#2 カイト
12月23日
1年ぶりにロシアに来て、父として同居は経った。
私は昔からの習慣で毎晩オーロラを見に近くの森林に入っていた
夜空を見上げながら、細い針葉樹が何本も立っている中をゆっくり歩いていった。
ブルブルッ!!
(....寒っ!!....)
1年もここを離れていたせいか、なかなかこの寒さに慣れるのは難しかった。
(今日は一段と寒い.....もう帰ってホットココアでも飲もう...)
たった数十分歩いただけで体温の限界が来たので帰ろうとした。
帰り道を歩いていると徐々に風が強くなり、雪量も増えてきた。
「嘘、吹雪!?」
(やばい!!急がなきゃ!!)
自分では走っているつもりだが風が強すぎてなかなか前に進めなかった。
それに視界も悪く、今自分がどこにいるかも分からなかった。
寒さに耐えられなくなってきて、徐々に意識が飛んで行くのが分かった。
(嫌....まだ白地くんに想いを伝えてない.....死にたく...ない...)
☆
(あれ....暖かい........)
目を開き、ぼやけた視界で真っ白な天井をみつめた.....
「やっと起きたか」
聞いたことのない声....
まだ体が凍ったみたいに固まってるせいか、体や首を動かすことも出来なかった。
「...だれ?」
「さすらいの旅人と言ったところかいな?カイトだ」
まだはっきりとしない意識の中でその名前を繰り返した。
「カイト...?」
「ああそうだ、ここは安全だからぐっすり寝ちょれ。」
「うん....」
もう一眠りついた。
☆
また目が覚め、今度は体も動かせるようになった。
「んん...」
体を起こし、伸びをした。
辺りを見ると氷の塊に囲まれているようで、かまくらの中にいる様だ。
そして自分のそばには焚き火のあと、自分の体を温めていた動物の毛皮。
「ん!?。獣くさい!!」
(この毛皮から?洗ってないの?....)
かまくらの小さな穴から顔を出して外を見た。
外は真っ暗で辺りにはほとんど何も無く、真っ白な地平線が広がっていた。
それから空を見上げ、真っ暗な空の中に虹色に光るカーテンが見えた。
「すごい.....」
今日まで何度も見たが、ここまで綺麗で壮大なオーロラは見たことなかった。
「けど誰が助けてくれたのかな?
....まさか死後の世界!?」
「んなわけあるかいな!」
「えっ!?」
私はかまくらから外へ出て、辺りを探したが特に誰もいなかった。
(気のせい?)
私はかまくらの中へもどろうとして振り返ると、かまくら上に犬に似た動物がいた。
「オオカミ!?」
「なんぞそんな驚いた顔しおって。」
「しゃ、喋った!?こ、これ以上近づくな!!」
「なんぞ、女がそんな喋り方しちゃいかんぜよ。」
(あんたに言われたくないよ...)
「分かった分かった。取り敢えず離れとけゃええんやな?」
「うん....」
(いつ襲ってくるか分からないもの...)
「で、なんか聞きたいことでもあるんだろう?」
「....何でこんな所にオオカミが?
ってか何で喋ってんの?しかも日本語で、しかもなんで中途半端な方言混じりで。それに私を助けたのはあんた?
それに...」
「まーった、まーった。いったんおちつこうやないか。」
そう言われ、聞きたいことを喉の奥で堪えた。
「さて、まず一個ずつやな。
おまんを助けたのは俺じゃい。」
「お...おまん?」
「お前のこっちゃ。
それで、ここはワイのテリトリー見たいなものじゃけん。」
「そのめちゃくちゃな方言で話しかけられても困るんだけど....」
「いやー、わりぃわりぃ、久しぶりに日本語を話すもんやからついな」
「うん。」
(まだ微妙に混じってるんだけど....)
「ここは俺が保有する土地、というより守るべき場所でなたまたま散歩してたらなんて可愛らしい胸の少女が倒れていたからつい連れてき....じゃなくて助けてやろうとしたんだぜ。」
一瞬ゾクっと来たが、多分私の聞き間違いだと思った。
(余り関わらないように早く帰ろう。)
「うん....助けてくれてありがとう。
じゃあ、帰る。」
「ああ。じゃあな」
(よし、早く帰ろう!!!)
「あ、おまえちょっ....」
呼び止める声を無視して歩き続けた。
ある程度前へ歩き、ふと気付いた。
「帰り道がわからないじゃん!!!」




