獣人と獣人族には違いがある。
「決まりだな。おい、アミーア。お前が座るものをもってこい」
その日から、オレは形としては奴隷でペットと称したアミーアとともに席に着くことになった。また、突然のことにはじめはおろおろとしていたアミーアも回を重ねるごとに段々と落ち着いて講義を受けるようになっていった。
当然なのだが、オレとしては何かをおもうことはない。しかし、シャリーヌからするといつオレが癇癪を起すのかといまだに心配気な目を向けてくるのが気になる。
オレはなにもしないぞ?
まあそういった事情もあってアミーアについては言及せずにしばらく様子をみていたのだが、やはりアミーアは魔法が苦手のようだ。ただそれは獣人族の特性によるところが大きく、かわりとして種族の特性として身体能力は高いのだ。そのためか意欲とは裏腹に魔法を扱うことへの感覚が鈍いためか発現に至るところまで、いま一つ進展していない様子だ。とりあえず頑張っているな。
ゲームデータでいうと主属性は風。魔力量は低め。補助はなし。風魔法を使ったトリッキーな動きに加え、身体強化を用いた近接戦闘タイプになる。投げナイフも操り、そば仕えの護衛としては最適といえるだろう。
ちなみに、獣人と獣人族の間には明確な違いと差がある。前者の獣人は動物の姿のまま二足歩行をする種族であり身体能力は驚くほど高い。後者の獣人族はひとの面影をもった種族ということで、身体能力はひとよりも優れるが獣人に及ぶことはない。アミーアは後者のタイプであり姿形はひとであるが三角に尖った耳は頭上にあって尻尾も猫のそれというわけだ。
ただ忠誠心というか、そういったものはまったくない。ないだろうな……はぁぁ。
オレが危機に陥ったときに従属の効果を使って強制的にアーミアを盾にすることは可能ではある。あるが、実行するつもりは毛頭ない。けれど身の安全をはかるうえで共闘という形はとりたい。そのために、親密さがないよりもあったほうがいいけれど……な。
シャリーヌの講義を一緒に受けるようになってからすこしは距離が近づいたようにも感じないこともない。例えるなら野良猫が威嚇してきて触らせるか。の距離から、微妙に近づいてくるなぁという距離といった感じだ。
これについては、おいおいどうにかなればいいな。
さて、ゲームでのオレのもう一人の側近アリフールはというと、いまもかわらずに外を歩く機会があれば必ず連れ歩いている。というか、護衛だからしょうがないね。とくべつなんにかという事件は起きないが、これまでに積み上げたヘイトのおかげで、屋敷での腫物扱いもかわっていない。逆にアミーアは、オレのペットという立場に同情されているのかそれなりに好意的に接せられているようだ。
それからさらに、数か月。季節は秋を通り過ぎ、冬を迎えていた。
さむい。そして婚約者の父マーメイヌ子爵のことを忘れていた。
オレが俺の記憶から生まれてから娘のマーサに対しては以前よりかましな対応を心掛けていたのだが、子爵自身はマーサを差し出さねばならなかったことが心労に繋がったのか倒れたそうだ。
マーサからの報せということもあって、婚約者という体のためにも見舞いにいくことにした。ただ見舞いに行くにしても、オレが積極的に見舞いに行くとなると、いままでの心象から、オレの本心を疑われかねない。なので、心優しいなんて心はない。面倒だ。ああひたすらに面倒だムーブをかましなが、行く。
使用人の目から「こいつはこんなやつだ」と以心伝心するかのように伝わってくるけど負けぬ、めげないぞ。つらいけど……。
「さてと、マーメイヌ子爵。お加減はいかがかな」




