第40話 “告白未満の関係”が一番危ないって、本当にそうだと思った件
翌朝。
昨日の夜のことが頭から離れず、布団の中で何度も寝返りを打っていたら、
LINEの通知音が鳴った。
しおり:
『晴、起きてる?』
それだけで心臓が跳ねる。
俺:
『起きてる』
すぐ返したら、ほぼ同時に既読がついて、またメッセージが飛んできた。
『今日、会える?』
『……昨日の続き、したい』
文字だけなのに鼓動が跳ねすぎてうるさい。
『行く』
とだけ返したら、
『……すぐ来て』
と返ってきた。
あまりにもストレートすぎて、逆に冷静さを失う。
しおりの家の近くの公園。
昼間なのに、人気のない場所を選んだのは、しおりらしい。
ベンチに座って待っていると、
フードをかぶったしおりが小走りでやってきた。
「……晴」
「お、おう」
昼間なのに、昨日の夜の記憶がフラッシュバックして、直視できない。
「そんなに固くならないでよ」
と笑いながら、しおりは隣に座る。
距離は近い。いや、めちゃ近い。
「昨日の……続き、って言ってたけど」
「うん」
「何を……続けるんだ?」
聞いた瞬間、自分で自分を殴りたいくらいのアホ質問だった。
しおりは少しだけ顔を赤くして、袖をまたそっとつまむ。
「……気持ちの確認」
「きも……」
「昨日、晴は言いかけたよね。私のこと、どう思ってるか」
「それは……」
「聞いたら止まらないって言ったの、私の方なのに」
しおりは少し照れ笑いし、膝の上で手をぎゅっと握りしめる。
「ねえ晴。ちゃんと言葉で聞きたい」
「聞いたら……」
「うん、分かってる。分かってるけど……聞きたいの」
逃げられない。
いや、逃げる気もない。
俺はゆっくり息を吸って、しおりの手に自分の手を重ねた。
「しおりのことが、好きだ」
そう言った瞬間、
しおりの肩がピクリと震えて、顔をゆっくり上げる。
「……もう一回言って」
「好きだ。しおりが、好き」
しおりの目が潤んで、笑うのか泣くのか分からない表情になる。
そして――。
「……私も、晴が好きだよ」
世界が一瞬止まった。
次の瞬間、しおりは小さく息を吸い、
俺の肩にそっと頭を預けてきた。
「……やっと言えた」
「俺も」
「ねえ晴」
「ん?」
「今日から、恋人でいいよね?」
「……もちろんだろ」
そう言った瞬間、
しおりはフードを少し上げて、ほんのり赤い耳を見せた。
「じゃあ……手、ちゃんと繋ご?」
差し出してきた手は、少し震えていて、でも温かかった。
俺たちは指を絡めて、ぎゅっと握り合う。
「これから、いっぱい迷惑かけると思うけど……嫌いにならないでね?」
「なるわけない」
「……ふふ、晴ならそう言うと思った」
しおりはベンチにもたれて目を閉じ、
幸せそうに小さくつぶやいた。
「……晴が隣にいるって、こんなに安心するんだ」
その言葉が、胸に直接落ちてくる。
俺も同じだ。
しばらく二人で座っていた。
昼下がりの公園は静かで、風の音しか聞こえない。
だけどその静けさが、
“二人だけの世界”みたいで心地よかった。
しおりは最後に、俺の手を握ったまま言った。
「晴。これからいっぱいデートしよ」
「うん」
「……キスも、したい」
死ぬほど心臓が跳ねた。
「……そのときは、ちゃんと覚悟しててね?」
「な、なんの……」
「ふふ、秘密」
からかうように笑って、しおりは立ち上がり、
俺の手を引いて歩き出した。
今日から、ほんとに恋人になったんだ。




