ガスマスク少女、アイドルの本分
「は……? おい、ガスマスク女。今僕に何か言ったか?」
「言ったわよ。『私の耳は貝の殻 海の響きを懐かしむ』ってね。さて、もう一回ガスマスク被らせてもらうわね」 カポッ
「いやだから、それはいったい何なんだって!! その詩を僕に向ける意味は何だ!!」
「……あなたがここまでして取り戻したかった太鼓の鉄人ブームは、こんな無機質な音を奏でていたんでシュコか?」
「どういう意味だよ……」
「あなただってきっと分かっているはずでシュコ。ここにいるお客さんたちは『ドゴンだ―』ではない、ただただあなたに太鼓を無理やり叩かされているだけの人たちでシュコ。彼ら1人1人が叩く太鼓に、あなたはその郷愁とも言えるかつての太鼓の鉄人ブームの空気を、音色を感じられるんでシュコか?」
「……ははっ。意味が分からないな。それに、詩との関連は? ただのカッコつけか? 詩なんて引用して臭いやつだな、お前」
「……本当はあなたにも分かっているハズシュコ。今あなたの貝殻に響いている海の音は、本当にあなたの知っている波音でシュコか? ――あなたの、あなた自身の懐かしめる『音』でシュコか?」
「……うるさい!! 分かったような口を利きやがって! いったいお前に僕の何が分かるというんだ!! 青春時代の全てを太鼓の鉄人に捧げて、それだけを生きる楽しみに、支えにしてきた僕の何がッ!!」
「……あなたの過去なんて私は何も分からないシュコ。そんな私にでも少しだけ分かることがあるとすれば、それは時は戻らないこと。そして、過去は取り戻すものではなく、振り返り未来の糧とするべきものだという事でシュコ」
「未来への糧だと……? はははっ、なら余計に僕には不要なものだっ!! 僕には望む未来なんてないんだから!!」 ユラユラ
「うむっ!? ゲヘナ、下がれっ!! あやつのマンガー・フォースの動きが怪しい! 陽炎のようにユラユラと背後の黒い靄が揺らめいておる!!」
「……分かったシュコっ!」 シュバッ
「カツジ、最音の様子がおかしいぞ。ブツブツと何かを呟いているみたいだ」
「うーん……もしかして私、何か地雷を踏み抜いちゃったシュコ?」
「……全部、全部、全部っ!! 悪いのはお前らで時の流れで僕の敵たちでっ!! 待ってるものなんて何も無い未来なんて、ぜんぶぜんぶぜんぶっ!! 僕の待ちに待ち続けた過去で塗り潰してやるんだっ!! 太鼓の鉄人のブームが帰ってくれば、もう1度!! もう1度僕は……」 ユラァッ シュゥゥゥー
「なっ! 消えたっ!?」
「最音が見えなくなったでシュコ!!」
「気をつけろ! あやつはまだここにいるぞ!! マンガー・フォースの気配は消えていない!!」
「マズいぞ、カツジ。俺の『言の葉』は、俺が完璧にイメージできたことした現実に反映できない! だから最音の姿が見えなければゲヘナちゃんの時のように『言の葉』を届けることができない!!」
「くっ!! そうか、相手も私たちへの対策は万全だったということだな!!」
「カジェちゃん! 私たちいったいどうしたらっ!」
「うむ、壁を背にして一箇所に固まるぞ! そうすれば最低限、攻撃は前からしかこないっ!!」
「カジェちゃん頭いい!!」
「そしてヨシタロウよっ! 時間を稼いでくれ! 私に秘策がある!」
「わかった!!」
――スゥッ ズォォォオオオッ
「なっ! いきなり目の前に呪鞭がっ!! ――"守れ"っ!!」 ガキィンッ
「――倒れろよ。早く早く早く!! 倒れろ倒れろ倒れろ倒れろ倒れろ倒れろ倒れろ倒れろ倒れろ倒れろ!!」 ゾゾゾゾゾォォォォォオオオッ!!
「前触れもなく床全体から細い呪鞭がイソギンチャクの触手のように無数に伸びてきたっ!? くっ!! ――"防げ"っ!!」 ガガガガガガガガガガガガガッ!!
