15.ラブレター
ちょっと……みなの目つきが……。
学校に行く途中、周りの生徒たちが道を譲りながら驚きの眼差しで僕たちを見ている。
先輩たちと一緒に歩いていることに驚いているようだ。
「あの、紗夜」
「はい、どうかしましたか、お兄様?」
「なんで僕を先輩たちの兄貴にならせたの?」
僕が先輩たちの兄貴になるなんて思いもよらなかった。
そして生徒たちの前を愛乃と紗夜に腕を抱かれながら歩くのも恥ずかしい。
「わたくしはお兄様がハーレムを作るほかにも、私的勢力を盛り立てなければならないと存じますから」
「……わっ、分かった」
計画のため、紗夜に従わざるを得ない。
紗夜の能力は強大すぎる、ほとんど万能だ。
……そうだ、僕はその力を利用して両親についての記憶を思い起こさせることができるだろう。
両親に会いたい。紗夜に父と母を僕に会わせることを要求できるけど、彼らの仕事を邪魔したくないから、様子だけを知ればいい。
「なぁ、紗夜。僕に父と母についての記憶を思い出させてくれるか?」
「……っ」
急に紗夜の表情が暗くなった。
「すみません、お兄様。わたくしはお兄様の記憶を変えることができません……」
「えー?」
紗夜が僕の記憶を変えるのができないことにびっくりした。
「なぜ?」
「理由は、理由は……理由はわかりません」
言い淀む紗夜。
「でも、本当です。ただお兄様の記憶を除いて外見・生理など、わたくしが改変できます」
紗夜は真剣な顔で僕を注視した。
そっか、改変できないか……。
少し悲しい。
しかし、なぜ僕の記憶だけを改変できないのか?
「もしもわたくしがご主人様に昔のことを思い出させることができれば、よかったのですが……」
紗夜が囁いた。
呼び方もご主人様と変えた。
「なに?」
「いっ、いいえ、なんでもありません、お兄様」
なんでもないじゃねぇか。紗夜は僕に何か隠しているに違いない。
どういう意味だ、その言葉?
……多分、紗夜がこの計画を実行する目的と関係があるだろう。
◇◆◇◆◇
学校に到着した。
靴箱を開けて内履きに履き替えようとした時……。
中に手紙のような物が入っているのを見つけた。
靴箱からその手紙を取り出した。
なんだこれ……まっ、まさか、ラブレターか!?
何度も確認して、やはりこれはラブレターだと思った。
初めてラブレターをもらった。
このラブレターにも計画が……?
「兄貴」
突然、霧嶋先輩が僕を呼んだので、すぐにラブレターを背後に隠した。
「はっ、はい」
心臓が早鐘のように打った。
「俺たちは先にクラスに行くから」
「わっ、分かった」
「じゃな、兄貴」
「うっ、うん、じゃな……」
先輩たちと別れた。
あっ、危ない……。
冷や汗をかいた。
「どっ、どうしましたか、颯太様?だっ、大丈夫ですか?」
「なっ、なんでそう聞くの、愛乃?」
「だっ、だって、颯太様の顔色が悪いからです」
「いっ、いいや、別に……」
苦笑した。
このラブレターは絶対に愛乃に見られてはいけない。
「心配しないで、愛乃、僕は大丈夫だ……」
こっそりとラブレターをポケットに入れた。
「ほっ、本当に大丈夫ですか?」
「ほっ、本当だよ……。さあ、授業がすぐに始まる、早く行こう」
愛乃は依然として心配そうな表情で僕を見ている。
……どうしよう?
愛乃の心配を落ち着けないと。
そのために、僕は愛乃を抱きしめた。
「僕は本当に大丈夫だよ。だから、心配しないで、愛乃」
優しい口調で言った。
このまま数秒後、愛乃の心配はもう消えた。
「さて、行こう」
「はっ、はい!」
と、手を繋いだ。
僕たちの教室は三階にあるので、一緒に行く。
愛乃は天使のような微笑みを口元に湛えた。
僕も微笑んだ。
三階で愛乃と別れ、僕と紗夜は自分たちの教室へ向かった。
◇◆◇◆◇
教室に入って自分の席に座った。
ポケットからラブレターを取り出して見つめている。
果たして誰がこのラブレターを書いたのか気になった。
だが、「開けるのか?それとも開けないのか?」と躊躇した。
「紗夜、このラブレターも計画の一部か?」
「そうですよ」
「……僕は必ずハーレムを作らなければならないのか?」
「はい」
「……っ」
計画である以上、「開ける」を選んだ。
ドキドキしている。
封筒を開けて読む。
『初めまして、松岡 颯太先輩。突然のお手紙で申し訳ございません。松岡先輩は、私のことをご存じないでしょうけれど、私は存じ上げております。初めて松岡先輩を拝見した時から、毎日松岡先輩のことばかり考えています。それに特別な気持ちが私の心の中に生まれて……。ちゃんと声をかけなければならないと思っても、やっぱりできなくて……だから、私は勇気を出して手紙を書くことにしました。先輩のことが好きです。私と付き合ってください。良ければ放課後、学校の屋上へいらっしゃってご返答をいただけませんか?お越しになるまで、ずっと先輩をお待ちしております』
読めば読むほど、恥ずかしく思った。
でも、このラブレターには署名がない。誰が書いたのかわからない。
僕を先輩と呼んでいる……一年生?
「名前がないな。誰が書いたのかわかる、紗夜?」
「はい。彼女は一年5組の雨ヶ谷 千萌、十五歳、誕生日は五月二十七日、血液型O型、性格は明るくて活発です。おっぱいはCカップですけど、成績は優れており、容姿も美しい。お兄様のハーレムの成員の一人です」
「……っ」
うつむいて、黙り込んだ。
同意するのか?同意しないのか?
計画なので僕は必ず「同意する」を選む。
でも、愛乃と付き合ったばかりで、またすぐほかの女の子と付き合うのは、ちょっと無理……。
「大丈夫です。お兄様は絶対、彼女たちを幸せにできます」
紗夜は肯定的に断言した。
「とても面白い!」
「読み続けたい!」
「更新を期待です!」
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白皇 コスノ 拝啓




