#5 Date
17:05
ユキエは俺よりちょっと前に歩き、振り向いて言った。
「おお、ここが人間らが楽しむ聖地かや!?」
無邪気な笑顔が可愛らしく見える。
「ただの駅前の商店街何だが…」
「いや、聖地じゃ!こんなにも食べるものはあるではないか!?」
(やっぱ目立つな~)
すれ違う人みんな着物をきたユキエに目をとられてしまう。
特に男性に....
「そうだな...ところで手を離しても大丈夫なのか?」
「なにがじゃ?」
「狐の一部が。」
「ああ、大丈夫じゃ。数分間ぐらい継続する力があるようじゃ。」
「力って?」
「だから秘密じゃといったじゃろ。」
「ッチ」
「ではいくぞよ!」
再び片手を引っ張られいろんな所を廻った。
☆
18;23
「お前まだ食うのかよ!」
「後1つだけじゃ。」
「俺の財布が軽くなったじゃん...」
「よいではいか、余計な荷物が減って。」
「代わりにお前の体重が増えたんじゃねえの」
「そうじゃのう。」
「何?女の癖に気にしないのか?」
「当たり前じゃ、食べ物を食べられるということは、幸福であり。その食べたという証が体重となるわけじゃ。
だから、そんなこと気にしないのじゃよ。」
(こいつ、普通の人間でこんな生活してたらデブになってるぞ....)
「.....まだ食うのか?」
「当たり前じゃ。」
「....」
「そうじゃ、クレープという物を食べてみたいのじゃ!!」
「....」
「可愛い女の子とデート出来て嬉しくないのかや?」
「自分のこと可愛いって言ってる…え?
いまデートって?」
(これは冗談じゃなく、カップルでデートしていると認めているってことか?)
「そうじゃよ」
「まじか!?」
(よっしゃー!父ちゃん!俺も今夜童貞卒業します!!)
「ワシの処女を奪えるなんて光栄なことはないぞ。」
「しかも処女だーーーー!!
あ....」
周りからの視線がやばい…
「....お前、からかってるだろ。」
「当たり前じゃ。」
くそー。笑顔がムカついてきたぜ...
「暗くなってきおったし次で最後じゃから!!」
「わかったわかった…クレープな。」
「そうじゃ。」
「そしたらお前の処女を貰えるわけだな!!」
「まだ引きずっておるのか!?」
「こんなんでくじけるような奴じゃないからな!
襲ってでもお前の処女を奪ってやるー!!!
....ってちょっとそこのおばさん!冗談だから!警察通報とかやめて!!
いや、まじ冗談だから!!」
☆
18:45
危なかった…
警察沙汰になれば受験どころじゃないからな....
あれ、この台詞誰か言わなかったか?
「そんなこと気にせんでよい!」
「あ、ああ。誤解も解けたし。
で、クレープだっけ?」
「そうじゃそうじゃ。」
「さっさと行って帰ろう。」
「すぐに帰れるかは分からんがの....」
「なんか言ったか?」
「いや、なんでもない。」
ユキエはちらっと後ろを見てまた俺の手を引っ張った。
☆
19:05
「最後だからってこんなに買わなくてもいいだろ...」
ユキエの両手にはバナナのたくさん入ったバナナスペシャルクレープが3つ、寒い時期にもかかわらずアイスの入ったチョコサンデークレープが1つある。
こいつは寒さは感じないからアイスを食っても平気なんだろう。
「これぐらいなくては足りぬからのう」
そう言って。1つしかないチョコサンデークレープをすぐに平らげてしまった。
「お前そんなに食いしん坊だったのか!?」
「ほんなほとないほ」
「食べ終わってからしゃべって。」
