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猫と能力と夢映し  作者: れぇいぐ
『狐と変態と髪飾り』
13/75

狐との一夜 ☆

12月25日19:25


「で、見つけるとは言ってもどうやって探すんだ?」

「匂いじゃ」


予想外の答えが返って頭が混乱した。


「...匂い?」

「そうじゃ」

「狐って町全体を嗅ぎわけるほどの凄い嗅覚を持っているものなのか?」

「守り神の特技のひとつじゃ。」

「おまえ…無理に設定作ってないか?」


ちょっと焦った様子を見せながらも否定した。


「そ、そんなことないぞ、町全体を嗅ぎわけるのはできぬが、500メートル離れた場所からでも稲荷寿司の位置を見つけることはできる。 」

「稲荷寿司だけか?」

「油揚げも探せるぞ。」

「使えないじゃん!!」

「ご飯を探すときに使えるぞ。」


(ダメだこりゃ。)


「嘘じゃよ。半径500メートルぐらいなら大丈夫じゃ。」

「500メートルかぁ。それにしてもさっきから冗談多く無いか?」

「お主には言われたく無いが、

実は誰かと話すのは随分と久しぶりじゃから、つい楽しんでしまったようじゃ。

昨日お主以外で散歩に来た男の前に現れたのじゃが、ワシを見ては驚いて逃げてしまったのじゃよ。」

「どうせ裸だったんだろう!?」

「…」


どうやら図星のようだ


「自分で気づかなかったのか?」

「その男は黙って逃げてしまったので、気が付かなかったのじゃ…」


(そうか、俺もなにも言わず、かつ逃げなければ裸を堪能できたのか、タイムマシン開発されないかな…)


「お主の考えは丸聞こえじゃぞ。」

「今更聞かれても気にならない!!」

「そうか。」

「まぁ今日は遅いし、明日探すとしますか。」


そう言うと彼女は突然消えてしまい、その数秒後に地面に残された着物から小型犬位の大きさの狐が出てきた。


「ではお主の家にいくぞ。あ、あとその着物も大事に運んでくれ」


(おお、小さくて可愛らしいな。)


「そう褒めるでは無いぞ。」

「はは。ってなんで俺んちにくるんだよ!?」


とかいいつつ、ユキエの着物を拾ってもと来た道を戻り始めていた。

その後ろをテクテク狐がついてきていた。


「そうすれば明日朝早くから探しに行けるじゃろ。」

「なるほど…けど、本当にお前がいなくなったら霧狐山は大丈夫なのか?他の動物が反乱をおこしたり…」

「心配ないぞ、この山でワシに逆らおうとするものは全て片付けておる。」


(おいおい…)


「け、けど外部からは?」

「熊のゴロウがとっちめてくれるのじゃ。」

「この山、熊いるの!?」


二度とこの山には訪れないようにしようか迷った。


「ん?けど熊ってこの時期冬眠しているはずじゃ....」

「昨晩叩き起こして、しばらくの間この山を守るように命じた。」


(権力ありすぎじゃね?)


そんな会話をしながら歩いていたら、あっという間に霧を抜けて、もとの道に戻り自転車を置いたところまで もどってきた。

俺はまず、この狐が着ていた着物を(かご)のに置き、尋ねた。


「えーっと。(かご)に入るよな?」


籠の中に乗るなら持ち上げなくてはいけなさそうなので、聞いてみた。


「あ、人間になって後ろの荷台に乗って、俺の背中に柔らかいもの擦り付けてもいいんだぜ」

「何を言っておる?寒いからお主の胸元にいれてもらうぞよ。」


「え、胸元にってあれか。

ボールに入ってくれないモンスター従えるトレーナーが、雨の時とかに服で覆い隠すみたいな感じの?」

「そんな感じじゃな。」

「じゃあ、お前が人間になったらオレの懐に飛び込ませてやってもいいぜ。」

「戯け。」


そう言って、狐は自転車のサドルに股がった俺のコートの胸にぴょいと飛び込んだ。


「やっぱり温かいの~」

「くすぐったいからあんまり動くなよ。」

「分かっとる。」


(やっぱり夜の風は冷たいな…

けど、コートの胸元に入る風をこいつが遮ってくれるから役に立ってるな....)


