プロローグ
「私、とある世界を救ってこっちに帰ってきたの」
って知り合いに言われたらどうする?
俺ならその言葉の真意を疑う前に、そいつの正気を疑うね。
「その証拠を見せるよ―――」
とか言って意味ありげに道端の廃車に手をかざして、結局何も起こらなかったらどんな空気になると思う?
いいからもう休め、と色々痛むのをこらえつつ諭すよな。
「そんな、力が失われてしまったというの・・・!?」
などと、尚も自分が作り出した虚構の設定を演じ切ろうとする姿を見て何を思う?
…………
呆れてしばらく距離を置くって?
そうだな、それが正解だ。
たとえそれが大切な幼馴染であったとしてもそうする。
だから―――
《はいはーい。呼んだ―?あたしの声が聞きたくて呼んだかなー?》
《いいから、早くやってくれ》
《いいのかなー?この世界じゃ異常な力なんでしょー?ばれたら浮いちゃうよー?》
《だからバレないように、ほんの少しだ。偶然かと思う程度にあの廃車を軋ませてくれ。それであいつは少しの間虚構に浸っていられる》
《もーっ。相変わらずあの幼馴染ちゃんには優しいんだから。妬けちゃうぞ?》
《やかましい!はやくしろ!》
《りょ!》
俺がこれからする行動は―――
「―――なぁ。ゆう、試しにもっかいやってみたらどうだ?」
「ゆうちゃん・・・ふふっ、さすが我が宿命の友。私の秘められた力を見初めたか!いいだろう!我が呼びかけに応え顕現せにゅっ・・よ!」
思いっきり噛みながら廃車に向かって手をかざすと。
《ぶぷーーーっ!!》
「「―――え?」」
《・・・・あ》
何100キロもあるサビだらけの廃車は、目に見えない圧力によって宙を舞い。
《・・・オイ》
《あーっと・・・幼馴染ちゃんが大事なところで噛むもんだから、思わず吹き出して力入り過ぎちゃった☆》
落下すると轟音を上げ大破した。
「ぇぇえぇえぇえぇええーーーーー!!?」
「あ、ほ、かぁぁあぁーーーーーーーーー!!」
異世界帰りで、現代社会の倫理観を取り戻しきれていないこの時の俺のこの行動は、
「・・・め・・・めめ・・・め」
「ゆ・・・ゆう?」
《め?目?なになに?》
「覚醒した-------!!!」
まったくもって軽率以外の何物でもなかった。
《お前これどうすんの?》
《嬉しそうだからいいじゃん。ていうかー?ゆーきがやれって言ったんじゃん》
《スイーツ三日間禁止な》
《ごめんなさい!ごめんなさいぃ!あたしが悪かったですー!》
「ふおおおおお!!!」
「・・・はぁ」
女子らしからぬ歓喜の雄たけびを上げテンション爆上げの幼馴染の姿を見て。
《二日間にまけてやる》
《鬼!悪魔!勇者!!》
まぁいいか、という短絡的な感情と。
「ゆうちゃんっ!見た?見た!?今のすっごーーーい!」
「―――突風でも吹いたんじゃないか?」
「そしたら私たちだって飛ばされてるよー!」
「じゃああれだ。宇宙人のキャトりミス」
「いたの!?宇宙人!」
《え、なにそれ。現代にもそういう異種族いるの?じゃあ魔法なんて珍しくもなんともないじゃーん☆》
《やっぱ三日な》
《剛力無双!神速!極魔!剣聖!》
《さっきからそれ貶してるのか?ていうか間違ってもそんなスキル使うなよ!?》
取り戻した日常が急速に変化していくような予感を感じていた。
更新したり。
しなかったり。