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ガスマスク少女、手掛かりを残す

前回、ゲヘナが失踪したことが明らかになった好太郎たちは捜索を始めます。

憶測を巡らす中で、好太郎たちはゲヘナが手掛かりを残していることを知り――

続きは本文でお楽しみください!

「色んな人に話を聞きに行くのって疲れるなぁ……」

「うむ、大して行動もしていないハズだがその通りだ。これは精神的に疲れるというやつなのか、初対面の人々に詳しく話を聞くというのは中々緊張するものがあるな」

「全くだ。……それはそうとカツジ。とりあえず現時点で当たれる場所は行き尽くしたと思うんだが、これからどうしようか」

「それについてなんだがな。ヨシタロウよ、この付近で大規模な儀式を開けるような場所はあるだろうか」

「儀式!? 何でまた急にそんなオカルトチックなことを気にするんだ?」

「通常マンガー・オーブの力を十全に振るうためには人1人の器では足りないらしいのだ。だからこの世界の表現力を奪うためには、少なくとも定期的に数十人規模でマンガーフォースを集める儀式を行う必要があるはず。だからその儀式が目立たずに行える場所にマンガー・オーブがある可能性が高い」


「そうだったのか、確かにゲヘナちゃんがマンガー・オーブを使用していた時は仮面メイドの同僚とそのファン達によるライブが儀式場になってたとか言ってたな。あれ? でもその次のア○メイトの時はそんなの無かったような……」

「うむ。それに関しては私自身が直接見たわけではないので確定的ではないが……恐らくテリトリー内という部分的な表現力だけ奪っていたのではないだろうか?」


「テリトリー内?」

「例えば先の例で言えばア○メイト秋葉原店舗内のみとか、そういった限定的な場所ということだ。その場所に自分の思入れが強い程テリトリーを定めるのは楽になる」

「ああ、そういえばあの店長は人一倍店舗に思入れがありそうな感じをしてたからな」

「今回のケースだとテリトリー的な表現力の奪い方ではない、ゲヘナがかつて仮面メイド喫茶でしていたような奪い方だ。だからゲヘナの時と同様に儀式場があるはずなのだ」


「儀式場か……パッと思いつかないな……夏希はなんか思い当たることないか?」

「うーん……さっきから考えているんだけど……。でも少なくとも外のようなひらけた場所ではなさそうだね」

「そうだよな……分かるのはそれくらいだな……」

「だとすれば、街中の特に建物内部の怪しげな所を足を使って探すしかあるまいな」

「それ以外できることもなさそうだし、じゃあ歩き回って探――」


「――あれ? そこに居るのはゲヘナちゃんのお友達の方々じゃないですか?」


「えっ? ああ、はいそうです。俺たちはゲヘナちゃんの友達です。でもあなたは……?」

「えっ? 私? 忘れちゃったんですか? 仮面メイド喫茶のメイドの1人ですよ」

「ああそういえばそうでしたね(いやみんなフルフェイス型のガスマスク着けてるから分からんよ)」

「ゲヘナちゃんに会いに来たんですか?」

「いえ、それがかくかくしかじかで……」


「なんと、そうだったんですか。ゲヘナちゃんと連絡が取れないと。実は私もちょっとこんなものを拾ったから心配だったんですが……」 ヒョイッ

「それは……丸い缶? ですか?」

「もう少しよく見て。ただの丸い缶じゃないでしょう?」

「あっ!! なんかフィルターみたいなのが付いてる! でも、結局これって何なんですか?」

「これは『吸収缶』です」

「吸収缶?」

「要は有害物質などが体内に取り込まれないようにするためにガスマスクの内側に仕込む缶ですね。フィルターが付いているのは空気と一緒に吸い込まれた塵などがマスク内に入らないようにするためのものです」

「そうなんですね。それで、もしかしてその吸収缶が――」

「――はい。ゲヘナちゃんが使っていた吸収缶のようなんです」


「それはいったいどこに落ちていたんですか!?」

「落ちていたというより、置いてあったというか……。東京レ〇ャーランド秋葉原店の表にあるUFOキャッチャーの筐体の隅にポツンと」

「ああ! あの丸ノ内線の御茶ノ水駅を利用して秋葉原にやってくる人たちが歩いてくると一番最初に遭遇するゲームセンターのUFOキャッチャーの筐体ですか! でも、いったいなんでそんな所に……?」

