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コンプレックスにはキスしてあげるべきなのだ。

まずはじめに俺は視力が悪い。今の視力だと将来車の免許すら取ることは厳しいそれだけならまだマシだが日常生活にも支障をきたすレベルだろう。



ここで誰しも疑問に思う事だと思うが




―じゃあメガネやコンタクトつけたら良くね⁇―




その通り。大正解。超ド正論。

言い返す言葉も見つからない。

でも本当に申し訳ないがそれは死んでもできない。

理由すらも言いにくいがあえて言うなら。







―見たくないものまで見えてしまうから―







この物語はそんなコンプレックスの塊だった俺が

少しほんの少しだけ前向きになるお話.....。





1 《コンプレックスは即刻消し去るべきなのだ。》



「お...ぃ...」


「おい...ぁ..ゃ」


「おい‼︎ 綺‼︎‼︎」


「おわぁ‼︎ビックリした‼︎」


朝の心地がいい日差しを顔いっぱいに浴びながら俺の鼓膜に劈く様に放たれた声はやかましいが安心する声でもあり、どこか懐かしい声でもあった。

だが急な出来事にパニックになり音速で布団を自分の目の下ギリギリまで被せる俺。


「何だ..!? はぁ...何だよ親父かよ‼︎」


「何だとは何だ、お前にとって世界で1人の親愛なるお父様だぞ‼︎」


「親愛なるって.....最後に親父の顔見たのはもう半年前だぞ。親愛なる親父なら親愛なる息子を想ってもう少し家に帰って来てみてはどうだ‼︎」


「ガハハッ‼︎それもそうだな‼︎」


今日は4月8日の月曜日。

そう、俺こと《吉田 綺》

ヨシダ アヤ

にとって今日は高校生活2度目の春を迎える大事な大事な始業式の日なのだ‼︎

...とは言ったものの正直めちゃくちゃ楽しみという訳ではない、何故なら高校を1年通ってできた友達は1人ついでに彼女は...まぁもう言う必要ねぇか。

てな訳で俺は高校2年生にして既に青春を諦めている、時には諦めも肝心なのだ。

ちなみにさっきからうるさいこのジジイは俺の親父の

《吉田 繁》

ヨシダ シゲル

普段は長距離ドライバーをしていて家に帰ってくるのは年に数回程度なのだ。


「ところで綺、彼女はできたのか??久々に帰って来たんだ、その辺の話父さんに聞かせてくれよ。」

「彼女だぁ!?いねぇよ‼︎彼女つくりの前に友達のつくり方を教えて欲しいぐらいだね。」

「そうか....なぁ綺....案外男も悪くないぞ。」

「何の話だよ‼︎‼︎‼︎」

「ガハハッ‼︎冗談だよ冗談。それじゃあ父さんツレとゴルフに行ってくる‼︎元気でな‼︎」


瞬きする暇も無く親父はフルスピードで家を飛び出して行った。

「はぁ....相変わらず歩く災害だ....」


俺は歩く災害との死闘を終えて登校の準備をする為重い腰を上げ"洗面所"へと足を伸ばした.......。

洗面所に来たらとりあえず深呼吸だ。

呼吸を整え覚悟を決めて鏡に視線を移す。


正直自分の顔を鏡で見る行為は昔から好きじゃない、最後に洗面台の電気をつけたのはいつ頃だろうか。

視力は悪いがメガネやコンタクトは死んでもつけられない、つけたら最後ショックで心停止不可避。

マスクは超必須アイテム。

鏡・スマホの画面・電車の窓・曇りの時の水たまりetc...

