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ガスマスク少女、みんなの役に立つ

明日からGW! でも今日、投稿しちゃいます!

GWは更にやる気を漲らせて頑張っちゃうぞー!!

今回から、新章です。

4人の役回りが大体分かってきた(今さら)!

だから適当にイベントを与えてあげるだけで、キャラクターが自分で動いてくれるようになった感じがして、とても書きやすくなりました(*^^*)

 翌日の火曜日、好太郎と夏希は学校からの帰り道に秋葉原へと寄った。

 駅を降りてまっすぐ向かったのはゲヘナの働く仮面メイド喫茶だ。

 一昨日にあれだけの騒ぎがあったにも関わらず、普段と全く変わらない営業ができているところに、スタッフと客たちのお店への愛の強さが表れていた。


「おかえりなさいませ、ご主人様シュコ」


 シュコシュコとメイドが2人を迎え入れてくれる。

 ちなみにゲヘナではないようだ。

 この仮面メイド喫茶のスタッフは全員ガスマスク着用という、いったいどんなニーズに着眼したらこうなるのか分からない方向性を貫いている。

 メイドは2人が来ることをあらかじめ知らされていたようではあって、喫茶店のシステムの説明などもなく拠点(この喫茶店内の個室)へと案内してくれる。


「どうぞシュコ」


 メイドが手を向ける拠点の中を覗き込むと、


「うむ。時間通りだな」


 ガスマスク姿のゲヘナと、カッジェがおどろおどろしい飲み物をストローでかき混ぜて待っていた。


「カジェちゃん、なにそれ……?」

「うむ、何やらこれが一番のオススメとゲヘナが言うから試していたところだ」


 ちなみに夏希はカッジェのことを『カジェちゃん』と呼ぶことにしたようだ。

 カツジと呼ばれるのは本意でないそうだし、ただカッジェという名前が発音し辛いのも事実だし、というルーツがある呼び名だった。

 カッジェもそれにとても満足したようで、


「ささぁ、夏希。私の隣が空いておるぞ。早く座ったらどうだ」

「あ、うん」


 呼び名どころか夏希のこと自体、大好きになってしまったらしい。

 好太郎としては、夏希の可愛さ優しさの理解者が増えたことが単純に喜ばしいものの、夏希を取られてしまうのではないかと少し心配になる。

 夏希の隣に座ることのできなかった好太郎は、渋々ゲヘナの隣へと腰掛けると、「はぁ」とため息を吐く。


「私が隣だと不満シュコか。いいご身分でシュコねぇ……」

「いや、そうじゃないんだけど……ごめん」


 ゲヘナの目がガスマスクの下で鋭くなっているだろうと想像できるような冷たい声だ。

 そんな誰かにとっては不満な席順だったようだが、ひとまず全員が座ったことを確認してカッジェが話し始める。


「さて、集まって早速だが本題に入ろうと思う。ズバリ今日から秋葉原一帯の調査に乗り出そうと思っているが、どこから手をつけた方がよいか、というアイディアが欲しい」


 単刀直入なカッジェの言葉に、真っ先に反応したのはゲヘナだった。


「それならすでに私が、秋葉原周辺で見受けられる怪しい行動をしている人間の情報を集めてあるでシュコから、そいつらを順番に当たっていくのではどうシュコか?」

「えっ? もう集めてるのか!?」

「無論でシュコ。昨日から私のファンや知り合い達に当たってもらっていたシュコからね!」


 3人は感心したような声を上げ、ゲヘナが胸を張って得意げになる。

 しかし本当に得意げになってもいいくらいの行動力と成果だ。このまま何の取っ掛かりもなく意見を出し合うという過程を省けるのだから。

 

「うむ、良くやってくれた! それでは全員でゲヘナの調査にあった怪しい人物を順番に確認していくという流れでよいな?」

「いいんじゃないかな?」


 好太郎もゲヘナも夏希の返事に頷き、最初の行動指針が出来上がった。


「うむ、それでは早速回るとしよう!」







 ――1時間後、4人は秋葉原公園の木を囲う柵に俯きがちで腰掛けていた。


「全部空振りとはな……」


 ボソリと好太郎の呟いた言葉に対してゲヘナがバッと顔を上げる。


「しょ、しょうがないじゃないでシュコか!! 怪しい行動をしている人間にターゲットを絞った結果だったんでシュコから!! 大体あいつらマンガー・オーブ使ってるんじゃないかってくらい挙動おかしかったシュコよ!?」

「確かにね……でもドンキホーテ8階で変な踊りしてた人たちはご当地アイドルの応援してただけだったし、中古ショップの向かいのゲーセンで手先を奇妙に高速で動かしている人も音ゲープレイヤーなだけだったし、コトブキヤ前を超低空姿勢で徘徊してる謎の男もただのローアングラーだったもんね……」

「うむ……ローアングルを狙ったローアングラーの横っ面に夏希のローキックが炸裂した以外に変わったこともなかったからな……まぁだからと言ってゲヘナの責任という訳ではあるまい」