「分からないですね……。とにかく、どうしましょう? 警察に連絡した方がいいんでしょうか」


「とりあえず俺たちでそのゲームセンターの様子を見に行ってみようと思います。情報ありがとうございます!」

「もしゲヘナちゃんがいたらこの吸収缶は返してあげてください」

「分かりました。お預かりします」

「しかし、ガスマスクごとじゃなくて吸収缶だけ取り外しているなんていったいどういうことなのかしら……」

「さぁ……? というよりあの仮面メイド喫茶で使われてるガスマスクって本物だったんですか……?」

「いえ、あれはゲヘナちゃんだけです。ゲヘナちゃんの趣味のようなので。確か『〇S M40』とかなんとか。私たちは一律『EMISH〇A』のサバゲー用ダブルガスマスクが支給されているんですが」

「すみません、もう単語がちょっと分からないです……」




「――さて。ゲヘナの同僚とは別れてヨシタロウの案内の元に歩いてきたわけだが、吸収缶が置いてあったという東京レ〇ャーランド秋葉原店というゲームセンターとやらはここであっているのか?」

「ああ。秋葉原においてはドン・〇ホーテの8階とここに2店舗を展開しているゲームセンターだ」

「ふむ。元の世界にはこんな店は無かったな。夏希は来たことがあるか?」

「えっ? 私? 一応あるけど……あんまり入ったことはないかな。たまに好太郎と一緒に遊ぶくらいだよ。好太郎はUFOキャッチャーが得意だから、色んなぬいぐるみ取ってくれるんだよ」

「ほほう……。ヨシタロウはそうやって自分をアピールして……ほほぅ……」

「な、何だよカツジ。言いたいことがあるなら夏希に聞こえない範囲でハッキリと言えよ」

「いやぁ? 別になんでもないぞー?」

「? どうしたのカジェちゃん? 何かヨシタロウに気になることでもあった?」

「なっ、夏希! きっとカツジに深い意味はないって!! 気にしないで早くゲームセンターの中に入ろう!」


「――ヨシタロウ、待てっ!!」

「っ!? な、なんだよ急に?」

「うむ、すまない。実際に店舗に踏み入るのは最終手段としたいのだ。どうにかして敵が何を儀式場にしているかなどの情報を先に知りたい」

「え? カジェちゃん、それはどうして? まずは手掛かりを探さなきゃじゃない? ここに吸収缶が置いてあったらなら、このゲームセンターの中に他にゲヘナちゃんの行方を報せる手掛かりがあるかもしれないんだよ?」

「いや、恐らく手掛かりどころではない。ゲヘナもマンガー・オーブもほぼ間違いなくここにいるだろう。肌にチリチリとくるこの感じ……」

「もしかしてカツジ、それって……?」

「うむ。以前に仮面メイド喫茶で体感したものと同じ、マンガー・フォースの気配がする」




「というわけで、ゲームセンターに入る前に中の情報が欲しいわけだが、何か良い案はないか?」

「うーん……そうだな……」 チラッ

「うーんと……」 チラッ

「……? ヨシタロウ、夏希、どうした?」

「……カジェちゃん。ゲームセンター横で地団駄を踏んで喚き散らしている、真っ赤なバンダナを頭に巻いたメガネの男の人がいるみたいだけど……」 チラッ


ダンッ ダンッ ダンッ

「こんちくしょーっ!!」


「ふむ……あれは踊りではなかったのか」

「踊り……ではないね」

「何なんだろうな、アレ。もしかして危ない人か?」

「うむぅ……怪しいがマンガー・フォースは感じないな。ちょっと接触してみるか。ヨシタロウ、一応いつでも警察に通報できるように準備をしておいてくれ」

「わかった」


ダンッ ダンッ ダンッ

「ったくぅ!! なんなんだあのスタッフどもわぁっ!! 拙僧(せっそう)の注意も説教も全く聞かないで腑抜けた顔をしやがってぇっ!! 死ね死ね死ねぇっ!! ファッ○ファッ○ファッ○!! 次おんなじ事しやがったらタダじゃ……」