「ワシを防寒具の1つのように言うでないぞ」

「勝手に人の心読みすぎじゃね?」

「ぬ......ワシだって好きで聞いてるわけでないぞ」

「ちょ!くすぐったいから勝手に動くと危ないって…」

「悪いの」


少し静かな雰囲気になったところで再び質問をしはじめた。


「気になることがあるんだがいいか?」

「いいぞ。

なぜワシが裸でいたとき平気だったかって?」

「せめて口で言わせてくれないか!?

それに、その言い方だとお前が「私は露出狂です」っていってるようなもんだぞ。」

「余計な事を言うでない!」

「イテッ!!」


爪が軽く鳩尾(みぞおち)辺りに刺さった


(これって照れ隠しか??)


「照れてやったのではなく、ムカついたからやったのじゃ。

で、なぜワシが裸でも寒さに耐えられたかって?」

「そうそう」

「知らぬ」

「え?」

「生まれつき寒さとか感じないらしいのじゃ、他の狐と違ってこの時期にも活発に活動することが出来ておるし。」

「じゃあなんでわざわざ俺の懐に入ったんだよ。」

「温もりを感じてみたかったのじゃ。」

「だったら人間になったら、毎晩温もりを与えてやるよ?」


冗談のつもりで言ってみた。


「それでは、今宵から子孫作りでもするかの?」

「え?いやいや、俺はまだ責任なんてとれる年じゃないからさ…」


(やべ、冗談で言ったのに…っておい、お前聞こえてるんだろ!?)


「聞こえておる。」


(遊ばれた…)


「仕返しじゃよ。面白いやつじゃの。」

「はいはい。よし、一気に飛ばすぞ。 」

「うむ」


坂道を下ると同時にペダルを勢いよくこぎ始めた。

下り終えたところにまた上り坂を上らなくてはならないから、楽に上りきるため今のうちに勢いをつけなくてはならない。


坂を上り終えて、ちょっとしたら家の前に着いた。


「はぁ…はぁ…はぁ……」

「お疲れさまじゃ。」

「そろそろ…家に…着く…」

「お主の親に見つかるまずいかや?」

「…ふぅ…。」


まず息を整えることにした。


「ああ、帰ってくるの遅くなったし母さんも仕事から帰ってきてると思うからちょっとまずいかな。猫や犬をつれてくるのは大丈夫だと思うが、流石に狐は例外すぎる。」

「だから人間になれと?」

「そうそう」

「下心丸見えなの知っておるか?」

「知ってる。」

「…」

「分かったよ。一度家に入ってバック持ってくるから、ちょっと待ってろ。」

「うむ」


親にできるだけばれないように部屋からバックを持って外に出る。以外と緊張してワクワクするな。

玄関に入ったところであることに気づいた…



20:07


「早かったのう。荷物入れはどうした?」

「…うちの母親今日は帰ってこないって」

「なんじゃ、時間の無駄じゃったでは無いか。

まぁ、都合がよくてよかったの。」

「そうだな。」


さっきまでの緊張感を返して欲しかった....


