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猫と能力と夢映し  作者: れぇいぐ
『貧乳と変態(狼)と誘惑』
36/75

#5 閑静


20:00


やっと到着して飛行機から降りた。


もちろん外はすでに暗かったが、変だった。


「雪?」


空を見たが雲ひとつなかった。


すでに空港内も外の様子がおかしいことに気づき始め、騒がしくなった。


(どういうこと?雪じゃない....カイト....カイトなら何か知ってるかも。)


急いで荷物引き取り場に向かった。


外の様子を見ようと逆流する人の中をかき分けて、なんとかそこに着いた。


既にそこには人っ子一人いなくて、荷物を乗せたベルトコンベアのみが寂しく回っていた。


「え...と私のバックは....あ、あったあった。」


キャリーバックをベルトコンベアから降ろし、動物の引き渡しするところに向かった。


「あーあ。体の節々がいてぇ〜。」


動物引き渡し部屋から聞いたことのある声が聞こえた。


「カイト?」


「あれ?香恵ちゃん?」


ドアノブを回して扉を開けた。


「ねぇ、いま外が....」


扉を開けた向こうには全裸の男性が腰に手を当て、体を後ろに反らしていた。


その男性は口を開いて聞いてきた。

「え、外がなんだったて?」


「きゃ......きゃあああああああ」


自分の悲鳴が響き渡った.....


「な、何でカイトが?....私が人間じゃないから付き合えないとか言ったせい!?」


扉越しに叫んで尋ねた。


「あ?俺も知らねえよ!!気づいたらこんなことに」


「と、とりあえずそこに着るものとかないの?」


「ちょっと待てよ。」


扉の向こうで色々な音が聞こえてきて静かになった思ったら、私が寄りかかっていた扉が突然開き驚いた。


「わっ!ちょっと〜いきなり開かないでよ。」


「そんなとこに寄りかかっていたなんて知らねーべ。」


「でさ、何が起きてるかわからないんだけど!!それに何よそのとってつけたような獣の耳は!!」


「俺にも全くわからねえよ!!この耳だって、何で人間の姿になったのかも。」


「それでも賢狼なの!?」


「そんなのカンケーねーよ!!」


何が起きているのか全く分からない。


(もうどうなってるのよ....)


「まぁ、人がいない今のうちに出て行こうぜ。」


「う、うん。

って、ええ?ちょっと何!?」


カイトに足を持ち上げられ、背中を支えられて....


(え!?お姫様抱っこ!?)


「おお、軽い軽い!!何か狼の時よりすごい力が入る!!」


「だから、何でお姫様抱っこなの!!」


「早く逃げるために決まってるだろ!!」


「いや、けどただの人間なんだから普通に走った方が早いから、降ろして!」


「よし、じゃあ行くぞー」


「え、だから待って、下ろし」


私が言い切る前にカイトは足を思いっきり蹴って前に進んだ。


(あれ、は、早い?)


周りの景色があっという間に通り過ぎていき、体に風が強く当たるのに気づいた。


「すげー!!人間ってこんなに早く走れるのか!!」


「いや、それはおかしいよ。」


(本当に一体何が起きているのか全くわかんない....)


「ってか、早く下ろして〜!!」


過ぎ去っていってしまった人混みなどの景色が、一気にピタッと止まった。


「よーし着いたー!」


体を起こしてもらい、クラクラした視界の中で立った。


「うえ"」


「何で酔ってるんだよ?」


「あんたがいきなり止まるからでしょ!!」


「下ろして〜って言ってたじゃねーか。」


「屁理屈言わないの!!」


「....なぁ、ここからどうやって帰るんだ?」


「この様子じゃあ電車も当分動かないね....」


外は空を見上げる人ばかりで、落ち着いている人がいれば、騒いでいる人もいる。


この現象がどんな影響を及ぼすか分からない以上、交通機関も安易に稼動しないだろう。


「じゃあ、またお姫様抱っこで。」

「嫌だ。

それなら歩いて帰った方がいい。」


「...どんくらいかかるんだよ。」


「5時間くらい?」


「よし、しっかりつかまってろー!」


「嫌嫌!!、下ろして〜!!」


「はぁ....歩くか...」


「うん。」


外灯が照らす、静かな暗い道路を歩き出した。










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