「ウググググッ!! 1本1本は細いのなんていう衝撃だっ!! アイツ、いったいどこにこんな力を持っているんだ!! もう太鼓の鉄人のプレイは止まっているのに!!」
「好太郎っ! おそらく最音は儀式で溜めておいたマンガー・フォースと共に、自分の身を削ってマンガー・フォースを行使しているシュコッ!!」
「なっ!? 自分の身を!? それってもしかして!!」
「そう、私の時と同じシュコ。だからこのままじゃ……!!」
「疲れ切った最音の体をマンガー・オーブが乗っ取るかもしれないってことか……!!」
「カッジェ!! 秘策というのは後どれくらいで出せるシュコか!? 時間がないシュコッ!!」
「分かっておる!! もう少しだ、しばし耐えてくれ!!」
「倒れろ倒れろ倒れろ!!」 ゾゾゾゾゾォォォォォオオオッ!!
「耐えてくれよ俺の『言の葉』!! 」 ガガガガガガガガガガガガガッ!!
「しかし声は聞こえるのに相手の姿が一切見えないなんて!! カツジの秘策っていったい……」
「おぬしら、待たせたな!!」
「カジェちゃん!! 用意はもう大丈夫なの!?」
「うむ、充分魔力が溜まった!」
「急ぐシュコ!! 早くしないと最音が!!」
「分かっておる! ヨシタロウ、『言の葉』での守りをそのままに内側からこの短冊を外に投げることは可能か!?」
「やったことないから分からんけど……何とか調整してみせる!! それよりも早く!! もう持たない!!」 ガガガガガガガガガガガガガッ!!
「よし、ではいくぞ!! ハァァァアアアッ!!、"勅撰和歌集・――"」 シュォォォオオオッ
「わっ!? カジェちゃんの手に持つ何枚もの短冊が金色に光り始めたっ!?」
「"金葉"ッ!!」 シュババババッ!!
「金に色づいた短冊が俺の『言の葉』をすり抜けてっ――」
「――正面から、ズレたシュコよっ!? それぞれ店の四方八方、目の前からしたら明後日の方向シュコっ!! 外したシュコか!?」
「いや、これでいいのだ!!」 ペタペタペタッ!
「カツジの放った短冊が、店の四方の壁へと貼り付いたぞ!?」
「ゆくぞっ!! 輝け短冊!!」 パァァァアアアッ!
「短冊から金色の胞子のようなものが出てきたシュコッ!! それが充満して、フロアの空気がゴールド調に染まっていくシュコっ!!」
「ふんっ!! それがどうしたっ!! 何をしたって僕の攻撃を止めることはできないっ!!」
「私の魔法が空間を彩るだけなわけあるまい!! 金葉よっ!! 偽りを照らし上げるのだ!!」 ファァァアアアッ
「短冊から放たれた金の胞子が、イソギンチャクのような呪鞭の中心に集まっていくシュコっ!!」
「それだけじゃないみたいだよっ!! 大きな塊になった金色の光の中から何かが浮かび上がって――」
「――なっ!? 僕の体に金の胞子がくっついて、姿がっ!!」
「――見えたっ!! カジェちゃんっ!! 最音の姿が見えたよっ!!」
「うむ、今の内だヨシタロウ!!」
「ああっ!!」
「ふん、させるかよっ!! 僕自身が心を強く保てればそんな言葉ごとき――」
「――最音っ!! あなたがやろうとしているのは『心を強く保つ』なんてことじゃないシュコッ!!」
「――ッ!! なんだよ、またお前かよ!! ガスマスク女め、そんなに僕にいちゃもんをつけたいのかっ!!」
「あなたはただ自分から、自分の心から頑なに目を背けているだけシュコッ!! 保っているわけじゃない、見て見ぬふりを必死で続けているだけシュコ!! 私には分かる!! あなたと同じだったから、きっとあなたと同じで本当に欲しい結末とその過程が悲しく入れ違いになってしまっていたから!!」
「ッ!! だから!! 何でそんなに分かった風に僕を語る!? さっきも言ったぞ!? いったい僕の何をお前は分かるんだと!! お前は『何も分からない』と、そう答えたじゃないか!!」
「私は少しだけ分かることがあると言ったシュコよ。過去は振り返り未来の糧とするものだということ、そしてもう1つ」
「……何だよ、言ってみろよ!! お前なんかに、お前たちなんかに理解できるはずなんて――」
「――分かるシュコよ。あなたがとても寂しがっていることくらい」
