表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

5-P1

「ねえ、仁美さん起きて。起きてよ。起きてってばっ」


 何度も体を揺さぶって声をかけ続けて、よくもまあこんなにも眠れるものだ、と呆れだした頃、仁美さんは「ううん?」と声を出した。


「どうしたの彩香?」


 寝ぼけ眼で仁美さんがこちらを見る。その顔が普段の柔らかな仁美さんとは違って間抜けで、わたしは吹き出してしまいそうになった。


「やっと起きてくれた? 睡眠導入剤って効くんだねえ」


「ええっと?」


 発言の意味が分かっていなさそうに、仁美さんは首を傾げる。起きようとしたけど体が動かなくて、ようやく自分の置かれている状況を理解し始めたらしい。


 仁美さんが眠っている間に手足を結束バンドで縛っておいた。抵抗されないように、両腕は後ろ手に。


 わたしのことが原因かそれ以外かは定かではないが、最近、仁美さんが心療内科に通っていて、睡眠導入剤を飲んでいるのは知っていた。


 睡眠導入剤を飲んだ日は朝までぐっすりと眠っていて、少しくらい声をかけたり、体を押したりしてみても起きないのは事前に確認済み。さっきだって、手足を縛っている間もちっとも起きなかった。


「これ、何の冗談? 最近、いたずらが過ぎるけど、もう流石に笑って済まされないよ」


 仁美さんは戸惑いつつも怒ったりせず、静かに言う。


 そっか、冗談、いたずらか。


「冗談じゃないよ。これまでのだって、一つたりとも巫山戯てなかった」


 冗談なんて微塵もなく、わたしは仁美さんを本気で傷つけた。それなのに、全部、冗談やいたずらで片付けられる程度の些細なことだったんだ。


「ねえ、どうして仁美さんはわたしを捨てようとするの?」


 仰向けの仁美さんに跨るように、わたしは迫る。


「何の話? 分かんないよ」


「とぼけないでっ」


 まともに話を聞いてくれていないことに腹が立って、わたしは声を荒らげてしまった。仁美さんはビクッと肩を揺らした。


「ねえ、わたしは仁美さんとずっと一緒に居たいの。他には何にもいらない。わたし、仁美さんが望むなら全部あげてもいいと思ってるよ?」


 具体的には望む全てが何なのかは分からないし、わたしは神様でもないから望むもの全てを与えられるはずもないけど、それだけの覚悟だということ。


 ただ「これからよろしくね」と言って手を差し伸べてくれた時のように笑って寄り添ってほしかった。ずっと傍に居ていいんだよって言ってほしかった。


 それなのに、



お付き合いいただき、ありがとうございます。

次回更新は明日20時を予定しています。

よろしくおねがいします。


また、感想、アドバイス、ダメ出しはご自由にお願いします。

とても喜びます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