全てが俺の敵なのである。

もうここまで愚痴を吐いた後に説明するまでもないと思うが風呂上がり補正がかかっている状態でも良くて中の下といったところだろうか。


・生える範囲が異常かつ濃すぎる眉毛

・食事や睡眠時間や化粧品 乳液を極限まで意識しても

非情にできていくニキビ

・瞼は重くはないがパッとしない奥二重

・多少ある鼻筋をかき消していく大きめの鼻

・左右非対称の顔

・黄色く黄ばんだ歯

・○リオの○ッスンみたいな四角目の輪郭

・髭を剃って清潔感を出したいのにそれらを邪魔するニキビ


「はぁ...自分が好きってマインドは素敵だとは思うがいきすぎたら火傷するだけだからなぁ....。

何か自分を本当に心から愛せる"キッカケ"でもあれば辛い気持ちになる事なく変われるのだろうか...。」


朝からネガティヴになるのは良くないと思いつつもネガティブになってしまう。情けない限りだ。


「さ、行くか。」


俺は鏡から素早く目を逸らし洗面台の傍に置かれた鞄とマスクを荒く掴み玄関へと足早に駆けていった。


俺の住んでいる街は都会でも田舎でもないちょうどその中間といったところだろうか。

学校に行く為の登校ルートには周りに田んぼがちらほら見える。だが近場の駅に足を伸ばせば周辺にはショッピングモールや居酒屋やカラオケなどで休日は大賑わいだ。


世の中の人はそれぐらいが丁度いいと言うが俺には全然理解できない。どうせならいくら周りを見渡しても目に止まるのは立ち並んだどでかいビル、どれだけ深い夜になってもあたりの喧騒が止まずいつまでも街が眠らないような...そんな街にいつかほんの僅かでもポジティブになれたら住んでみたいもんだ。


俺は家を出て学校へと続くいつもの用水路横の真っ直ぐ伸びた道を歩いていた。


「あ〜やちゃん‼︎ だ〜〜〜れだッ‼︎‼︎‼︎」


背後からいきなり見慣れた手が現れ俺の視界を塞いだ。

だが正体を探る事はしなかった。分かりきっているからだ


「何してんだ優斗」

ユウト

「うげッ‼︎ 何で分かったんだよ‼︎一瞬視界に捉えた俺の手だけで俺って分かるとか変態じゃねぇか‼︎」


俺の名前をちゃん付けで呼んでくるこのバカは高校で俺に出来た唯一の男友達。

身長は175cm やや痩せ型 顔は普通に整っている方だ。

俺は身長169しかないのに、嫉妬の業火に骨の髄まで妬かれてしまいそうだ。

《野村 優斗》

ノムラ ユウト

第一印象はバカっぽい。だが喋ってみると案外悪いやつではない。それどころか喋れば喋るほど謎が深まると同時にこいつに興味が湧いてくるミステリアスな魅力⁇みたいものがある男だ。

時々こいつの噂話を周りの人間が話している所に遭遇するが少し耳を傾けてみるとそれがまた少し面白い。


―彼女はネトゲで知り合った会った事もない身元不明女―

―他県の出身だが地元で問題を起こしこちらに逃亡中―

―麻雀が死ぬほど強く裏で金を稼いで生計を立てている―

―早漏―


例を挙げるとこんな感じだ。にわかには信じられない噂だが真実でも偽りでも面白いのでまぁOKだろう。

まとめると興味深いがくだらな過ぎる噂が絶えない人間なのだ。

優斗自体友達がかなり多いので必然なのかもしれない。



「勝手に変態扱いすんじゃねぇよ。第一俺はお前しか友達がいないんだぞ。そんな俺にお前以外誰がこんなバカな事してくるってんだ⁇」


「綺ちゃん...当ててくれたのはかなり嬉しいんだけど理由があまりにも悲しすぎるぜ....」


「俺の事はもういい..優斗....俺の屍を...越えてゆけ...‼︎」


「そんな...嘘だ...綺ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁんッ‼︎‼︎」


2人でそんな内容も無いようなバカな会話をしていると俺たちはあっという間に校門前まで到達していた。

いつものやけに長く感じる通学路も友達と話しながら歩くと1人の時と比べて体感時間に天と地程の差が生じる。

そう考えると友達という存在は案外いいものなのかもしれない。


俺と優斗はバカな会話をしながら軽い足取りで校門をくぐり抜けクラス表が張り出されている掲示板へと足を運んだ。

初登場したキャラを軽く説明します。


・吉田 綺 ヨシダ アヤ 16歳 本作主人公 169cm


・吉田 繁 ヨシダ シゲル 45歳 綺の父親 178cm


・野村 優斗 ノムラ ユウト 16歳 綺の友達 172cm




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