#3 賢狼
「帰り道わからないで帰ろうだなんてバカやなー」
「うっさい!!」
狼と並んで歩くなんて滅多にない経験だ。
振り返るとさっきいた大きな木が小さく見える。
「あんた何者?」
「さすらいの旅び」
「じゃなくて、本当は?」
「オオカミだ。」
「いや、そんなのみれば分かるって....」
「賢狼というべきか。
まぁ、種類を聞かれれば純粋なニホンオオカミやな。
名前はカイトじゃい。」
「へぇー....ってニホンオオカミ!?
絶滅種!?」
「へ?絶滅?何言ってるんだ?そんなわけあるか。
そもそもここに一匹いるじゃねえかい。」
「...いや、たぶんあなた以外はもういないということね。」
「....はは....そんなわけないだろ....」
カイトは青野の言葉を信じようとはしなかった。
「カイトさんはなんでここにいるの?ニホンオオカミがなんで?」
「ある奴にこの土地を守ることを頼まれてんだ!!
あ、普通にカイトって呼んでくれりゃいいぜ。」
「分かったわ。
じゃあ、あなたはどのくらいここにいたの?」
「まぁ、ざっと300年くれぇかな。」
「長っ!ってことは300歳超え!?」
「いや、俺みたいなやつの場合このくらいで18、9歳くらい....けど普通の動物は300年も生きれねえよな.....」
カイトはどこか寂しそうな口調でそう言った。
「なぁ....」
「何?」
「動物が人間の言葉を話していて驚かないのか?」
「うーん。動物が人間と話せるっていいことじゃない?」
「お前、意外とポジティブだな。」
「うん。消極的だけど...ね....」
「へぇー。そっか。そういえばお前の名前ってなんだよ。」
「そう言えば言ってなかったっけ....
私は青野 香恵。」
「へ?日本人!?気づかなかったぜ。」
「いや...そもそも日本語で会話してるじゃない....あ」
数十分ほど歩いてさっきまでいた森林が見えてきた。
「じゃあ、お別れね。」
「ああ。じゃあな。」
その森林に向かって歩いた。
ちょうど森林に入って数分して、後ろから別の足音が聞こえることに気がついた。
(...だ、だれ?)
さっき吹雪に合い、ここで何かあれば不安を抱いてしまうようになっていた。
振り向いた先の気から一匹の狼が現れた。
「え?カイ...ト...?」
「グルルルル」
その狼は獲物を狩る時のような鋭い目をして呻きながらこちらを見つめた。
(いや、ちがう。)
呻き声は徐々に大きくなっていく。
「グル"ル"ル"」
カイトと一緒にいた時とは違って、大きな迫力が感じる。
「っう!!」
怖さのあまり足がすくんで動けなかった。
(な....なんでさっきからこんなことばっかり....)
大きな声で叫べば近くの街まで聞こえて、誰か助けに来てくれるかもしれない。
けど、声も出せなかった。
(や...やばい。)
その狼はは一歩ずつ近づいてくる。
(だ....だれか...)
「た......」
一定の距離まで近づいた狼はこっちに飛びかかってきた。
「たすけて!!」
私は何とか声を挙げたが、助けが間に合う様なタイミングではなかった。
ドスッ。
「え?」
もう一匹の狼が、襲いかかってきた狼を横からぶつかって、弾いた。
ぶつかりにいった狼はそのまま、その狼に向かって威嚇し、それを見たもう一方は弱そうな悲鳴をあげてどこかへ逃げて行ってしまった。
「...カイト...さん」
「ひゅう。危なかったな。」
「けど、何で?」
「いやぁ、俺の好みすぎてな。忘れられねえんだわ。」
「へ?」
「なぁ。俺と付き合わないか!?」
突然の狼からの告白に少し引いてしまった。
「は?」
「だから俺と...」
「いきなり、なんで私と?」
「その胸....いや。
まぁ、俺好みの女だから。」
(え、今胸って聞こえたよね...?
それになんで狼なんかと。)
まぁ答えは決まっている。
「いやよ。」
(当たり前じゃない。たとえ助けてもらったって言っても、一応初対面だし....)
「どうして!?」
「そんな安易な理由でしかも自分勝手に決められても嫌に決まってるじゃない。」
「え!?」
「それにそもそもあんたは狼でしょ!!人間と付き合えるわけないでしょ!」
「愛は生き物の壁を越えるんじゃい!」
「無理なものは無理よ!!」
そう断言してもカイトは黙ったまま私の後ろをついてきた。
自分の家のある街の入り口についた。
「これ以上ついてくると狩人さんにやられよ?」
「わーったよ。」
(え?)
突然素直に受け入れたカイトに驚いた。
「じゃあまたな!!」
(あれ?)
「え?また!?」
狼のカイトは林の中へ消えて行った。
☆
家に帰ったらお父さんがソファでリラックスして本を読んでいた。
「お帰り、香恵〜。ん?なんか疲れてるな?」
「ただいま....うん、ちょっとね...」
「無理はするなよ〜。」
ヘナヘナの声であまり頼りない感じなのが私のお父さん。
「まぁ、暖かいココア入れておいてあるから飲んでおきなさい。」
けど、けっこう面倒見が良い。
「うん、ありがとう。」
「まぁ、ちょっと冷えちゃってるかもだけどな〜。」
けど頼りない....
机の上に置かれたココアの入ったマグカップに口をつけ、ココアを一口のんだ。
(うん、あったかいじゃん...)
「なぁ、ところでオーロラは見れたかい?」
「すごく綺麗なのが見れたよ。」
「良かったな。日本に帰る前にいいのがみれて。」
「うん」
☆
12月24日10:20
たった1週間という間だが、日本に帰る日がやってきた。




