日常から・・・
「おい!!何で俺らが超能力者に襲われてるんだよ!?」
突然であるが、俺••••いや、俺らは見知らぬ2人組から触れれば火傷してしまいそうな熱そうな火の玉や、エナメル性の丈夫なカバン+数百ページ分の紙の束を意図もたやすく穴を開けてしまう高圧水鉄砲に襲われていた。
「...あなたに恨みがあるんじゃないの?」
自分の自転車に二人乗りしている猫耳尻尾を生やした少女は冷静俺の質問に答えてくれたが、期待するものでは無かった。
「本当はお前••••何か知ってるんじゃないのか?」
「....知らないわ。」
「おい。」
ッパン!
そんな発砲音が後ろから響き渡り、それとともに夢渡たちの横を真っ赤な熱が通り過ぎた。
「うお!?あと少しずれていたら死んでたぞおい•••」
なんで俺がこんな目に遭わなくちゃいけないんだよ!!
そうだ、こいつと出会う前日まで遡るとしよう。
☆
某年12月24日19:25
突如世界各地で小さな白い光の粒が降り注いだ。
初めは雪だと思い、少し小学生みたいに喜んでいた自分がいた。
しかし、それは雪なんかではなかった。
「マヤの予言だ!!」とか「人類滅亡だ!!」とか騒ぎ出す人が出てきて、人々は不安の声をあげていたが、それが特に害が起きるわけでもないと知った途端、気にせずにいた。
いや、違う。
別の事が起きたせいだ。
それも想像しなかった様な現象がが起きたため、人々の興味はそちらに向かったからだ。
その現象とは、人々は超能力を手に入れた...いや、目覚めたというべきだろう。
その手の専門家が超能力ではなく人間の一種の能力に分類すると主張し、人々はそれを受け入れ能力と言うようになった。
そして、自分は関わってしまったのだ。
その、能力という未知のものに....
☆
12月24日18時頃
「ごはんもう食べた!?」
姉の声は2階への階段を響き抜け、焦りながらも本棚から教材を抜き出してはバックへ投げ込む少年の耳まで十分に届いた。
「食べたよ。」
「じゃあ、バイトあるからもう行くね。あ、塾サボるなよ。あんた受験生なんだから。」
「はいよ。」
両親がいない分、その役目を背負ってしまっている姉に少しばかり心配を覚えていた。
ちなみに簡単に自己紹介すれば、今急いで塾へ行く支度をしているこの話の主人公であろう少年の名前は<白地夢渡>。
絶賛彼女募集しているところ....だがあまり他人とは関わらないため中々できるわけもない。
ついでに自分の姉、<白地園花>。ある名門大学の法学部に通い、弁護士を目指している。
名門大学に入ってるからには頭が良いはずだ。
そして父は外国で単身赴任中。母は今頃世界のどこにいるはずらしいが、離婚疑惑が姉弟間で浮上している様だ。
(さて、そろそろ塾に行くか。)
支度を済ませた夢渡は丁寧に家のセキリティのスイッチをオンにして、玄関で靴を履き外へ出た。
「うおお。さみぃ〜」
外の寒気に身を震わせながらも家に鍵をかけ自分の自転車に乗り、既に暗い道の中へこぎ始めた。
自転車をこぎ始めて数分経ったころだった。
突然辺りが光に包まれたように、目の前が真っ白になり辺りが見えずにいた。
「ちょっ!?」
ガンッ!!!
とうとう、バランスを崩し電柱に衝突したようだ。
「いたた....」
「大丈夫?」
見えない視界から元気そうな女性の声が聞こえ、少し戸惑った。
「え?」
徐々に視界が復旧してきた。
大きな目はこちらを心配そうに見つめ、その女性は手を差し伸べてくれていた。
茶色く短い髪はクセがあり、少しばかり獣臭さがした。
(ん?こんな時期に薄着!?
寒さ知らずにも程があるだろ!
バカなのか!?)
「だから大丈夫?」
「ああ、大丈夫だよ。」
俺は彼女の手を借り立ち上がった。
(この子の手、暖かい。それに柔らかくて綺麗な肌だな....)
見た目からなら俺の好みかもしれない。
けど.....
「ありがとう。」
「それにしても君、無茶するねー。真っ正面から電柱にぶつかって行くなんて。君、スタントマンなの??」
「ま、まぁそんなとこかな」
(馬鹿だ・・・
それに対してカッコつけてる自分もバカだよな...)
「ええ!!すごーい!!今度他のも見せてよ!!」
「え、いいよ。。」
嘘をついている自分がいて恥ずかしくて、キラキラ光る彼女の目をまともに見れなかった。
「それじゃあ、もう行くね!」
「あ、ちょっと....」
「ん?」
(せっかくだし名前でも聞いておきたいな....ってか聞いてどうするんだよ!!)
一体何を考えているのか整理がつかず、1人で混乱していた。
「おーい!早くしろ!!置いてくぞ!!」
自分とは反対の方向から男が目の前の女性を呼ぶ声が聞こえた。
「はーい!!」
女の子は大きく返事をしてはもう一度こっちに振り向いて言った。
「んじゃ、英くん待たせちゃってるから!!じゃあねー」
「う、うん。じゃあね。」
(彼氏がいるのかよ。
それにしても足早いな。もう姿が見えない.....
ん?)
「ってあれ?雪?」
気づいたら、小さな粒がゆらりゆらりと真っ暗な空から無限に降り落ちてきた。
夢渡は空を見えあげて呟いた。
「ホワイトクリスマスかな...」
(さっきの女の子が彼女だったら、勉強頑張るのにな....)
そんなろくでもない言い訳を思いながも、思春期な男の子はしばらくこの静かな余韻に浸っていた。
「...」
そして自分の目的を思いだし、倒れた自転車を起こし、とめどなく降り注ぐ白い粒中を漕ぎ始めた。