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時間列車

作者: 空言



駅のホームに 空色の男がいた

まるで ヒトガタに切り取った空がそこにあるように じっとそこにたたずんで列車を待っていた


何分 何時間 何日間

または何年かもわからない

時折風が吹き抜けるたび 男は空を見上げた


しばらく待つうちに 最初の列車がやってきた

「この列車はどこへ行くのか」

空色の男は車掌にたずねた

すると車掌はこう答えた

「この列車は未来へ行きます

私たちは未来に向かって生きています

未来から逃げることはできません

だからこの先の未来を確認しに行くのです」

男はゆっくりと首をふり 列車から一歩離れた

車掌が乗り込むと 列車は静かに動き出し ゆっくりと遠ざかって行った



空色の男はそのまま列車を待ち続けた

何分 何時間 何日間

または何年かもわからない

時折風が吹き抜けるたび 男は足元を見下ろした


しばらく待つうちに 次の列車がやってきた

「この列車はどこへ行くのか」

空色の男は車掌にたずねた

すると車掌はこう答えた

「この列車は過去へ行きます

私たちは過去を背負って生きています

過去を消し去ることはできません

だから過った過去を正しに行くのです」

男はゆっくりと首を振り 列車から一歩離れた

車掌が乗り込むと列車は静かに動き出し ゆっくりと遠ざかって行った



空色の男はひたすら列車を待ち続けた

何分 何時間 何日間

または何年かもわからない

時折風が吹き抜けたが 男はただ遠くを見ていた


しばらく待つうちに また列車がやってきた

「この列車はどこへ行くのか」

空色の男は車掌にたずねた

すると車掌はこう答えた

「この列車は 現在(イマ)ではないところへ行きます

私たちは現在の中で生きています

現在から抜け出すことはできません

だから現在の外を探しに行くのです」

男は深くうなづいて ゆっくりと列車に乗り込んだ

車掌が乗り込むと列車は静かに動き出し ゆっくりと遠ざかって行った



空色の男を乗せて どこまでも どこまでも 走って行った




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