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02 セクハラシステム音と中二病の幼馴染

「ぁやっ・・・これは!ポ、ポーズを決めてたの!」

「ポーズ?あれか、ヨガみたいに何とかのポーズか?『露出狂のポーズ』とかか?」



 どこの部位に聞くんだよ、そのポーズ。



 《主に、ゆーきの下半身に効果がありまーす☆》

 《おまえハラスメントがどうの言ってるけど、自分が一番ハラスメント発信してるからな?》



 ひっどいわこいつもう。

 全然うまいこと言った感じじゃないから、わざわざ思念体出してドヤ顔やめろ。

 中身完全におっさんだわ。



「ちがう!ちがうぞー!ゆうちゃん!こう、ゆうちゃんが玄関の扉を開けたら、ばばーんと登場シーンをキメるためのかっこいいポーズだよ!」

「・・・パンツ露出させるのがかっこいいのか?」

「それは忘れてぇー!私だって恥ずかしかったの!勢いで乗り切ろうとしてるの!」



 それなら少しはこりて今後の行動も鑑みてくれ、幼馴染よ。



「ほんとはこう、マフラーとかマントとかあればよかったんだけど。やっぱりはためかせてるものを身に着けているのといないのとじゃ全然違うじゃん?」

「だからスカートをはためかせていたと?そんなにやりたいならマフラー巻いてくればいいだろ」



 もう春先で周囲から浮くかもしれんが。



「この時期でも合わないことはないけど、今年は安易なマフラーはダウントレンドなんだよねー。ゆうちゃん。ファッションに疎いとモテないゾ?」

「すっごい腹立つ流れでマウント取られたんですけど」

「だって、ゆうちゃんの選ぶ服ダッサイんだもん。いつも見かねて私がコーデしてあげてるじゃん」

 《あっちにいた時もパーティーメンバーに呆れられてたよね~。あ、ちょっw魔神倒した時の鎧の下にあんなダッサイ服着てたと思うとホント草。ヤバイこれ、ツボw》



 何なんだちくしょう、この女ども。



美弥子(みやこ)さんに選んでもらえばいいのに」

「17にもなって親に服選んでもらう方がダサいわ」

「大丈夫だよー。美弥子さんと買い物行ったって姉弟にしか見えないってー」

「親に服選んでもらうことに変わりはないだろうが」


「そう・・・お母さんとショッピングするのはそんなに恥ずかしいことなのね・・・?スン」

「母さん!?あいや、違くって―――!」



 いつの間にか玄関先に出てきた母さんおなだめていると、視界の端でゆうがこっちを見てにやけている。

 野郎・・・いるの知ってて言わせたな。



「昔は勇貴のほうから手、つないでくれてたのに・・・」

「子供の頃だから!それ、本能的なやつじゃん!」



 この状態の母に俺が成すすべは何一つとしてなく。



「わかった!今度の休み行こう!一緒に!」

「あらほんと?」



 コロリと態度を一変させる母。

 将来女の涙に騙されない為の良い訓練になりそうだ。

 そう思わないとやってられない。



「美弥子さん、おはようございまーす」

「優菜ちゃんおはよー。今日も違う色のカラコン着けてるのね?」

「ふふふ。流石美弥子さん、目の付け所が違いますね、カラコンだけに!闇より出ずる罪深き紫炎・・・・そんなイメージで着けてみました!」

「優菜ちゃんはオシャレねー」

「母さん。そいつのそれは『中二病』のセンスだから」



 こいつ。

 幼馴染の『広瀬(ひろせ) 優菜(ゆうな)』は言動や行動がほのめかしている通り、中二病患者だ。インドアなタイプでなく、やたらアクティブなタイプの筋金入りだ。


 そのくせ今どきの女子高生らしく流行りものにはいっちょ前に敏感で、ファッションセンスがとても良いらしく(俺には良くわからない)その人懐っこさと、周囲の人を引き付ける底抜けの明るさ、人間関係で最も大事な適切な距離感。

 それらを全部周到した天性の人たらし。


 更にはその容姿、スタイル共に非の打ちどころはなく、無駄に身体能力も高い。


 まぁ・・・唯一、勉学だけは俺に泣きついてばかりだが。


 そんな彼女が身に着けるものはしばらくするとクラス内でプチブームとなり、それを見た他のクラス内でもまた同じ現象が起き、果ては学園全体へと影響を及ぼす。

 という事がたまにあったりするほどに、人気者という事だ。


 中二病独特の奇行や発言も平気でするのに割と周囲には受け入れられている。まったくもって謎である。


 学園全体に催眠でもかけてるのかと疑いたくなる。


 ま、あの学園の連中も少しおかしいのかもな。



 《あー笑った笑ったー・・・あれ?ママンじゃん。どしたの?》

 《ああ。そういえばなんで出てきたんだ?・・・あとおまえ、今日はスイーツ禁止な》

 《えーっ!なんでーーー!?》



 人のセンスを馬鹿笑いするからだ。

 そんなにひどくないやい。



「で、母さん。外出てきてどうしたんだ?」

「え? ああ、いけない。優菜ちゃんと話し込んで忘れる所だったわ」



 幼馴染の紹介をモノローグで済ませている間、ゆうと何やら世間話をしていたようで。

 思い出したように手を叩く。



「お弁当。忘れてるわよ」

「あー、ありがとう」

「いいなー、美弥子さんの料理すごくおいしいから、ゆうちゃん。お昼の時ちょっと分けてねー」

「お前のちょっとは広範囲すぎんだよ」

「我が魔道の糧となる事を光栄に思うがいい・・・」

「それ俺に言われてもな」

「今度、優菜ちゃんにも作ってあげる」

「やった♪」

 《ゆーきもママンの器量を見習いなさいよー!ひいては、先ほどのスイーツ禁止令の撤廃を願います!》

「あ、急がないと遅刻する」



 なにやらキャンキャン言うとるが無視だ無視。



「わ!ほんとだ!急がないと!飛ぶが如く!」

「おまえの中二キャラ安定しないなー」

 《あーん!ゆーきー!あたしの唯一の楽しみを奪わないでよー!》

 《あほか!被害者ヅラすんな!》

「いってらっしゃーい」



 はっちゃけシステム音をあしらいつつ。



「「いってきまーす」」



 中二病で無駄にハイスペックな幼馴染と、



「『韋駄天』の通り名で恐れられたこの私に、ゆうちゃんついてこれるかなぁ~?」

「ぬかせ。てか初めて聞いたわそれ」



 学園への道を踏み出した。

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