16.彼女の意思
またご主人様に逢えて本当によかったです。
わたくしは封印されて指輪と化し、数百年さ迷い続け、ついに再びご主人様に逢いました。
嬉しい、とても嬉しいです。
しかし輪廻転生を経て、ご主人様は前世の記憶をすべて失ってしまいました。
わたくしも呪詛をかけられ、ご主人様に昔のことを思い出させることも教えることもできません。
しかしながら、わたくしは全力でご主人様を守ります。
絶対ご主人様を再度、あんなに危険な目に遭わせてはいけません。
そこで、ハーレム計画を提案しました。
彼女たちにご主人様の子供を産ませる以外、わたくしもご主人様の消去された記憶を取り戻します。そうして、あの人に復讐しなければなりません。最後にご主人様をこの世界の王にならせます。
やっぱり最高です。わたくしのハーレム計画はやっぱり最高です。
わたくしはこのハーレム計画が最高だと思いますが、ご主人様は沈黙してぐずぐずしています。
どうしたらいいでしょう?
学校に行く途中、うっかりして昔のことを言ってしまいましたが、果たしてご主人様に気付かれてしまいました。
それでも、必ずハーレム計画を成功させます。
ご主人様のためですから。
◇◆◇◆◇
今日はハーレム計画を実行する二日目だ。
実行はまだ二日目なのに、もう二番目の彼女と付き合うとは、進み具合が早すぎる。
「お兄様は絶対、彼女たちを幸せにできます」
「いや、お前がそう言っても……」
ラブレターを見てもやはり割り切ることはできない。
「うんん……」
なぜ紗夜はそんなに肯定的に断言できるのか?
そして昔のこととはいったいなに?
まさか、昔、紗夜に会ったことがあるのか?
でも、印象がない……。
「うわ!」
いきなり、誰かが僕の肩を強く叩いた。
「おはよう、颯太」
僕は空の不意を突いた挨拶にびっくりしてしまった。
「びっくりさせるな、空!」
「えー〜、お前をびっくりさせるのは面白いのに」
「面白いんじゃねぇ!ったく……」
「まあまあ、なにを見てるんだ?俺に見せてもいいだろ?」
やっ、やばい!
空はラブレターに気付いた。
「いっ、いや。べっ、別になにも……」
と、冷や汗をかいた。
「……颯太の様子がおかしい。きっと何かがある」
「いっ、言ってたてば、別になにも」
ラブレターを隠したいけど……。
―――えっ?!
なぜ手が動かない?!
僕はどんなに力を出しても役に立たない、手がまだ動かない。
―――どういうわけだ?
このままの状態、ラブレターは空に持って行かれた。
「なんだこの手紙は?んん……まさか、ラブレターか?!」
「ちょっ!」
まずい!
「まっ、待て!」
立ち上がってラブレターを奪還したいが、身体も動かなかった。
ちくしょう!これは紗夜のたくらみに違いない。
空は封筒を開けて手紙を読んだ。
「やっぱ、ラブレターだ!」
よっ、読まれた……。
と、表情が固まり、うなだれ涙を流した。
「お前の恋愛運は良いんだね。いいなー、俺も女の子たちに告白されたいよ」
「……っ」
「誰が書いた?」
空はラブレターを僕に返した。
「……わかんねぇよ。署名がないんだ」
「そうだね。じゃ、お前は受け取る?それとも受け取らない?」
「……それもわかんねぇ」
空が無断に手紙を読んだことに腹が立った。これは紗夜のたくらみだとわかっているけど……。
「わかんないって、梅本さんとの関係で心が決まらないのだろ?」
空は僕の悩みを喝破した。
「うん……。なぁ、空、もしお前ならどうする?」
「もちろん、同意するよ」
「同意する?なぜ?」
「ハーレムを築くことは俺の夢だから」
「……っ」
「けどさ、やはり梅本さんと話し合うだろう。なにしろ、梅本さんは彼女だから、彼女の意思を尊重しなければならない」
確かにだ、愛乃と話し合わないと。
「わかった。ありがとな、空」
空の話は僕を元気づけた。
◇◆◇◆◇
昼休みになった。
紗夜と愛乃に腕を組まれて一緒に学校の屋上へ行く。
今日は愛乃が昼ごはんを準備する番だ。
どんな料理を準備したのかな、楽しみだ。
だが……。
「なぜお前たちも付いてくるんだ?」
そう、先輩たちも一緒に屋上へ来た。
「護衛だよ」
「ごっ、護衛?」
「兄貴たちを護衛するのは当たり前だろ?けど安心して、兄貴。俺たちは兄貴たちを邪魔しないから」
先輩たちはもう徹底的に僕の手下になったようだ。
予想外だけど、先輩たちとの喧嘩を止めることができれば、それに越したことはない。
しかし、周囲の生徒たちが未だに恐れるような目でこっちを見ながら、道を譲ってひそひそ話をしている。
少し悪いと思う。
階段を上ってドアを開けてやっと屋上に着いた。
「兄貴、俺たちはドアの外で見張り、誰かが兄貴たちを邪魔するのを止めるので安心してください」
「うん、頼む」
先輩たちは見張りに行き、紗夜はブラックホールの中からレジャーシートを取り出し、床に広げた。
レジャーシートの上に座り、愛乃は弁当箱を僕に差し出した。
「そっ、颯太様のお弁当です」
と、きまり悪そうな顔をする愛乃。
「ありがとう、愛乃」
「いっ、いいえ。どっ、どうぞ、お召し上がりください、颯太様」
「じゃ、いただきます」
合掌しながら言って弁当箱を開けたら、うなぎ天ぷら弁当だ。
美味しそう。と、見ただけでよだれが垂れた。
天ぷらを挟んで食べた。
―――うまい!
この天ぷらは、外はサクサクで中はフワフワだ。うまくてほっぺたが落ちそうだった。
また一つを挟んで食べると……ラブレターのことが頭に浮かんだ。
「なぁ、愛乃……」
「どっ、どうかしましたか、颯太様?おっ、お弁当は美味しくないですか?」
「いえいえ、美味しいよ。ただ一つ、気になることがある」
ラブレターを愛乃に渡した。
「こっ、この手紙は何ですか?」
「ラブレターだ。実は僕、今朝このラブレターを受け取った。ごめん!教えなかった」
頭を下げて謝り、愛乃にラブレターのことを教えた。
「とても面白い!」
「読み続けたい!」
「更新を期待です!」
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白皇 コスノ 拝啓