「そうシュコそうシュコ!! 好太郎はケツの穴が小さ過ぎるシュコ!!」

「いやいや、別に俺だって責めるつもりで言ったわけじゃないって……」


 そんな会話の後、続く言葉は無くなる。

 時刻は17時に差し掛かろうという頃合い。

 今から何かを始めようとするには、高校生の好太郎や夏希には遅すぎた。


「調査に付き合ってくれたこと、感謝する。ただもう時間も時間だから、今日は解散にしよう」


 そう切り出したカッジェの言葉に、3人とも渋々頷く。

 夏の空はまだまだ明るかったが、あと2時間もすれば夕餉の時間。

 好太郎も夏希も家には特に何も言っていないから、家族も心配するだろう。

 不完全燃焼ながらも4人は


 ――シュガッ



「JR線の改札に向かって歩き始めた訳だけど、ゲヘナちゃんもこっちの方面でよかっ――!?」

「うぬっ!? これはっ!?」

「シュコォッ!?」

「えっ?」

「カツジも、ゲヘナちゃんも気付いたか!?」


「えっ? なにっ? 3人とも急に険しい表情になって……なにかあったの?」


「――つい2日前まで連れ合っていた仲だと言うのに、何故かひどく久しい感覚がするシュコね」

「……何もアクションが無いみたいだし、向こうは俺たちに気付いてないようだな」

「分からないシュコよ? もしかすると様子を伺っているだけかもしれないシュコ」


「ちょ、ちょっと待って! ヨシタロウとカジェちゃんとゲヘナさんの3人だけで顔を見合わせて深刻そうだけど、私だけ全然話についていけてないよ!?」


「……なぁ、夏希。今自分の言葉に違和感はなかったか?」

「い、違和感……? なんだろ……」

「自分の言葉が妙に説明臭いとは思わなかったシュコか?」

「そ、そういえば……。えっ!? ということはまさか――」

「――うむ。マンガー・フォースが再び世界を覆ったようだな」




「どうする? マンガー・オーブを持っていそうな人間を探すか?」

「相手の初動を押さえられるのであれば、押さえた方がこれからが有利シュコ。ア○メイトの時のように物理的に無理矢理マンガー・オーブを破壊するという手も、不意を打つなら可能でシュコが、それ以外の手札として相手がマンガー・オーブの力を借りた動機を知っておくに越したことはないシュコ」

「うむ……しかし今から行動を起こすのは避けたいところだ。人の目が少なくなる夜は、我々にとっても相手を見つけやすいが、相手にとっても我々を見つけやすい。本来の『戦闘を避けた調査』を最優先目的にするのであれば危険因子は極力排除すべきだ」

「でもこれは絶好のチャンスシュコよ!? 相手からしてみれば予想だにしない早いタイミングで身バレするシュコ」

「ゲヘナちゃん、そんなに焦る必要もないんじゃないか? マンガー・フォースは確かに危険な力だけど、直接その力を強く放射しない限りは周りへの危害だって少ない。俺たちがその身で経験してきたことだから、分かるハズだ」


「それは……そうシュコが……」


「……ゲヘナ」


「……分かっているシュコ。ワガママは言わないシュコ。今日は解散にして、また明日調査するシュコ」


「うむ、分かってくれたならよい。我々は、調査を第一の目標として行動をする。それは目の前のマンガー・フォースをむざむざ見逃すという意味ではない。私の世界の援軍が駆けつけた際、迅速に、かつ最小限の被害でマンガー・オーブを破壊するための下準備だ」

「大丈夫シュコ。理解しているシュコよ」

「うむ。そうか」


「よし。じゃあ話もまとまったところでそろそろ帰ろう。今日はあまり長居をしてもしょうがないしな」

「……そう、だね」 チラッ

「…………」 シュコー シュコー


「うむ。では帰ろう。ゲヘナ、今日は情報を用意しておいてくれたこと、感謝するぞ。おかげで無駄なく調査に時間を使うことができた」

「……お礼を言われるほどのことはできていないシュコ。結局、空振りだったシュコから」

「そんな事は無い。結果だけを見て評価を下すのは愚か者のすることだ。私はゲヘナがとても大事な役回りを果たしてくれたと思っている」

「……そこまで言ってもらえるなら、情報を集めた甲斐があったというものでシュコ。素直に感謝を受け取らせていただくシュコ」

「うむ、それでよいのだ。では、駅へ向かおう」 テクテク


「…………」 ピタリ

「……? ゲヘナちゃん、どうかした?」

「……私、バイト先に用事があるのを思い出したシュコ。寄ってから帰るから、ヨシタロウたちは先に帰ってるシュコ」

「そっか、了解。じゃあ俺たちは先に帰ってるな。また明日」 テクテク

「うむ、気をつけて帰るのだぞ、ゲヘナ」 テクテク

「また明日でシュコ。バイバイシュコ」


「…………ゲヘナさん」

「シュコ? 夏希、どうしたシュコか?」

「ゲヘナさん、1人での行動はダメだよ……?」

「……何を、言っているシュコか。しないシュコよ。本当にバイト先に用事があるだけシュコ」

「……うん、分かった。ごめんね? 変なこと言っちゃって……」

「いいシュコ。私を心配してくれているシュコね。ありがとうシュコ。本当に、優しい子でシュコ。ヨシタロウにはもったいないでシュコ」

「へっ? 好太郎がどうかした?」

「……何でもないシュコよ……。本当に疎いシュコね……」

「?」


「夏希ー? どうしたー?」


「ほら、ヨシタロウたちが呼んでいるシュコよ」

「……うん。それじゃあ、また明日ね、ゲヘナさん」

「また明日シュコ」






「……行ったみたいシュコね」


「……ガスマスクももう取るシュコ」 パカッ


「……ふぅ。夏はやっぱり蒸れるなぁ……」


「…………」


「……ごめんなさい。みんな……」


「でもやっぱり、私は……」


「……知っているから。だから早く、助けなくちゃ」 タッタッタッ


ゲヘナちゃん!! ちょっと独りきりでどこに!?

独断行動はダメだと話したのに・・・・・・

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