「おぬし、取り込み中申し訳ないがちょっとよいか?」

「あぃいっ!? いったい拙僧に何の用だってんだ……ふぁっ!? あっ!? あーっ!?」

「う、うむ? 何だ私の顔を指差して……何か顔に付いているか……?」


「 『アスタルフォ』ちゃんっ!?」


「は、はあぁ??」

「そのピンク色の髪、そして何処か勝気な眼差しは、正にあのソシャゲ界のビッグタイトルの1つ 『FEIT MARVELOUS ORDER』、通称 『FMO』で燦然とその美の極点に立ち続けるアスタルフォちゃんそのもの!!」

「い、いやおぬしいったい何を言って――」


「こんなところでアスタルフォちゃんに会えるなんて……ッ!! 拙僧は!! 拙僧は!! 感激の涙で溺れてしまうでござる哀れなこの身を踏んで下さいっ!!」 スチャッ

「待てっ! 落ち着けっ!! 私は『あるたるふぉ』なる者ではn――」


「――何も言わなくていいんだ名もなき女神(コスプレイヤー)よ。拙僧とて分かっているでござる、2次元と3次元が今世で交わることなどないことを。しかし最推しの嫁コスを纏った女子(おなご)に話しかけられるなど人生で2度とない幸運(ラック)、眼前にキミの姿が留まる僅かな夢幻(むげん)の間を揺蕩(たゆた)わせておくれ……」

「――い、いかんぞ、ヨシタロウ。私にはコイツが何を言っているのか、そして何で跪いて祈りを捧げるかのような姿勢をとっているのか皆目見当がつかん」

「……俺もだカツジ。分かるのはその男が想像した斜め上の方向に危険だというくらいだ」




「さて、そろそろ立ってくれ。おぬしに聞きたいことがあるのだが構わないか?」

「はっ!! アスタルフォちゃんのお聞きしたいこととあらば何でも答えませう!!」 ビシィッ

「だから私は『あすたるふぉ』なる者では――まぁ、よい。先程おぬしはこのゲームセンターの前で地団太を踏んでおったな? それは何故か、理由を教えて欲しいのだ」

「これは大変お見苦しいところをお見せいたしましたでござる! 拙僧が憤慨しておりましたのはこのゲームセンターのスタッフの皆が皆、表情が抜け落ちた顔をして仕事をただ淡々とこなすばかりで拙僧のクレームを聞き流しておったからなのでござる!」

「ふむ。表情が抜け落ちた、か。それで、おぬしはいったい何にそんなに腹を立ててクレームをつけておったのだ?」

「はい、それは昨晩のことなのですが、拙僧がいつも通り昌平橋付近で日課のラップに勤しもうとしたところ――」

「――おぬしラップが日課なのか」

「いかにも」

「スマン、先を続けてくれ」


「はい。昨晩もご近所に迷惑が掛からないような音量でラップを嗜もうとしていたのでござるが、どうにも『もう一度あそべるドゴン!!』やら太鼓を連打するような音が煩わしくて中々素敵なライムが踏めないのでござる。夜遅くまでやっているゲームセンターだとは知っていましたがいつもは昌平橋の方まで音が届くようなことはありませんでござる。それなのにゲームの音が聞こえるのは、恐らく深夜だというのに何人もの客が同じゲームをずっとやり続けているからでありませう、しばらくすれば音も止むだろうと考えていたのでござるが、閉店時間になっても一向に音は止まず、結局2時間も待ってから帰る羽目になったのでござる」

「ふむ、語尾のござるが耳につくな……ともかくそれで今日になってクレームをつけに来たと」

「はい。なのにスタッフの奴らときたらボーっとしてるばっかりで……」

「そうか、教えてくれてありがとう」

「はっ、はい! と、ところで1つお伺いしてもよろしいでせうか……?」

「うむ、よいぞ? なんだ?」

「コスプレにアスタルフォちゃんをチョイスしたということは――やはり、中身も“男の娘”なのでせうか?」 チラッ チラッ

「……夏希、ハイキックだ。このビー玉以下の目玉をした男にハイキックをお見舞いしてやれっ!!」




「OK、グーグル。『アスタルフォ』、『画像』。ああ、ほんとだ。出てきた画像を見てみると、ちょっとカツジに似てるキャラクターかもな。へぇ~。あぁ、男の娘っていうのはこのキャラクターが女の子の恰好をしているのに中身が男だかららしいぞ」