「ゴク。そんなことないぞ」
「嘘つけ。ってバナナを残すな!」
(わざわざバナナの多いバナナスペシャルクレープを買ったのに)
「ワシは好きなものは残して最後に食べる派じゃ。」
「じゃあわざわざ高いクレープじゃなくて、普通にバナナだけで良かったんじゃ…?」
「じゃから、クレープを食ってみたいといっじゃろう。」
「なら一緒に食えよ...」
「それじゃあダメなのじゃよ。」
バナナのみ食べ終わったチョコサンデークレープの紙の容器にまとめていれ、すべてのバナナの無いバナナスペシャルを平らげた。
「これで足りるかのう。」
「十分食ったろ!!受験後に遊ぶために貯めてた金を使いきっちゃったじゃん!」
「そうじゃない....」
ユキエはこっちに振り向いたあと、辺りをを見渡し、空を見上げた。
俺もつられて辺りを見渡した。
「ん?ここどこだ?」
ユキエと話をしていたせいか、気にせず彼女についていったので、自分でも分からない所についってしまった。
もう辺りは暗く、隣にある真っ暗な空き地から何か出てきそうで怖い。
「おい…もどろうぜ。」
「ちょこまかついてきおって、そろそろ出てきても良いのではないか!?」
突然叫び出したので驚いた。
「え?なに?誰かいるの?」
辺りはを見渡したがやはり誰もいない。
強い風が吹き、空き地の大きな木を大きく靡く。
「ははははは~。ばれちゃってた~?」
ガサッ
大きな木の上から人影が出てきて、近くに着地した。
(暗くてよく見えないが、分かる。
女だ。
胸はユキエに負けないくらい大きく....ゴホンゴホン。
あれ、ワンピース?寒くねえのか?)
「当たり前じゃ!ワシには心読があるのを忘れたのか?」
「そうだったn」
最後まで言い終わらないうちにユキエはすごい速さで前に進み、彼女の両腕を掴み、裏側に回り抑えた。
しかし彼女は痛そうな顔をせず、笑顔で口を動かした。
「本当にすごいね~。私の<軽業>に負けてないんだもんね。」
「宇宙を制する神をなめてはこまる。」
「いつの間に昇格したんだよ!ただの霧狐山の守り神だろ!!」
(やっぱり俺にツッコミは似合わないな。)
「じゃな。」
「だねー。」
「何で初見のやつに心読まれなくちゃならないんだよ。 」
「さぁね♪
じゃあ、そろそろ本題といこうかな~。」
彼女体が軟体動物になったようにユキエの束縛から脱出し、高く飛び塀の上に腰に手をあて、こっちを見下ろした。
月光が、彼女の白いワンピースに輝きを与える。
(おおお!あのヒモが垂れ下がり、胸が見えそうで見えない。あのファッションは興奮しちゃうな!!)
「バカな事を考えてる余裕はないぞ。破廉恥男。」
「新たなあだ名が命名されました~。」
「ははは~。面白いね~。じゃあいいこと教えてあげる!僕ノーパンだよ。」
首をかしげ、中を見ようとした....
純白のパンツが見えた。
「ば~か♪僕は君みたいにバカじゃないよ!!」
「人に下着を見せるなんて、バカのすることじゃないの?」
「あ。
って英くんまで何してるの!?」
隣を見たら髪を後ろに倒した黒髪のスーツを着た男が俺と同じ体制をしていた。
いかにもエージェントって感じで、色男だ...
「うおお!」
「おおっと。いつの間に。」
「いや、それは俺の台詞だから!」
「たまにはこういうキャラもいいのかもと思ってな。」
「始めて会うから分からんよ!」
「英くんったらエッチ~」
「こんな変態野郎と一緒にするな。」
(なんだこいつら… このままではこいつらにペースを持ってかれてしまう....)
