#6 原因
「夢渡くんをたぶらかすやつ....」
(そうか、今自分はカンナの身体なんだっけ。
よくわからんがとりあえず聞いてみるか。)
「どういうことだよ?」
「あんたがきてから夢渡くんの様子がおかしかった...」
(あれ、おかしくないか?)
カンナと青野が顔を合わせるのは少なくとも、高校に入ってからのはずだ。
(いや...出かけた時に見られたのか?)
「冬休み前に学校を休んだり、あんまり遊びに行かなくなったし....」
「何で俺がその時から知り合ってるって知ってるんだ?」
「匂い....あの日からずーっと違う女の子の匂いがするの。おかしいと思っていたの。
夢渡くんの家族の匂いでもなかった。
ねぇ....本当は夢渡くんの従姉妹じゃないんでしょ?」
「....」
下手な言い訳も考えられなくて、つい黙りこんでしまった。
「許さない。」
青野は自分が座っていたベンチを軽々と持ち上げた。
「ッ!?」
いきなりベンチを持ち上げた青野を見て驚いた。
そして、青野はそのベンチをこっちに投げつけてきた。
(な...何でいつもこういう時に限って体が動かないんだよ!!!)
自分に向かって飛んでくる自分への危機を目の前にして、再び目を瞑ってしまった。
☆
(何でいつも.....)
五大能力がなければ何もできない、弱い自分が憎い....悔しい....
自分に大きな危機が迫れば、目を瞑ってしまう自分が....
思いっきり瞑っていた目を開いた。
「え?」
目を開いた先は見たことのある教室だった。
先月入学して、カンナや昇たちと一緒に投稿している水屯高校F組の教室だ。
(どうして?)
「まさか!!」
目線の高さが高くなったし、体がさっきより軽い。
「やっぱり...」
自分の体に戻っていた。
(けど何で教室なんだ?)
....
数秒してカンナが学校に忘れ物をしてカとりに戻っていた事を思い出した。
「ってことは!!」
公園に向かって思いっきり走った。
公園について息を切らしながら当たりを見渡した。
木にの下で二つに割れたベンチ...
その向こうには、青野...
そしてその間に頭から血を流して倒れているカンナがいた。
その光景をみて、青野への怒りが込み上がってきた。
(許せない。)
「....あ....青野おぉおお!!」
「ゆ...夢渡くん?
ち、違うの。これは夢渡くんのためなの。」
そんなことを言っている青野に向かって、拳を思いっきり握りしめて一歩ずつ近づいていく。
「だ...だめ、これ以上こないで!!」
青野が落ちているゴルフボール弱の大きさの石をこちらに投げつけてきた。
椅子を持ち上げて投げつける事が出来るだけあって、その飛んできた石は時速140kmはあった。
しかし自分の目には青野しか見えなくて、石のことは気にせず歩み寄る。
その石は左肩に当たった。
それでも近づく夢渡に対し、青野が更に2個同じくらいの石を投げつけた。
一発目は右足をかすった。
二発目はお腹にど真ん中。
「ッウ!!
....あ....青野おおお....」
「!?」
「許さない....」
「....」
青野が後ろに生えている木を抱えて持ち上げたと同時に自分は怪我した足を引きずりながら、拳を振りかぶって、駆け出した。
「「うぉおおお!!」」
二人の雄叫びが重った。
「お......」
突然青野の力が抜けたようで、持ち上げた木を支えきれなくなり、潰されそうになった。
「うお!?」
とっさに握りしめていた拳を開き、青野を突き飛ばしそのまま流れて前に倒れた。
ドサッ。
大きな木が地面に落とされ、沢山の葉っぱが散った。
「ッウ.....はぁ....助かったか。」
青野は気絶した様子だ。
「あ、いた!」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「おーい。ゆめー無事かー?」
夕焼けの逆光で影しか見えないが、昇だということはわかった。
けど、昇以外に二人の影があった。
「ど...どうしてお前がここに?」
「あ、カンナちゃんが無防備な姿で寝てる....誘ってるな!!」
近寄ってくる昇は俺の質問を無視し、カンナの心配...いや。犯そうとしていた。
「じゃなくて。どうしてここにいるかって?心読術があるから。」
「は?」
昇が何を言っているか分からなかった。
「まぁ事情を話すとなると長いから、今はまず青野のことだ。」
そう昇が言った後に、後ろから近寄る影とともに女性の声が聞こえた。
「元の原因がお主、夢渡殿じゃがな。」
朝、電話で聞いた喋り方だった。
長髪金髪で、なぜか着物を着ている女性の姿があらわになった。
「ええっと....確か今朝電話で話した。」
確かめてみた。
しかし、彼女は本当に知らないかのような顔で答えた。
「なんの事じゃ?」
「あ、ほら。俺たちも入れ替わってたじゃん。」
「そういえばそうじゃったの。」
「って、おいおい。お前らも入れ替わってるってどういうことだよ。」
「そうじゃな、説明しようかの。」
「よし、ではまず香恵殿が五大能力者であることは分かるな?」
(香恵?...ああ...青野か)
「3年以上も同じクラスにいたのに苗字しか覚えられないなんて、酷い男じゃの。」
「っく!
ってか、勝手に人の心を読むなって。」
ついいつものことで、つっこんでしまった。
「すまなかったの。じゃがこれがワシが生まれた時からの能力、「心読術」での。」
「マジでそんな能力を持ってるやつ出てきた!?それに生まれた時からってことは、カンナと同じ....」
「ふむ、確かにそのようじゃの。
今、彼女は寝ていて心が読めんが、お主が考えてることだと、二つの能力を持っていて、一つはとても貴重な能力....
そこもわしと似ているようじゃの....
じゃが、ベースが違うの。
この子は元は人間...じゃがわしやこの変態狼はベースが人間じゃ。あと、猿娘もそうじゃの。」
「人間じゃないって.....」
「なぁ、ユキエ。話が逸れてるぞ。」
昇が話が脱線しそうになったのを修正してくれた。
「そうじゃった。五大能力の1人、入れ替えの能力を持っているのが香恵殿の能力ってことは分かったかの?」
「ああ。それが原因で俺とカンナが入れ替わった。」
「そう。あと、入れ替わっちゃったのはお前らだけじゃなくて、俺とユキエもなんだな。」
「どうせお前は喜んでたんだろ。」
「あれ?ばれちゃった?」
「お主ら二人とも考えが似たもの同士じゃの....」
ユキエは呆れた声で呟いた。
「しかし、悪いのは香恵殿ではないのじゃがな....」
「それってどういうこと?」
「カンナ殿と入れ替わって、香恵殿と会っていて気づかなかったかや?」
「いや....分からない。」
(まぁ、バカ認定済みだからな。)
「ゆめはバカだろ!!」
「お前は黙ってろ!!」
「いいかの?」
「ああ、いいよ。」
「ワシの予想じゃ、香恵殿は自分の能力に気づいてないということじゃ。」
「そう言えば、俺がカンナと入れ替えあっていることが分かっていなかったみたいだった。」
「じゃろ?そして、その力を使わせたのがこの変態狼なんじゃが.....」
ユキエは右手で引きずっていた、ベロンベロンに気絶したチャラ男をポイッて放り投げた。
(....さっきから気になってまさかこいつが黒幕だったとは....)
「うむ....ちょっと突っかかることがあるのじゃが、そうなるのかの。
まぁ、結局のところはお主らが香恵殿を追い詰めたのじゃがな。」
「え?」
最後の一言が自分ではあまり理解できなかった。
次回は月末かな