「――!! 何だよ……何だよそれっ!!」
「洗脳されていた間、ボヤけた意識の中で見たシュコ。次第に増える『ドゴンだ―』の1人1人の顔を覗き込んでは落胆していたあなたを。壁にもたれかかりながら哀しそうな表情でプレイを見ていたあなたを。あなた、本当は誰かを待っていたのではないシュコか?」
「……僕は…………」
「……好太郎、お願いするシュコ」
「ああ、最音。お前が本当に求めていたもの、欲していたものを――"思い出せ"!!」
「(――?)」
「(――ここは、いったい……? 一面の青、水の中にでもいるように、自分の体が遅く沈んでいくのを感じる……ああ、そうか。僕はあの男の『言の葉』を受けて、自分の内面に潜っているのか)」
「(……沈むままに体を任せていたら、いつの間にかヘドロのように黒くドロドロした記憶が、映像となって辺りを漂っている。流れているのは、クソみたいな学校の記憶だ)」
「(何の拍子だったのか、そんな下らないことは覚えていないが、教室の生徒たちによって僕は居場所を無くされている。1人で、周りにクスクスと嘲り笑われながら、僕は汚い机に向かってただ座っている。自分と他の人たちとの間には何故こんなにも壁があるのだろうか、何故自分だけがこんな目に遭うのだろうか、そんなことばかり考えていた。そして、この日もニヤニヤと気味の悪い笑顔を浮かべながら僕の席に近づいてくる男子生徒の集団……)」
「(ああ、そうだった。いつもの暴力の後、リアクションが悪くなったなどと難癖をつけられて、僕は無理やり3階から飛び降りさせられたんだった。それがちょっとした問題に取り上げられて、色々あった。そんなこと本当にどうでもよかったから、その後の学校での色々な出来事は僕にとって他人事だ。当然、折れた足の骨が元に戻ってからも僕は学校に行かなかった)」
「(ああ、漂うヘドロを突き抜けたようだ。沈んだ体の上方にそれが遠く霞んでいく……)」
「(……そして今度は何だろうか? 辺りを細かな泡が覆って、そこに今度は違う光景を映し出し始めたぞ……)」
「(その映像の中で僕は、まだ太陽の高い時間に秋葉原にいる。学校に行かなくなってから僕は人目を盗んでゲームセンターに行くようになったんだ。そして太鼓の鉄人に出会って、夢中でそれを叩き続けていた。ドゴンという音と共に画面で弾ける太鼓のマークは、僕の心のモヤモヤをプレイしている間だけ忘れさせてくれたんだ……)」
「(プレイが終わった後、僕に話しかけてくれた人たちがいた。『上手いね』、『良かったよ』、『一緒にやろうぜ』。そんなちょっとしたキッカケだったけど、いつの間にか僕と彼らは行動を共にするようになった)」
「(僕は学校にいた時の自分とはまるで別人のように明るく話せるようになっていた。冗談を言い合い、中身の無い会話で笑って、毎日を笑顔で過ごす。その時の僕はもうどこにも壁なんか感じなくなっていた)」
「(しかし、次第に僕と彼らが会う回数は減っていく。彼らは他にも趣味を見つけたようで、1人また1人とゲームセンターに現れなくなってしまった。最後に残ったのは僕1人。行列のできない太鼓の鉄人を、腕が痛くなるまでプレイし続けた。狂ったように太鼓を叩きつづけていた。まるで誰かに見つけて欲しいとばかりに……)」
「(ゲームセンターの雑多な音だけが、僕の耳へと無機質に響く……)」 ――ストッ
「(うん? 背中が何かにぶつかった……。ああ、体はすでに僕の内面の底へと辿り着いていたみたいだ。仰向けのままに目をボンヤリ開けていると、暗くて寂しい過去の光景がさながら梅雨の季節の曇天のように僕の上を覆っているのが見える)」
「(どうしたって、僕の未来は行き止まりにしか見えないや……)」
「(……僕はやっぱり過去を取り戻すしかない。だって縋るものがそこにしかないんだか――)」
「――そんなことはないシュコッ!!」
「(――! 声が、聞こえる……? これはあのガスマスク女の……?)」
「もう一度必ず会えるシュコ!! それは決して過去なんかじゃなくて、これからあなたを待つ未来でっ!! 」
