87.誰が為(たがため)の金属バット
片隅に、先日の「金属バット殴打事件』の情報が表示されている。
========= この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
南部[江角]総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。
南部寅次郎・・・総子の夫。南部興信所所長。
大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。
足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。
河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。走るのが速い。
北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。
小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。
中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。
海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。
来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7の総長。EITOエンジェルス班長。
愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。EITOエンジェルスの後方支援担当になった(EITOガーディアンズ)。
本郷弥生・・・EITO大阪支部、後方支援メンバー(EITOガーディアンズ)。
大前[白井]紀子・・・EITO大阪支部メンバー。事務担当。ある事件で総子と再会、EITOに就職した。
神代チエ・・・京都府警の警視。京都府警からのEITO出向。『暴れん坊小町』の異名を持つが、総子には、忠誠を誓った。呼び名は他のメンバーと違い、あだ名の「小町」で通っている。
芦屋一美警部・・・大阪府警テロ対策室勤務の警部。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。アパートに住んでいる。
用賀[芦屋]二美二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。オスプレイやホバーバイクを運転することもある。後方支援メンバー(EITOガーディアンズ)。総子の上の階に住んでいたが、用賀と結婚して転居した。
芦屋三美・・・芦屋グループ総帥。EITO大株主。芦屋三姉妹の長女で、総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。芦屋三姉妹と総子は昔。ご近所さんだった。
小柳圭祐警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。
指原ヘレン・・・元EITO大阪支部メンバー。愛川いずみに変わって通信担当のEITO隊員になった。
用賀哲夫空自二曹・・・空自のパイロット。EITO大阪支部への出向が決まった。二美の元カレだったが、二美と結婚した。EITOガーディアンズ。
真壁睦月・・・大阪府警テロ対策室勤務の巡査。
今奈良リン・・・大阪府警巡査。EITO大阪支部に出向になった。
藤島ワコ・・・藤島病院看護師。
花菱綾人・・・南部興信所所員。元刑事。
横山鞭撻・・・南部興信所所員。元刑事。
友田知子・・・南部家家政婦。芦屋グループ社員。
門田警視・・・大阪府警副本部長。小柳警視正の姉。
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= EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =
== EITOガーディアンズとは、EITOの後方支援部隊のことである ==
※金属バットとは、主に野球で使用されるバットの一種で、アルミニウムや合金などの金属素材で作られています。木製バットに比べて反発力が大きく、芯が広いため、打球速度や飛距離を向上させる効果があります。
※プロ野球で金属バットの使用が禁じられている理由は諸説ありますが、プロの選手が金属バットを使用した場合、飛距離が出過ぎて野球のゲームバランスが損なわれるということもありますが、打球が速すぎて危険だということもあるようです。
午後1時。EITO大阪支部。会議室。
マルチディスプレイに、小柳警視正が何とも言えない顔で映っている。
片隅に、先日の「金属バット殴打事件』の情報が表示されている。
『被疑者Aは、本年4月下旬、大阪市中央区の駐車場において、氏名不詳者の身体等に対し、共同して害を加える目的で、金属バット等を準備して、またはその準備があることを知って集合させ、被疑者Bは他の者と共謀の上、前記日時場所において、前記目的で、金属バット等を準備して、またはその準備があることを知って集合したものです。』
「これは、先日の事件で、逮捕して解決済みでは?」と、大前は小柳に尋ねた。
「だけ、ならば、一件落着だが・・・金属バットの1本から薬物反応が出た。東大阪市でも、金属バット殴打事件が発生している。合同捜査本部を立ち上げたが、連続する可能性が出てきた。ヘレン君。添付したメールの文書を出してくれ。」
メールには、こう書いてあった。
『金出して、怨みを肩代わりしてやる、と言えば、幾らでも乗ってくる軽薄な者がいる。』
