オレのこと。そして主人公とその幼馴染のこと
さて多少の状況の変化はあったが、この年でオレは12歳である。来年の春には同じ年頃の貴族が一同に集まるオブレス貴族学院に通わなくてはならないのだが、本音を正直にいうなら面倒くさいので行きたくない。
学院は「学問に貴賎なし」とご立派に謳うけれど、ここでいう貴賎とは貴族位の上下の事だ。貴族と庶民とが学問の前に同等という意味では決してない。なので、上位貴族は優秀さを示すことで将来の布石を打ち、下位貴族は上位貴族に取り入ることで伝手を作るために通うことになる。
ようは、媚び売り合戦だな。
そのなかに、教会などから推挙を受けた文字書きのできて勉学に意欲のある庶民を混ぜるというのだ。碌なことにならないことは目に見えている部分はあった。とはいえ、上位貴族にうまく取り入れられれば栄達もあり得るので、まったくもって悪いという話でもないわけだが……。
あくまでも庶民は庶民であり、貴族は貴族なのだ。ここが変わることはない。
ちなみにだが、この学院と主人公はまったく関わらない。なぜなら、主人公は片田舎の出身の少年であり貴族との関わりもない。そのうえ、世界を旅しなくてはいけない存在なので学院編なんてものは存在しないからだ。
しかしながら、王国法において、オレは男爵家の嫡子として通わなければならないと定められている。なので学院に通うことは絶対である。
過去には問題を起こして放校された嫡子が廃嫡されたというケースもあるくらいなので在籍期間をまっとうする必要がある。つまりは貴族家としての体面がかかっているということだ。
あとは、そうだな。主人公について少し触れておこう。
主人公は片田舎にある農村に住んでいる。
その村には『禍ある時、光差し、闇を払うだろう」というありふれた伝承が残っていて、いつごろからか流行り始めた「勇者物語」という王道物の演劇が、この村の伝承からつくられたともいわれている村であった。
この勇者物語を簡単に要約すると、もしも禍(魔王とされている)が起きたときは、伝承の地に赴き、伝説の武具を集めて立ち向かえ」という物語である。
また件の伝承は、いつから伝わるものなのか、なぜそんな伝承があるのかも誰も知らないという。ただただ子々孫々に伝わっているらしい。
そんな村に生まれた主人公は特別な力を持っていた。なんてことはなく、ただの村の狩人の息子でしかなかった。特別な力は、むしろ幼馴染の女の子のほうに発現していて患部に手をかざせば傷が塞がるという。
それは不思議な力であった。
「またけがをしたの?」と幼馴染はいう。
すると少年はコクリと頷いた。
「わたしがなおしてあげる」
少女の手が傷口にかざされると少年の膝にあった傷口が塞がり血は止まっていく。
「ありがとう。アーシャ」
そんな不思議な力をもったアーシャは、成長とともにお転婆ながらも都市部の生活にあこがれる普通の少女へと成長していく。
主人公もまた狩人の息子として一人で森にはいって獲物をしとめられるまでに成長していた。
少女は村の生活にすこしの窮屈さと退屈さを感じながら、主人公は、このほのぼのして変化のない日常がこれからも続いていくと信じていた。
あるとき、大きな地震が起きていくつもの建物が倒壊して山肌の一角に横穴が発見されるまでは……。




