11.同居が始まり
やばいと僕は冷や汗を流し始めた。
知恵を絞って愛乃に紗夜には特殊な能力があることをわからせる方法を探している。
なにが……あっ、あった!
「……おっ、恐れないで。それはただの奇術だよ」
「……きっ、奇術……ですか?」
「ああっ。愛乃は空の袋から物を取り出す奇術を見たことがあるか?」
「あっ、あります、颯太様……」
「そっ、それはあの奇術の袋の中にある神祕な空間だ、どんなものを入れてもいいぞ……ほら」
僕は手をそのブラックホールの中に入れ、数秒後、手を引き出した。
なんて言い方だ!ばかげている、僕は!こんな言い方では愛乃を納得させることはできない!
神様に祈るしかない、愛乃が僕の話を信じてくれるように。
「そっ、そうですか!とてもすごいですね!さっ、紗夜様は奇術師ですか?」
……えっ!愛乃が信じたなんて……。待て。まさか、愛乃は天然ボケだか?
……まぁいい、紗夜の精霊のことがばれないで本当によかった。
僕はほっとした。
「そう、紗夜は小さい時からずっと奇術を勉強しているんだ」
「さっ、さすが紗夜様です」
ちょっと苦笑した。
「愛乃様、すべての私物を入れても差し支えございませんわよ。これには無限に入れることができますから」
「はっ、はい、ありがとうございます、紗夜様」
「なぁ、愛乃、僕は一つのことを思い出したけど……」
「いっ、言ってください、聞きますから、颯太様」
「うん、愛乃が僕の家に引っ越したら、アパートの賃貸契約を解約しなければ。でも、途中で解約しては、違約金があるんじゃないのか?」
「……そっ、そうですね。すっ、すみません、颯太様。私は颯太様の家に引っ越すことができて嬉しさで一杯になり、そのようなことまでは思いが至りませんでした……」
愛乃は悲しい顔をした。
紗夜は計画に対する執念が深く、どうしても愛乃を僕たちの家に引っ越させる。違約金のことを解決しなければ、紗夜は引っ越すことに対して絶対にこのままでは済まさないだろう。
「安心しろ、愛乃。その違約金は僕が払う」
「いっ、いいや、そんな、颯太様……」
「大丈夫だよ。愛乃のためにお金を使うのは、何より価値があると思う」
愛乃の顔は赤くなった。
「……あっ、ありがとうございます、颯太様。颯太様に散財させて申し訳ございません」
「いいや」
「お兄様、実は違約金を払わなくてもいいですわよ」
お金を使わなくてもいい、どういう意味だ?
愛乃も疑惑の表情を見せた。
突然、紗夜の能力の一つ、記憶改変を思い出した。
そっか、記憶改変を使えばいいんだ。大家さんの記憶から違約金の件を消し去ればいい。そうしたら、愛乃が引っ越せるだけでなく、違約金を払わなくてもいい。一石二鳥だ。
「愛乃、実は紗夜にはまだ一つとてもすごい奇術がある。その奇術は記憶改変と呼ばれる」
「きっ、記憶改変ですか?この奇術の名称はかっこよさそうに聞こえます!」
「そう、文字通り、記憶を改変できるよ。そして奇術をかける対象は大家さんだ。大家さんの記憶を少し改変し、違約金のことを忘れさせることができる」
「わっ、私はその奇術を見たいです」
「わかりました。では……」
言い終わると、紗夜がまた指をパチンと鳴らした。
何も起こらなかったように見えたが、紗夜の能力はもう大家さんの記憶を改竄したはずだ。
「愛乃様、大家さんに電話してみて奇術が成功したかどうか確認してください」
「はっ、はい」
愛乃はスマホを取り出して大家さんに電話をかけた。
間もなく、電話がかかった。
「あっ、あの、大家さんはいらっしゃいますか?」
『はい、私ですが……』
しっかりした女の声だ。
「わっ、私は愛乃です。私は引っ越しますので、アパートの賃貸を解約したいですけれども……」
『そうなんですか、構いませんよ』
「でっ、でも、解約するなら、違約金がありませんか?」
『いっ、違約金?なんですか、それは?』
大家さんの返事は愛乃を驚かせた。
「いっ、いいえ、なんでもありません」
『そうですか……。愛乃さん、引っ越しが完了したなら連絡してください。私に部屋の鍵を返してくださいね。じゃあ、よろしくお願いしますね。さようなら』
「はっ、はい、さようなら」
愛乃は電話を切った。
違約金のことを忘れたのではなく、記憶の中にないのだ。
僕の予想とは違ったが、愛乃を助けて違約金を払うのを免れさせることができた。
「どう思う?」
「さっ、紗夜様の奇術はとても素晴らしいと思います」
それは奇術じゃないけど……まあ。
「善は急げ、愛乃、早く荷物をまとめて!」
「かっ、かしこまりました」
僕たちは荷物をまとめ、愛乃の身の回り品を全部そのブラックホールに入れ、ちょっと部屋を掃除し、アパートを離れて僕の家に戻った。
当然、紗夜と愛乃は僕の両腕をそれぞれ抱きしめて楽しそうに話している。
僕はやっばこのハーレム計画について少し腑に落ちない。
吉田に復讐したいのなら、なんとか彼女を攻略した後、彼女を振ればいいじゃないのか?しかし、どうしてハーレムを作らなければならないのか?それに精霊とは一体なんだ?僕にとって敵なのか、それとも味方なのか?
「どっ、どうしましたか、颯太様?」
「なぜそう聞くの?」
「なっ、なぜかというと、颯太様の表情が後悔しているように見えたからです」
「いいや、僕はただ愛乃のために歓迎会をやるかどうか考えているだけだ」
「かっ、歓迎会なんて結構です、颯太様。なんといっても、颯太様の家に引っ越すのは私自分で決めたことですから。そっ、それに颯太様がこんなに優しいのは、私が颯太様を好きになった理由です!」
愛乃は僕の手を抱きしめて笑みかけ、思わず顔を赤らめた。
気がついたらもう家に着いた。
「あっ!着いた」
「こっ、これは颯太様の家……おっ、大きいです、お城みたいです」
確かにちょっと大きすぎるけど、三人で住むのならちょうどいいだろう。これからの生活は幸せなものになるに違いない。
「さあ、入ろう!」
「はっ、はい!」
「はい」
こうして愛乃との同居生活が始まった。
「とても面白い!」
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白皇 コスノ 拝啓