「ならば!」
「キャ。何をするのじゃ!!」
「よしゃ!!やっと揉むことができたーーー!!」
「この変態!」
「痛い痛い!」
俺も腕を後ろに持ってかれて、さらにユキエのが膝を持ち上げ、背中を反らさせ、骨が曲がってはいけない方向に曲がり始めた。
「こんなことしている場合ではない
。」
すぐに束縛をほどいてくれた。
「イテテテ....あれ?心を読めるお前だったら、こんなことさせないだろ?」
「それができぬのじゃ...」
「これがあるからね。」
色男がポケットから黒い石を出し、こっちにむけた。
「なんだよそれ?」
「これは俺が作った心を読むのを妨害できる石だ。」
「すげえ!そんなもん作れるのか!」
「そうだよ。英くんは作る天才だからね!!」
「心を読まれるのはいい気分ではないからな。」
「そうだよな!あんなことやこんなことしようにも、心を読まれたら何も出来ないもんな!」
「俺はそんなの興味無い。」
「なんだと!男はみんな変態という名のもとで生きてるんだろ!?」
「お主...また世界の男に謝らなくてはならぬぞ...」
「すみません!」
「英くんはこんなこと言ってるけど、本当にはムッツリだよ!」
「ミヤビはだまってろ」
「はははー照れてる英くん可愛い~。」
「....そろそろ話をすすめたいのじゃが...」
「あ、そうだね。僕から本題に入るって言っておいて進まないね~」
「お前がバカなこと言ってるからだろ。」
「英くん!バカって言う方がバカなんだぞ!」
「.....」
「そうだな。」
「スルーするな~!」
「で狐女。話がある。」
「一昨日襲われたのはワシじゃ、だからワシが先に聞く。」
「まぁいいだろう。」
「ワシの髪飾りはどうした?」
(え、髪飾り?なくしたんじゃないのか?)
「大丈夫だ。ちゃんとここにある。」
「なら、ワシが怒りに満ちる前に返せ。」
「ただで返す訳にはいかないよー。」
「戯けが!勝手に盗んでおいて何を言うか。」
「ちょっと待て。どういうことだ?」
「こういうことだ。」
色男は先程の黒い玉のように、手に黄金色の鈴がついたピンクの可愛らしい髪飾りを持ってこちらに向けた。
「何?なくしたんじゃなくて、盗まれてたの!?」
「そうじゃ、一昨日の夜に奇襲を受けてな、まぁ当然人間の姿になれないのじゃから、勝ち目がなくての。。」
「結局逃がしちゃったけど、なんとかこれは手に入れたんだよね~。」
「おいおいおい…話違うじゃねえか!」
「本当のことを言ってしまえば、お主が変に警戒してしまって、バレちゃうではないか。」
「なるほど!けどさ…」
(騙されるのはいい気分じゃないな...)
「お主との約束は守るぞ。」
「まじか!?よっしゃー!じゃあ、このあとラブフォ。」
鳩尾エルボー…
「戯け。で、さっさそれを返すのじゃ。」
「イタイイタイ...」
「無理だね~」
「お主ら....!!」
ユキエはひとっ跳びで塀に登り、そのままミヤビと言う女の子を押し倒し、道路側に叩き落とし腕と足を押さえつけた。
「破廉恥!」
「....え?俺?」
「お主以外いないじゃろ。」
「そうだった。。」
「ワシはこの女を押さえてるから、その男から奪い取るのじゃ。」
「え?」
「いいから早く!!」
「わ、わかった。」
男がいる方向に振り向いたが、そこにはいなかった....
「あれ?」
「気を付けるのじゃ!」
「おう....え?」
「動くと死ぬぞ。」
背後をとられ、首にナイフを突き付けられた。
「ちょちょちょ、ちょっと待て。
早まるな!おれはまだ死にたくない!
童貞付きで死にたくないよ!!ユキエとやってからじゃないと死んでも死にきれないって!!」
「こんなときにバカな事を言ってる場合じゃないじゃろ !」
「大丈夫だ、殺す気はない。」
「ふう」
「けど条件がある。」
「なんじゃ.....」
(ユキエが俺を心配してくれてる!?そんなに俺とヤりたいのか!?)
「殺しちゃってよいぞ。」
「おいおいおいおい!!」
「お主の考えてることが顔に出ておる。」
「ふざけるな。話を聞け!」
「「はい。」」
(お前らに言われたくないぞ。カップルでイチャイチャしやがって。)
「全くじゃ。」




