで、昔から能力の強化、開発のために実験台同士でつかっていた闘技場だ。」
説明し終わった瞬間天井の備えられたスピーカーから女性の声が部屋に響き渡った。
『やっときたわねぇ〜』
聞いたことのない女性の声に王坂と美時以外は困惑していた。
「誰だ?」
「月夜...」
部屋の奥の電気が照らした先には真っ黒なドレスを着た長髪黒髪の女性がマイクを持って美しく立ち振る舞っていた。
『ようこそ!私の研究機関へ!』
「私のって....」
「この人がSSTの創設者の綺能月夜。」
『月夜さんでしょ?ルイくんは相変わらず私に優しくないのねえ』
「レディーじゃなくてオバサンだからさ。」
王坂のそっけない一言に夢渡は不思議に思った。
「嘘だろあんなに若そうに見えるけど。」
「彼女は三十路をとっくに過ぎているさ。」
「それはオバサンだ。」
『聞こえてますよ〜』
オバサンは凄い形相でこちらを睨んできたが王坂は平気と話を進めようとする。
「それで決着をつけるってまさか。」
『そうよぉ〜能力対決で勝負をつけるわ。
ちょうど役者が5人揃ったようですし、1対1のデスマッチで決めましょう。
たとえ大きな怪我をしてしまってもこの子がいるから大丈夫よぉ〜。』
綺能がそう言った直後にもう一つのスポットライトがある女の子を照らした。
「えぇ?ここどこ?
眩しい?」
眼鏡をかけた女の子はこの状況を理解できておらず、おどおどとしていた。
(水屯高校の制服だよな、あれ。)
「え?先生に呼び出されただけなののなんでこんなところに??」
(勝手に連れて来られたのか。
彼女には悪いけど....仕方が無い....)
『彼女の〈治癒能力〉なら能力でなら怪我しても絶対直せちゃうから心配せずに思いっきりやっちゃって〜。
私たちが負ければルイくんの言うこと聞いてあげるね。
後のルールは彼に聞いてね〜
それじゃあ私は向こうで眺めてますねぇ〜」
再びスポットライトは闘技場の真ん中を照らし、マイクをもって出てきたのは最近良く見かけることのある眼鏡の少年。
「能力対決といえば私、笹暮信也です。
この決闘の審判を受け持つことのなりました。」
笹暮はそう自己紹介すると、ルールを説明しようとした。
「ちょっと待った!!SSTが出した審判ってことは向こうの有利な判定とかするんじゃないか?」
疑り深い夢渡はそう投げかけたが、笹暮冷静に答えた。
「それは大丈夫さ、僕はSST側の人間でなければもちろん君たちの見方でもない。
能力対決の監視として存在しているから不正な判決は下さないよ。
なら僕の〈規制保持〉に誓ってもいいよ。」
「う...なら別にいいけど。」
別に信用したわけでもないが、笹暮の感情のないような言葉に何と無く言い返すことができなかった。
「さて、ルールは某少年漫画と同じ、戦闘不能になったり降参したり、あとこの四角い舞台から落ちたら負けとなるからね。落ちたと言っても地面に着かずに宙に浮いていればセーフだから。
まぁ宙に浮ければだけど」
(まんま某少年漫画だな...)
「時間制限は特に設けてないからそこは気にしなくても大丈夫。
それでは一回戦を行うので準備が整ったら言ってください。」
そう説明の終わった途端王坂は外野からその闘技場の舞台の上にあがった。
「おいルイ。何やってるんだ?」
「一回戦目は僕が出るよ。」
「いやいや、一応ボスなんだし大将だろ?」
「能力対決したことない君たちのために僕が先に行ってあげるのさ。」
(そうか、美時ちゃんはどうか知らないけど、俺や黄華、青野はそんな経験がないからな...)
「マッドチームは王坂くんだね。ではSSTの方も準備が整ったら始めます。」
(....1回戦目か....さて...いつカンナを探しに行けばいいかな....)
夢渡は考えながら外野のコンクリートでできたギャラリー席に腰掛けていた。
青野と黄華は同じ学校の女子として巻き込まれた<治癒能力>の女の子の元で説明していた。
「そうじゃな....夢渡殿ここの警備は堅いから危険じゃぞ。」
「そうか...警備もいるんだよな、それをどうにかしなくちゃ....ってええ?ユキエさん!?」
狐の耳と尻尾を生やしたユキエはいつの間にか夢渡の隣で足を組んで座っていた。
「どうしてここに...?」
「ワシは〈心読術〉をもつ〈同時所持者〉でさらに〈軽業〉に負けない身体能力と体術を持ってるからチートだと言われてのう....
これでも神のような存在だから仕方が無いというのに....」
ユキエの声はほとんどユキエ本人にしか聞こえないぐらいまで小さく、夢渡は聞き取れなかった。
「いや、だからなんで闘技場にいるの?」
「能力対決とやらが気になったからかのう。」
「へぇ....」
(どうしよう...昇がSSTってことを聞くか?.....けど....)
自分の中に昇が敵であるSSTの仲間ということを認めたくなかったのだろう。
「大丈夫じゃ....お主はそう心配する必要ないぞよ....」
ユキエのその一言で少し気持ちが和らいだような気がした。
『さてSSTの方も準備ができたようです。』
SST側からフードコートを被って顔を隠してた人が舞台の上へ上がった。
☆
「秘山、装置の方は準備できている?」
月夜はワインの入ったグラスを片手に、舞台から高い位置にあるギャラリー席に座って1番の秘書である彼の尋ねる。
「ええ、<能力辞典>にある情報を入れるだけになったので、二回戦には間に合うと思います。」
「そう。よかったわ〜もしも彼らが一回戦で出てきたら間に合わないですものね....
全部の能力対決が終われば思い知らせてやることができるわ....」
小説タイトルの件ですが、活動報告でも言ったとおり勝手な都合で変えさせてもらいました。
コメントでああ言ってもらえると嬉しいです。
それでは次回からはバトルものに....




