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一.五刀流になってしまった男の話

作者: 辺理可付加

「おいシンイチ、お前今まで何処行ってたんだよ」


キタカミは親友のシンイチとバーのカウンターで飲んでいる。数日に一回は飲みに行く仲の二人だったが、ここのところシンイチと連絡が付かなかったので今日は久し振りのことだった。

と言っても一週間ほどしか空いていないが。


「電話に出ねぇし、ラインも既読付かねぇし」

「あぁ、ちょっと最近山籠りしててね。電波が届かなかったんだよ」

「山籠りって、お前はいつの時代の何者だよ」

「ま、修行してたとでも思っといてくれ」

「剣豪かよ」

「剣豪と言えば、宮本武蔵かな」

「まぁ日本人は大体そう考えるだろうな」

「宮本武蔵と言えば……」


シンイチがウイスキーを口に運ぶ。グラスの中で氷がキーンと鳴った。


「二刀流って話題らしいじゃん?」

「あぁ、ショーへー君のアレでな」

「僕も二刀流だったんだよ。最近まで」

「なんだよお前、やっぱり剣豪かよ」

「いやいや、刀なんか持たないよ」

「じゃあ野球かよ」

「いや、恋の二刀流だった」

「あ、お前、そうだったのね。知らんかった」

「でもこの前、意を決して一刀流になったんだよ。山籠りしてさ」

「山籠りしたらどうしてそうなるのかは知らねぇけど、無理にそうすることもないんでないの?」

「いやいや、そうならないと不味い状況でさ。彼女にバレてさ」

「あぁ……、そういうの受け容れられねぇタイプか……」

「寛容な方が珍しいって」

「そういうもんかねぇ」

「でさ、一刀流になれたと思ったんだよ。山籠り終わった時は」

「ほう、でも『思った』ってか。まぁそういうのは簡単にゃあ……」

「一.五刀流になってた」

「どういうことなの!? え、どういうことなの!?」

「どういうことって……」

「何? 男も好きだけど……、その、性的にまでは見なくなった、とか?」

「はぁ!? なんの話だよ!?」

「あ?」

「あー、あー……、そうか。……あのなぁ、僕が言う『恋の二刀流だった』て言うのは、バイセクシャルってことじゃなくて、その、なんだ、付き合ってる相手が二人いたってことだよ」

「あちゃー……、浮気かよオメェ……。そりゃ彼女にバレたら受け容れてもらえんわなぁ。ん? 待てよ?」

「どうした?」

「じゃあ、じゃあよ……?」

「さっさと言えよ」

「一.五刀流って、どういうことだよ……?」

「いやさ、ははは。山籠りでさ」


シンイチが握るグラス。そこにシンイチと、誰かが映り込んでいる。


「埋めたはずなのに、ついて来てるんだよ……」

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