「では邪魔させてもらうぞ。」

「いらっしゃい。」


狐が自分の家に入ってくるなんて想像もしなかっただろう。

狐が玄関の靴置き場からの段差をのぼろうととしたときあることに気づいた。


「お前の足きれいか?」


狐は段差をのぼろうとする足を止めて、返事をした。


「なんじゃいきなり。」

「動物って靴はかないじゃん、だからさ足の裏とかって汚いじゃん?」

「そうじゃの。けどお主よ。」

「ん?ワシを懐にいれたと言うことは…?」


あ、急いで胸元を見て汚れていたことに気づく…


「おい!汚れちゃったじゃん!!」

「早く気づくべきじゃったの。」

「あああ!言ってくれよ!」

「そしたら入れてくれぬではないか。」

「そうだったな!!」

「最近お湯に浸かっておらんじゃったし、お風呂を借りるとするかの。」

「わかった!!貸してやるから、何処にも触るなよ。風呂場まで連れていってやるから。」


狐のお腹を包むように両手で持ち上げて、風呂場まで持っていく。


「優しくしなされ」

「はいはい。」


風呂場の中に置いて外に出て、ドア越しから一声かけた。


「一人ででも大丈夫か?」

「大丈夫じゃ、この姿でもシャワーを浴びたりはできる。」

「じゃあごゆっくり~」

「おい。」

「何だよ?」

「覗いたりしようとか考えたりせんのか??」

「しねえよ。こんな変態でも、俺は相手の嫌がることをするのは気持ちよく無いからな。」

「以外と紳士なやつなのじゃな。」

「それに可愛くもない狐に欲情するわけ無いって。」

「狐への挑戦状と言うことでいいのか?」

「違う。」

「じゃあ、お主は狐にも欲情する変態と言うことじゃな。」

「そうなるな。

じゃあ、ずっと待つのもあれだから、ユキエがユキエが汚した床をそうじしてくるよ。」


そう言って洗面所から立ち去った。


「つまらんやつじゃ...」


玄関入り口の廊下にある狐の足跡を見て一息ついた。


「ふぅ...さて、雑巾が必要だな。」


(ん?まてよ、動物ってほぼ全身毛で覆われているよな....)


するとあることに気づき、急いで風呂場に向かってドアを開けた。


「おい。

狐の姿じゃ毛がつまるか..ら..」


ドアを開けた先には狐の姿ではなく、山で見た裸の少女の姿があった。


挿絵(By みてみん)


「ば、ばばばば馬鹿者!!」


彼女は手に持っていた石鹸を顔面に投げつけてきたが、俺はこれを華麗に避ける。


「グハッ!」


自分が綺麗なマトリックスを決めている隙に、彼女は前進し俺の股間にキックを決められたようだ。

それに相当な威力で。

だって、今俺壁にくっついてるもん…


ガチャン


ドアを閉められ、鍵をかけられた。


(クソ、せっかくの裸を...)


「先程まで、悪気がなかったのは分かるが、守り神であるワシがお風呂を借させてもらっている家を自らの毛で詰まらせるほど、無神経ではないぞ。」


しかし、そんあユキエのセリフは全く頭に入ってこなかった。


「うおおおお!イテェェェ!俺の玉が落ちるうう!落ちるってぇぇ!イテェェェ!」


(マジで痛すぎる…股間ジャストミート...)


「すまぬ、やり過ぎた。これで子供を生めなくなっても、ワシの恥ずかしいところを見てしまったのじゃからしょうがないのじゃ。」

「あそこの元気がなくなったら裸を見ても欲情出来なくなるじゃねえか!!」

「ドンマイじゃ。

さて、....そこをどいてくれるかの?のんびり湯に浸かれぬではないか。」

「あ、ああ。じゃ。」

「うむ。」



22:28


その夜は出前で食事を済ませ、いつものベットは彼女に譲り、俺はその隣り下に布団を敷いて寝ることにした。

電気を消した部屋は、二つの窓から差し掛かる月の明かりしか見えない。


「ありがとうの。」

「え?何が?」

「髪飾り探しに協力してくれることじゃよ。」

「あ、ああ、はいはい。では、そろそろお前を襲ってもいいか?」

「戯けが。」

「冗談だよ。ハハハハ…

じゃあお休み。ユキエ…」

「うむ、お休み。」


その後の数分の沈黙の後に問いかけてみた。


「まだ起きてるか?」

「うむ?なんじゃ?」

「1つ気になることがあるんだが、何で人間の姿のまま何だよ?」

「こっちの方がベットを占領できるからの。」

「...」

「それにしても今日は外が騒がしいの。」

「そうか?」


まぁ、確かに何処からか銃声のような音が....


(銃なんてあり得ないよな。きっと誰か能力(スキル)を試してるんだろうな。)


「まぁ近所では無いからな大丈夫じゃろう」

「ならいいや。

じゃ、今度こそ…」

「お休みじゃ」

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