「これは、」SNSのBase bookのメッセージサービスを利用したメールみたいなものだ。もうアカウントは消されている。闇サイトではないが、手口は似ている。詰まり、検挙されてしまったが、被害者である『氏名不詳者』をあぶり出し、被疑者A及び被疑者B及び仲間は、利用された、と推測している。東大阪市の事件も似ているんだ。」
「目的は、その『薬物』で、奴らは、特殊詐欺で言う『受け子』ですか。」
「金を出す以上は、それ以上の見返りがある、ということだ。『氏名不詳者』の実態と胴元を叩くことがEITO大阪支部への依頼だ。よろしく頼む。」
画面が消えると、みゆきとあゆみが「「金を出す以上は、それ以上の見返りがある、ということだ。」「『氏名不詳者』の実態と胴元を叩くことがEITO大阪支部への依頼だ。よろしく頼む。」と言って、真似をした。
「いちいち吉村新喜劇せんでもええよ。ちょっと、厄介やな。続報待ちやな。」と、大前は締めた。
二美は、黙って小町に合図して出て行った。
総子は、南部興信所に向かった。
駅まで歩き、幸田の自動車に便乗した。
午後3時。南部興信所。
幸田が、囮捜査の成果を報告した。これも、府警からの依頼だった。
「その、門田さんに頼もうかなあ。でも、小町や二美ネエは、探りに行ったみたいやけど。」
「話、見えへんねけど。」と、幸田が言うので、総子は小柳の言った『氏名不詳者』が気になる、と応えた。
「日本人とちゃうな、花ヤン。」「そやな。外国人。それも隣国人やな。」
花ヤンと横ヤンは頷き合った。
「捜査線上に浮かんでいるけど、マスコミに伏せる場合と、ホンマに『今のところ』分からん場合があるな。倉持君、出番やな。」
「ええ?」「この間の報告ちゅうことで、総子と一緒に知らん顔して、行ってみ。幸田、報告書、出来てるんやろ?」
「はい。まだ、府警に送ってませんけど。」
「PCは故障中や。報告書出前は、若いもんの勤めやな。」
花ヤン、横ヤン、幸田は深く頷いた。
総子は、必死に笑いを堪えた。
午後4時。大阪府警。本部長室。
「誰かと思えば、この間のイケメンじゃないの・・・はい。さっき、芦屋二美が芦屋一美の振りしてコピーして行った資料じゃ足りないだろうから、これ追加ね。圭祐が文句言って来たら、副本部長の指示ですって言いなさい。総子。期待しているからね。」
本部長室廊下。小柳が歩いているのを発見した総子は、倉持をつついて、物陰に隠れてやり過ごした。
午後4時半。
自動車の中から、総子は興信所に電話した。
「門田さん、まんざらでも無さそうやったで。」
電話の相手は、「要件がちゃうやろ。」と、言った。
「『氏名不詳者』の1人は、通称ヤン・チャウネン、もう1人は通称ソウ・チャウネン。」「それ、芸名やろ。」「いや、金属バット持ったバイト君らの話や。そら、マスコミ発表は出来んわなあ。要するに、被害者は那珂国人。バイト君らは、闇サイトのバイト君と違って金に釣られて指示通り動いただけ。これも、マスコミ発表伏せてるけど、マトリがマークしてた那珂国マフィアが内輪もめした結果みたいやな。四課との合同捜査で、『令和天然組』の黒幕と言われている『昭和一桁組』と、その那珂国マフイアが手打ちうどんするらしい。門田さんが別件で逮捕したマフイアが『しゃべり』で内輪もめがばれた。」
「手打ち蕎麦やろ。小柳さんが、EITOに詳細言わへんかったのは、昼過ぎの時点ではまだ情報が少なかったんと違うか?」
午後5時半。EITO大阪支部。
総子が帰ると、「もう『看板』ですけど。」と、大前は言った。
前には、二美と小町がいる。
「勝手なこと、すな、すな、すな、すな、するんかーーーいい!!」と言って、大前は総子を睨んだ。
「兄ちゃん、ごめんなさい。妹が『生意気な指示』出しました。」と、総子は土下座した。小町も二美も土下座した。
「聞いたわよ、副本部長からも、南部所長からも。みんな焦ってたのよ。『紀子のおなかのややこ』に免じて許してやって。」
大前は、口から泡を吹いた。
翌日。午後5時。東大阪市。『昭和一桁組』事務所。
住宅街から外れた、別荘。元は、ボウリング場だったらしい。
どこからか、スピーカー音声で、妙な歌が流れてきた。
「みーぎーをーむいても、目の前みーてーもー。」
マフイアとの『手打ち』が午後6時という情報を元に、EITOエンジェルズは、先回りして出動した。
組員達が出てきた。
「んあ?なんやおまいら。」
「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ、悪を倒せと我らを呼ぶ。参上!EITOエンジェルズ。満を持して。」二美が口上を担当した。
4台のホバーバイクをスポットライトにして、EITOエンジェルズは、1時間後には、広い敷地に黒い人文字を書いてあった。
午後6時。
やってきたマフィアメンバーはぎょっとした。
倒れている『人文字』には、”YOU HOPE KILL” と書いてあったからだ。
そして、やってきた門田警視は言った。” Weapons are useless” (武器は役に立たない)
午後8時。総子のマンション。
知子の作ってくれていた、鯛メシと鯛料理を食べながら、南部は言った。
「紀子ちゃんの産休や育児休暇の時、どうするの?」
「三美ネエが紹介するって言ってたけど、ヘレンのお母さんが手伝うって。」
「そうか、娘の活躍、間近で見られてええな。」
「先回りして、三美ネエに言うてくれたん?」
「ああ、ホンマの『時の氏神』様やからな。」
2人は、いつまでも笑い転げた。
―完―
やってきたマフィアメンバーはぎょっとした。
倒れている『人文字』には、”YOU HOPE KILL” と書いてあったからだ。
そして、やってきた門田警視は言った。” Weapons are useless” (武器は役に立たない)