「(――嘘だ。噓っぱちだ……。僕は学校を辞めて、すでに未来を棄てているんだから)」
「だからそんなことはないシュコッ!! あなたが棄てたなんて思っていても、未来はいつだってあなたを待っているシュコ!!」
「(そうかもな。でも、それはきっと地獄のような現実に決まっている。自分の進まなきゃいけなかった道に背中を向けて、それでも太鼓の鉄人を通じて友達ができたのは物凄い幸運で――。こんな僕に、きっとそんな奇跡は2度と起こらない――)」
「――起こる!!」
「(――!? 何でそんなに言い切ることができるんだ……)」
「あなたに友達ができたことは単なる幸運でもなければ奇跡でも何でもないシュコ!! あなたと、他の誰でもないあなたと友達になりたい人たちがいたからなんでシュコっ!!」
「(!!)」
「あなたの良いところを見つけてくれる人はきっとこの先もたくさんいるシュコっ!! 人生なんて出会いと別れの繰り返しでシュコから、あなたにどんな悲しい別れがあったにせよ、次はまた新しく嬉しい出会いが待ってるに決まってるシュコよっ!!」
「(でも……でも!! 本当にそんな出会いがあるかなんて分からないじゃないか!! )」
「分かるっ!! だって今日からは私があなたの友達になるでシュコから!!」
「(なっ――)」 ピシィッ
「―― ふざけた真似をしてくれる…… ――」
「……う、うーん……僕はいったい……」
「目が覚めたようでシュコね」
「お前……ガスマスク女! うん? お前1人か? それに、なんだ!? 辺りがマンガー・フォースで包まれている!?」
「―― ふん、我が今まで溜めておいた力を全て注ぎ込み貴様の周辺のみを外界から隠ぺいしたまでだ ――」
「マンガー・オーブ!! いったいなんでそんなことを? お前だけだと力を保ち続けられないから今まで僕を媒介にして力を発揮していたんじゃないのか!? それに、僕の周辺だけを隠ぺいしたというなら、何故ここにガスマスク女がいる!?」
「―― 緊急避難のようなものだ。貴様があの『言の葉』使いの手に落ちようとしていたからな。そのせいで残りの力も大分少なくなってしまったぞ。そして、そこのガスマスク女は隠ぺいするまでの僅かな間に我と貴様の間に割り込んできたのだ ――」
「ガスマスク女、お前なんていう無茶をっ」
「無茶でもやらなきゃいけなかったシュコよ。……恐らくこれからマンガー・オーブは、あなたの体を無理やりにでも乗っ取るつもりシュコからね」
「僕の体をっ!?」
「―― 仕方がなかろう。貴様の心の闇には迷いが生じてしまっている。我が全力を発揮するにはそれでは不十分。貴様にはこれより我が力を振るうための意思のない媒体として活躍してもらう ――」
「――私がそれをさせるとでも思っているシュコか!?」 バッ
「ガスマスク女……! 何故そんなに体を張ってまで僕のことを庇う!? 僕はお前たちの敵だし、お前に酷いことだってしただろう!」
「――ゲヘナちゃんっ!! 聞こえるかー!! 無事なら返事をしてくれー!!」
「ほら、僕たちを取り囲んだマンガー・フォースの外側でお前の仲間たちが心配しているようだぜ! 僕を心配してるやつなんていない。この状況を招いたのも全部僕自身のせいだからな、心配される道理もないわけだ……」
「――あなたの目は節穴シュコか?」
「えっ……?」
「あなたの心配をしてる人間なら、少なくとも1人はいるシュコよ。私が何のためにあなたの前に立っているか、それくらいは理解して欲しいシュコね……」
「―― ほほう、泣かせる話ではないか。しかし残念なことにガスマスクの女よ、貴様はここで倒れる。そして最音帝の体は私に乗っ取られ、その後我は自身の"隠ぺい"という特性を活かしてこの街の陰へと潜み再び力を蓄える。それらは決定された未来だ。貴様の守りなど薄紙1枚も同然。そしてこのマンガー・フォースの外側にいる限り、あやつらに我の行動を阻むことはできない。つまり、貴様らの詰みだ ――」
「ガスマスク女……いや、ゲヘナ。僕のことはもういい。友達になってくれると言ってくれたこと、すごい嬉しかった。確かに僕は寂しかったんだって、今さらながらに気付かされたよ……。そしてこんなやり方じゃ誰も救われないって、僕の友達はやって来ないって、ようやく分かった」
