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異世界ガンスリンガー 〜静女に捧げる誠実な嘘〜  作者: ジュウニシカ
第2章 Re:start
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013-冒険者ギルド【シーブンファーブン】

 ランチを終えたクシードとミルフィは、“シーブンファーブン”と呼ばれる冒険者ギルドへ足を運んだ。


 入口に入ってすぐに掲示板があり、その傍らには受付があった。全部で5つあり、よくアニメや漫画とかで見かける、『ザ・冒険者ギルド』と言う造り。

 

 館内にあった時計は14:00過ぎを差しており、時間帯の都合か混み合っておらず、人混みはまばらである。



 

 入口の扉をくぐると、ミルフィは迷わず、金髪でアイメイクがキツめの女性がいる受付に向かって行った。

 

 いつも担当してもらっているのだろう。


「おっ、ミルフィじゃん……、えっ? 男?」


 あのミルフィが!? みたいな驚きの顔をしているクシードと同じ人間タイプの金髪&アイメイクキツめの受付嬢。

 

 これは一言、説明でもしたほうがいいのかもしれない。


 

「初めまして〜。ミルフィとは昨日出会ったばかりなんですよ。まだ知り合いレベルで――」

「はぁ? 性別のことだけど。上背もあるし男の服着てるからさ」


 思い違い……。


「あぁ、ボク……、男です」

「えっ? マジで? 声も女っぽいのにね。何かキモチワルッ」


 出会って間もないのに、気持ち悪い発言……。

 失礼な女だ。


「で、何の用? 午後からで依頼できる仕事は無いけど」

「あああのあの、えっと、あのー……」


 話を振られてミルフィは困惑し、助けを求める様な眼差しをクシードに向けた。


「ああ、要件はボクの方で、登録業務をしたいんですわ」

「あー登録ね、はいはい。前も他の場所でこの仕事してた?」


「いえ、この仕事は初めてです」

「へぇ、じゃあルーキーだ。手続きするから身分証明書見せて」


 クシードは先程入手した仮発行証を受付嬢に渡した。


「はぁ? 仮? マジ?」


 なぜか半笑いで受け取った受付嬢。

 この失礼な受付嬢は、手元の引き出しの中から用紙を取り出し、慣れた手つきで記入を始めた。


「えーっと、クシード・シュラクス、21歳、うわー、マジで男なんだ」


 いちいち小馬鹿にしてきて、何か恨みでもあるのだろうか。

 クシードは少し怒りを覚えながらも記入している様子をしげしげと見ていた。


「無属性の魔力無し? チョーヤバいんだけど」

「何か問題でもアリですかね?」


 クシード自身も問題だらけなのは分かってはいる。

 が、一応……。


「いやいや、問題大アリでしょッ! 何でこの仕事しようとするの?」

「あのー、いや、そのー、……ミルフィもしとるんで、ボクもいけるかなぁと」


「ナメてんの? ケガじゃ済まされない様な依頼もあるんだから雑用ぐらいしかないよッ!」


 仰る通りだと思う……。


「まぁ、いいや。登録だけでもしておくから、必要事項書いてくれる?」


 用紙とペンを渡されたが、読み書きは出来ないので役所同様、ミルフィに代筆してもらった。


「あんた字も書けないの? 魔力も無いんだからミルフィ以上に役に立たないし、別の仕事探した方がいいと思うね」


 正論だがサラッとミルフィの悪口言うあたり、ほんとに嫌な女である。

 しかし、ここは我慢。

 

 記入を終えると、ミルフィは性悪の受付嬢に用紙を渡した。


「ちょっと待った。使用武器とジョブの欄が未記入だから書いてよ」

「ジョブ? それ何ですか?」


「何で知らないの? ミルフィは白魔道士でしょ。他に剣士や黒魔道士、あと竜騎士やモンクとかいるじゃん」


 んなこと言われても知らんがな。

 ただ、銃を扱うから――。


「んー、ガンスリンガーですかね」

「はあ?」


「ガン、スリン、ガァー」

「いや、だから何ソレ?」


「あの、銃を使うのですが……」

「あっそう。なんか面倒臭いから狩人で書いとくよ」


「あ、はい、お願いします」


 狩人……。



「あー、そうそう、ちょうどこの後オリエンテーションがあるから受講しなよ。案内呼んでくるから、ちょっと待ってて」


 

 性悪受付嬢は、カフェ色のウサギ耳と、同色のショートボブヘアにまんまる黒目がカワイイ、身長約150cm後半の少女を連れてきた。

 ボウタイ付のネイビーのブラウスと、スカイブルーのミドルスカートは、性悪受付嬢と同じ服装。この冒険者ギルド、シーブンファーブンの制服なのだろう。


「初めまして。リーゼプチーナ・ギサラビルトです。皆さんからはリーゼと呼ばれていますので、そう呼んで下さいね」

「じゃあリーゼ頼んだよー。コイツ、マジ使えないヤツだから適当にね」


「先輩、そんなこと言ったらダメですよ〜!」


 捨てゼリフの様に悪態を吐いた先輩受付嬢は、颯爽と自身の職務へと戻って行った。


「シュラクスさん、ごめんなさい。キャルン先輩は誰にでもキビシイ性格で有名ですから」

「ある意味、平等に接してくれとるわけなんや……」


 性悪キャルン先輩に対して、リーゼは良い人そうだ。優しげな面差しと声から、それらしさが伝わってくる。


「それでは行きましょうか。オリエンテーションは向こうの部屋で行います! ご案内しますね!」

「ほなミルフィ、行ってくるわ。ありがとうな」

 

 クシードはミルフィに手を振り、リーゼに連れられ、学校の教室の様なオリエンテーション受講部屋に移動した。



 

 受講部屋には、クシード以外に2名の受講者がいた。

 槍を携え歴戦の戦士を思わせる雰囲気に、頭にインパラの様なトゲトゲしいツノを生やした体格の良い褐色のオジサンと、魔法使いが被るような三角帽子を被り、リボルバーを腰に差している少年。

 

 この少年は魔法使いなの?

