低プライオリティな脆弱性、あるいは「嫌がらせ」の魔術師
王宮を後にし、魔王の帰還を待つための「時間調整(レベル上げ)」として森を移動していた一行。突如、目の前に奇抜なマントを羽織った男が立ちふさがりました。
其の一:未確認の「弱小バグ」との接触
「ヒッヒッヒ! 我こそは森の支配者、魔術師ダッパ! 貴様らの旅路を、全損レベルの不快感で満たしてやろう!」
「(……いけない。この個体、魔力出力が著しく低速です。しかし、無視は業務上の『未処理タスク』を残すことになります。目下、全力で排除いたします)」
田所が聖包丁(包丁型・聖剣)を構えるよりも早く、ダッパが奇怪な呪文を唱えました。
其の二:実装される「不毛なバグ(魔法)」
「喰らえ! 暗黒魔道**『ニーオウ』**!!」
ダッパが杖を振ると、田所の**「右の耳たぶの先端3ミリ」という極めて限定的なエリアから、「生乾きの雑巾」**のような強烈な異臭が物理的に発生しました。
「…………。……いけない。右側耳介下部、先端3ミリの座標において、衛生パラメータが2400%の減衰。異臭データがこの一点にのみ、異常な密度でコンパイル(凝縮)されています。非常に不快、かつ非効率な嫌がらせです」
田所は無表情のまま「精密ピンセット」で自分の耳たぶを摘まみ、鼻先に持ってきてクンクンと確認。
「……全損です。この耳たぶの先、目下、全力で臭いです」
「いや、確認しなくていいから! なんでそんなピンポイントで被弾して冷静なのよ!」
其 三:連鎖する「嫌がらせパッチ」
次にダッパはサレナに狙いを定めました。
「次はこれだ! 『アオノーリ』!!」
「ひっ!? ……え、何これ、前歯に違和感が……」
サレナが手鏡を見ると、彼女の美しい前歯の中央に、最高級の青のりが「物理的に除去不能」な状態で登記(固着)されていました。
「嫌ぁぁぁ! 笑顔を見せるたびに『お好み焼き食べた?』って思われるじゃない! 戦意ロストよ!」
さらに、怒り狂ったメリルが詰め寄ろうとすると、足元に呪文が放たれました。
「これでも防げるかな! 『グンーテ』!!」
「……は? 痛くも……あ。何これ、道に軍手が落ちてる」
メリルが一歩歩くごとに、足元に**「使い古された片方だけの軍手」**がポツンとドロップされます。一歩ごとに軍手が増え、森の景観という名の「ビジュアルデータ」が汚染されていきます。
其 四:弟子入りという名の「システム統合」
「うるさぁぁぁい! こんな地味な嫌がらせ、爆破して消去してやるわ! エクスプロージョン!!」
メリルの短気が全損し、ダッパの目の前で巨大な火柱が上がりました。ダッパはその圧倒的なデリート能力を目の当たりにし、恐怖を通り越して感銘を登記してしまいました。
「……し、師匠ぉぉぉ!! その『物理的に全てを解決する』演算能力……惚れました! どうか、このダッパを弟子にしてください!」
「(……いけない。メリルさん、待ってください。この個体、戦闘力は全損していますが、ニーオウ(耳たぶ異臭)やグンーテ(軍手投棄)といった**『不快感に特化したデバフ』**は、敵のメンタルを削ぐ嫌がらせとして利用価値があります)」
田所はダッパの胸ぐらを掴むと、首から「臨時インターン(試用期間中)」と書かれたネームプレートをホールド(吊り下げ)しました。
「ダッパさん。あなたの奇怪な魔術を、本プロジェクトの**『嫌がらせ担当・サブプロセス』**として仮登記いたします。とりあえず、サレナさんの歯の青のりをデリートする方法を検討してください」
「はいっ! 誠実な嫌がらせ、頑張ります!」
「勝手にパーティーの不純物を増やさないでよ!!」
今回のリザルト:森の景観および一行の清潔感の全損
結局、軍手を撒き散らし、耳たぶから異臭を放つ勇者を擁する、世界で最も「清潔感のない一行」が誕生しました。
• 新規加入: 魔術師ダッパ(ジョブ:不快感のデプロイ)
• サレナの状態: 前歯の青のりが取れず、不自然な裏声で喋り中。
• 田所の状態: 耳たぶの先端に「消臭パッチ」を貼り付け、臭いをホールド中。
「ダッパさん、軍手のドロップ間隔がバラバラです。一定のピッチで投棄することを推奨します」
「ハイ! 管理職殿!!」