「最音……」
「ありがとう、ゲヘナ。僕はもう何かのせいにして現実から目を背けるようなことはしないよ。だから、僕の前からどいてくれ。ゲヘナは傷つく必要ない。こんな事態に陥ったのは全部僕の責任だ……マンガー・オーブよ! 僕が大人しくお前の言うことを聞けば、ゲヘナに危害を加えないと約束するか!?」
「―― 強き目をするようになったな、最音。ああ、約束しようとも。お前がその身を委ねれば我はこの場から逃げるのみに徹して他の誰にも危害は加えない、とな ――」
「ああ、良かった。ゲヘナ、分かったろ? だから体を端に――」
「――何も良くなんてないシュコッ!!」
「――っ! ゲヘナ……、分かってくれよ。これが最善だ……! 僕は使い潰されてしまうのだろうけれど、それでもゲヘナとお前の仲間たちは無事に帰れるんだ! ただ1人自業自得な僕だけをここで置いていくだけで、その他の人間は全員救われるんだ! 敵を切り捨てて仲間を助ける、それは誰にだってわかる損得の話だ。なあ、それが1番良い結末だろう!?」
「そんなわけないじゃないシュコかっ!! 1番良い結末は、戦いの後で私たち全員が笑っていられる結末シュコっ!! あなた1人が泣いているのを無視した結末なんて最良とは言えないシュコ!!」
「……っ!! お前は、だから何でそこまでして僕のことを……!!」
「決まっている。それは私がアイドルを目指す者だからシュコ!! ライブの後はみんなを笑って帰す、それがアイドル。私はもう、誰1人だって泣かせたままにはしないシュコっ!!」
「アイ……ドル……!!」
「―― ふむ、大変残念だ。それではガスマスク女よ。まずは貴様を容易く屠ってしまうとしよう。構わないな? ――」
「ふん、かかってくるシュコ黒玉野郎。中学生時代まで合気道を習っていた私がそう簡単に倒れると思う名でシュコよ?」
「―― どこまで耐えられるかな? ――」 ズザザザザザザッ
「マンガー・フォースがいくつもの細い束状になってゲヘナに襲い掛かる!! ゲヘナ! 逃げるんだ!!」
「ーー 私はっ!! もう誰にも同じ道は歩ませたくないシュコッ!!」 シュパパパパッ
「―― むぅ!? 我のマンガー・フォースを手のひらや手の甲で受け流した!? それに無駄のない体捌き、合気道うんぬんというのはただのハッタリでもないようだな ――」 ズザザザザザザッ
「私は、知っているから! お前たちにつけ込まれてしまう心の弱さを! 寂しさを!!」 シュパパパパッ
「―― これならどうだ!? ――」 ゾゾゾゾゾッ
「なっ!! 急に下から!? キャアッ!!」 ドガァンッ!
「ゲヘナっ!! ……頭から……血がっ!!」
「くっ! 大丈夫シュコッ! 最音は離れているシュコ、捕まってしまったら乗っ取られるシュコ……」 フラフラ
「…………もういい、止めてくれ! 僕が大人しくオーブに従うだけでいいんだ。これ以上、僕のせいで君が傷つくのを見たくない!!」
「……あなたのせいじゃないシュコ」
「えっ……?」
「どんなに寂しくてどんなに辛くても1人で頑張って、それでも報いがなくて。そんな時に何かに縋りたい気持ちを私は知っているシュコ。だから……大丈夫、あなたのせいなんかじゃない」
「ゲヘナ……!」
「―― ……話は充分か? ならばそろそろ死にたまえ ――」 ズォォォオオオッン!!
「あぁっ! 細かったマンガー・フォースの束が寄り合ってできた1本の巨大な柱が真上からゲヘナに突き刺すように振り下ろされるっ!! ゲヘナっ!! 避けてくれーッ!!」
「(あ、この規模は…………捌けないシュコね……)」
―― ズォォォオオオッ
「(……みんな、ごめんシュコ……)」
―― ズガァァァンッ!!
ここまでお読みいただきありがとうございます!
気になる引きになってしまいましたが、これ以上文字数を詰め込むと大変になってしまうのですみません……
続きは次回更新をお楽しみに!
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それでは!