「全く失礼な奴だ! 私が男とは! どこからどう見ても淑やかな美少女であろうに!」

「自分で言うなよ。……ところで中の情報で気になった点があったな」

「うむ。『表情が抜けた落ちた顔のスタッフたち』、深夜まで響く『もう一度あそべるドゴン』などのゲーム音……スタッフたちは恐らく強いマンガー・フォースの波動に当てられて理性を奪われている状態なのだろう。後半に関しては、ヨシタロウ達で分かることはないか?」

「あ、それなら多分私分かるよ! 『太鼓の鉄人』のことだと思う!」


「『太鼓の鉄人』?」

「太鼓の鉄人っていうアーケードゲームでね、流れる曲に合わせて日本の太鼓っていう楽器を叩くゲームだよ」

「ふむ。夏希、それは今人気のゲームなのか?」

「ううん、最近はそれほど名前を聞かないかなぁ……。一時スゴイ人気で『マイバチ』って自分でゲームに使うための太鼓を叩くスティックを持っている人たちがいっぱいいたみたいだけど」

「なるほどな。執着点としてはありそうだな……」

「執着点?」

「うむ。ゲヘナしかりア〇メイト店長しかり、それぞれ執着や情熱が歪んだ結果マンガー・オーブに心を付け込まれる事例だ。今回のケースも何かしらそういう強い想いがマンガー・オーブの所持者にあるのではないかと私はにらんでいるのだ」

「ああ、そういうことか。カツジはこの太鼓の鉄人に執着した人間が何らかの目的でマンガー・オーブの力を頼っている可能性があるって言いたいんだな?」

「うむ、その通りだ」


「でもカジェちゃん、そのマンガー・オーブを持っている人はいったい何に執着しているんだろう?」

「これは推測になるが、例えば太鼓の鉄人の『再興』とかはどうだろうか」

「『再興』?」

「そうだ。一時期流行ったそのゲームをもう一度流行らせたい者がいて、そのための手段として手当たり次第ゲームセンターの客に太鼓の鉄人をプレイさせているというのはどうだろうか?」


「OK、グーグル。『太鼓の鉄人』、『流行』。……おっ! なんかネットの掲示板に新しい情報が書き込まれているな。何でも『秋葉原で太鼓の鉄人が再ブーム? どこの店舗でも行列ができており、一時は太鼓の鉄人の太鼓部分が盗まれる騒動にまで発展!』だってさ」

「うむ? 太鼓が盗まれる? 太鼓だけ盗めばゲームができるのか?」

「いや、できないぞ」

「ではいったい何で盗まれたんだ?」

「さぁな。太鼓の鉄人が好き過ぎて家でも遊びたくなったんじゃないか?」

「何と、犯罪に手を染める者まで現れるほど太鼓の鉄人ブームが再加熱するとは! くっ、許せ……私がもっと早くマンガー・オーブを止めることができていればっ!!」

「果たして本当にマンガー・オーブと関係しているのかは分からないんだがな……」


「さて、ともかく儀式場は太鼓の鉄人を連続プレイして作り出しているとみて間違いなかろう。恐らくマンガー・オーブの持ち主の攻撃もそのゲームに沿った形で繰り出されるものなのやもしれん」

「おおっ! かなり詳しいことまで分かったんじゃないか?」

「うむ、そうだな。この辺りで小物類が色々揃いそうな店はどこかないか?」

「それならドン・○ホーテがいいと思うぞ」

「よし、それなら早速そこで準備を整えて、ゲヘナの救出に向かうぞ!」

最後までお読みいただきありがとうございます。


足で情報を集めるって言うのは本当に大変なことですよね。

私はカレー屋巡りが大好きで休日は大体神保町付近を練り歩いていますが、『美味しいカレー屋さんないかなぁ』とアンテナを張っていると楽しいんですけど疲れます。


さて、情報収集も完了した好太郎たちは次回いよいよゲームセンターに踏み込みます!

果たしてゲヘナはいるのか!? 3つ目のマンガー・オーブは存在するのか!?

お楽しみにしてください(*^^*)


次回も1週間後の更新を予定しています。

なのでもし、少しでも面白いと思っていただけたらブクマをしていただけると嬉しいです。


それでは引き続きよろしくお願いいたしますm(__)m





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