#4 搭乗
12月24日10:20
「香恵、じゃあ気をつけて帰れよな〜」
空港場の建物の入口辺りでお父さんとのお別れをしていた。
「うん。」
「けどいいのか?お父さんも中で一緒に待ってやるぞ?」
「いいよ、お父さんは早く仕事に行って。」
「あはは、娘に心配されるとわな〜」
「じゃあ、また今度遊びに来るね。」
「ああ、お母さんによろしく言っておいてくれ〜。」
「うん、じゃあね。」
「じゃあな」
手を振るお父さんに、手を振りかえしてキャリーバックを引いて中へ入った。
(チェックインまで時間があるからのんびりしていこうかな....)
お土産売り場を徘徊して、時間を潰して、チェックインが可能になった時間になって、行こうかと思った途端だ。
何かに足が引っ張られた。
「え?」
振り向いたら大型犬ぐらいの大きさの動物が私のジーンズを引っ張っていた。
小さな声で話しかけた。
「.....あんたなにしてんの?」
「ワン」
「いや、ワンじゃなくて。」
「ワン」
「あ、ちょっと、引っ張らないで....」
それは私を引っ張って空いているベンチまで連れて行った。
私をそのベンチに座らせ、その隣にそれは乗った。
「....これで満足?カイト」
「ああ、あんな距離で聞こえる声を出していたら変に思われるだろ。」
「そうですねー、でなんでこんなとこまで来たの?」
「だからお前の事が好きに」
「そもそも人間じゃないくせに付き合えるはずが無いし。」
「....」
「ねぇ、正直に言ってくれない?」
「....あーああ。わーったわーった、本当は気になるんだよ!!偉大なるニホンオオカミが絶滅したのかがよ!!」
(偉大なるって....)
「あ、けどお前が好みなのは本当で。」
「絶対無理、好きな人いるもん。」
「はああ!?そんなやつ俺が殺して。」
「っし、うるさい。」
「....」
自分の乗る飛行機の搭乗締め切りのアナウンスが流れた。
「あ、やばい早くチェックインしないと!!」
「え、おい。俺はどうすれば!?」
「犬の真似でもしてればいいじゃない!!」
チェックインの受付に急いだ。
☆
12:20
「ふぅ。」
チェックインを終わらせ、飛行機に搭乗し一息ついていた。
結局チェックインの時、カイトのことは適当に理由をつけ、何とか連れて行くことができた。もちろんカゴに入れられ、今頃荷物室に積まれているのだろう。
(昨日は本当に危なかったけど、流石に今日は無事に帰れますように....)
昨日の出来ことの不安がまだ残っているせいか、正直まだ安心出来なかった。
ベルトのマークが光ったので、ベルトを締めて離陸を待った
『本日は◯◯航空にご搭乗いただきありがとうございます。
ロシア△△空港12:42離陸、日本◻︎◻︎空港に19:42着の予定です。
飛行中揺れることがございますので、ベルトのサインが消えてもご着席中はベルトのご着用を.......
☆
18:20
(無事に着きそうでよかった)
着陸まで2時間をきり、トイレから戻ろうとした時だった。
「え?」
突然の周りが真っ白に光ったように何も見えなくなって、その場でしゃがみこんだ。
(何も見えない.....)
.....
徐々に周りが見えるようになってきた。
「.....い君、大丈夫かい?」
すぐ隣に座っていたロシア人のおじさんが話しかけていた。
私はすぐに立ち上がって、答えた。
「大丈夫です....ちょっと貧血みたいで。」
「薬いるかい?」
「いや、大丈夫です、ありがとうございます。」
私はそのまま自分の席に向かった。
(別にどこも痛くないし、クラクラもしないし...どうして....?)
席に戻り、目の前の小さなモニターに映っている番組を観て時間を過ごした。