 狩人なの?

 どっちだ?


 

 クシードが席に着くと、ボディビルダーの如く筋肉隆々でモヒカンヘアー、そしてティアドロップのサングラスをかけた男性が入室してきた。


「皆さん、この度はシーブンファーブン・ルシュガル支所への所属、ありがとうございます。講師を務めさせて頂きますムッキです。早速ですが、オリエンテーションに入ります」


 渋いダンディな声で話す、この筋肉モヒカンが講師?

 リーゼがオリエンテーションをしてくれないのかぁ……。


 なんだか残念だ。



◆◆◆



 オリエンテーションの内容は、“冒険者ギルドとしての心得”の様なものがメインだった。


 シーブンファーブン内での争いは禁止やら、力を駆使して悪事は働かない。シーブンファーブン所属の証であるバッジはいかなるときも着ける。

 依頼は公表されたら先着順で、達成後の報酬はその場で支払われるなど――。


 他に、“モノノケ”と呼ばれる、いわゆるモンスター駆除後の死体処理はスナなんとかだの専門用語が多すぎてよく分からなかった。

 

 後でミルフィに聞こうと思う。


 ちなみに、シーブンファーブンとは、虹色の架け橋と言う意味が込められているのだとか。

 そして、『多種多様な依頼主と目的達成のための架け橋となり、我々は社会へ貢献する』のが()()理念だそうだ。


 

「オリエンテーションは以上です。質問は個別で伺います。では皆さん、これからバッジを贈呈しますので呼ばれた方はこちらまで」


 ムッキ講師が入口の方を見ると、リーゼがバッジを持って入室してきた。

 

 バッジは5cm程の菱形でパープル色に輝いていた。

 今程受講した内容だと、色は全部で7色あるようだ。

 

 パープルがルーキーで、

 ネイビー

 ブルー

 グリーン

 イエロー

 オレンジ

 レッド


 レインボーカラーの7色にランク分けされ、レッドに行くほど高ランクだそうだ。

 

 ルシュガルにはランク・イエロー以上の所属者が不在なため是非ともランクアップして欲しいとムッキ講師は言っていた。


 だが、デキる人は待遇の良い他社へ転職するみたいな言い方だった。

 首都カロッサ・ヴァキノだっただろうか。

 冒険者ギルド、シーブンファーブンの本部がある様で、高ランク者は皆そっちへ転属するそうだ。


 


 名前を呼ばれたクシードは、リーゼからバッジを受け取り左胸に取り付けた。


「シュラクスさん、似合ってますよ。無属性の魔力無しでも出来ることはあります! これから一緒に頑張りましょう!」

「はいッ、リーゼさんッ! よろしくお願いしますッ!」


 クシードが元気よく返事をすると、リーゼは新たな門出を祝う様に微笑んでくれた。

 

 

◆◆◆



 晴れて異世界の冒険者となったクシード。

 

 シーブンファーブンのエントランスの壁にかかっている時計を見ると、16:30過ぎを差していた。

 

 早速依頼をこなして金銭を得ようとしても、あの態度の悪い受付嬢キャルン先輩いわく、今日紹介できる仕事は無いと言っていた。

 

 無一文である以上、宿には泊まれない。どこか野宿できる場所を探さなければ。


 クシードは冒険者ギルドを出ようと、入口付近に目を向けると直立不動で佇んでいるミルフィがいた。


 クシードがミルフィを認識するや否や、彼女は足音を立てずに早足で歩み寄ってきた。 

 しかもなぜか無表情で無言……。


 軽くホラーだよ。

 


「どうしたん?」

「く、クシードぉ、あの、あの、あああの……」

 

 幽霊の様に近づいてきて、スケッチブックを眺めながら、何をモジモジしているのだろうか?


 

「いいいい一緒に、くらくクララ、暮らっしょー」

「……」


 

 “一緒に暮らそう”

 出会って2日目にも関わらず同居、しかも異性と一緒に暮らす。



 

 破壊力抜群のパワーワード……。



 

 

 しかし、このパワーワードには、ちゃんと理由があった。ミルフィが住むアパートの屋根裏部屋の賃貸スペースが空いていたそうだ。


 筆談で交渉したのか、クシードがオリエンテーションの受講中に、ミルフィが大家に問い合わせて承諾を得たそうである。


 住居まで手配してくれるとは、どれだけ優しい人なんだろう。……だが、頼んでも無いのに、ここまでしてくれると逆に怖い。


「に、にちょにちょ、にちょーひん……ああの、かかかかに、かいにかいに……」

「えーと……、日用品か? いやいやいやいや、オレお金無いし、正味部屋も……」


 ミルフィは首を横に振った。

 

 人が良すぎて、ほんとに怖い――。



 日用品の購入へ行った後、ミルフィの住むアパートへと向かった。



◆◆◆


 

 ミルフィの住むアパートは、2階建で1階は大家の倉庫になっており、2階が住居スペースとなっている。


「リビングに対面キッチン、おっ、シャワールームとトイレ別々やん。ええとこやな」

「コッチ……」


 ミルフィが指差す方向には通路があり、屋根裏部屋へと続く階段があった。


 屋根裏部屋にはベッドと空のクローゼットのみと至ってシンプルだが、寝床が確保できるだけで十分である。


「ほんまにええんか?」


 ミルフィはコクリと頷いた。

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