#6 香ンナ月3
カンナ自身も薄々気づいていたと思う。
自分の中にもう一人の自分がいるということを。
「....はじめまして....」
だからこそ驚かず、落ち着いて返事をしてくれた。
私がまた裏に戻る前に先に今回の能力の原因や推測することを彼女に伝えた。
ぼっーっとしていて、聞いているのかどうかよくわからないけど、理解してくれてると思いながら話を進めた。
(今回の件を伝えた。
けど、それだけじゃだめ。
言いたいことを....今言わなくちゃ...)
私はカンナに自分について話した。
私が今までその体で生きていて、<能力辞典>が私の能力であり、私には過去の記憶がしっかりあることを。
そのことを知らずに生きているカンナはどう感じるのか、そんなことを考えながらも話した。
「ねぇカンナ。あなたはこれを聞いてどう思う?」
中々表情を変えてくれないカンナに少し不信感を抱いてきた。
(何で平気そうな顔をするの?
どうとも思ってないわけ?)
そして、彼女が私に言った言葉は
「....だからなに?」
私は一瞬何も考えられなくなった。
もう一人の自分に対してどうとも思わないというカンナに私は傷ついた。
私の気持ちを分かってくれない、知ろうとしてくれない。
「ねぇ!!ねぇ!!なんで!?なんでそんな平気なの!?」
「....ねぇ。私はあなたであって、あなたは私。
....あの事件から私はあなたから生まれた....
.....いや出てきたの。」
「そんなこと知ってる!!」
「....何で私を受け入れないの?」
「受け入れてるよ!!あなたは私であるんだから受け入れていないわけないでしょ!?
けどさ、おかしくないの!?
本当ならあなたが私の裏で私が表じゃないの!?
好きな時に誰かと話して、遊んで、恋をしたりしちゃダメなの?
なんで?....なんで.....」
「...あなたはいつも私の中から見れるでしょ?私はあなたが表にいる間何の記憶もないの。」
「だからなによ?だからあなたは私の裏でなくちゃいけないんじゃないの!?」
「...それはあなたが望んだこと....」
「嘘!!そんなことない!!だってこうなったのはあの事件のせいでしょ!?」
「...あなたはあの時私を呼んだの、生み出したの。」
「違う!!私は....」
「....怖い....寂しい....助けて....そんな感情を私に押し付けてあなたは隠れたの。」
「....」
(そうか....私はあの時、背信状態になっていた。
今まで信用してきたお父さんが私を実験の素材としか思っていないと思い.....)
「....何も知らない私は怖かった。
...そんな感情を押し付けられ、記憶もない....
....あなたはは裏にいても分かるんでしょ?」
「.....」
(そうか...私はカンナに嫌なことを押し付けたんだ....
自分の都合のいいようにしようとしていたのかな....)
私はカンナに頭を下げて言った。
「ごめん...ごめんねカンナ....
私が悪かった....
それはそうよね....
私の方がよっぽどずるいじゃん...理不尽じゃん....
ごめんね....
こんな私で....
怖い思いさせてごめんね....」
私は泣きながら謝り続けた。
「....顔を上げて。」
そう言われ、私は目から涙を流しながら夢渡...カンナの顔を見た。
「....けどね」
カンナは私の目から流れ出る涙を手で拭いて言ってくれた。
「....おかげで夢渡に会うことができた...一緒に暮らすことができた...同じ高校に通うことができた....」
「....」
「...だから今は別にいいの。
....あなたの体をずっと使わせてもらってごめん。」
「いや。私の自業自得....」
(そう...あの時私がもっと強ければ)
例えカンナが表にいても私はそれを見て知ることができる。
それに出ようと思えば出ることも出来るのだから。
(我慢するしかない....
私がそれを望んだのだから...選んだのだから...)
「分かった....」
私は自分のしでかしたことを理解した。
カンナだけじゃなく、自分の選んだ道を受け入れなくてはいけないのだ。
「夢渡の精神力もそろそろ限界みたい...」
「...うん。」
「ごめんね。」
私はもう一度謝った。
「カンナ。わたしの分も楽しんでね。
あと夢渡にもっとアタックしないとダメだよ。」
私は嫌味気味にそう言って裏に戻ろうとした。
最後に目を閉じる間際で、カンナが少し涙を流して微笑んでくれた。
「夢渡。ちゃんとカンナには伝えたから、後はよろしく頼むよ....
頑張って....」
夢渡には聞こえていないだろうけど私はそれでも心の中ではなく、口に出した。
申し訳ないです。始めてなものなので、感想というものがあることを初めて知りました。
随分と遅いですが感想ありがとうございます。




