違和感
当作品に興味を持っていただきありがとうございます! 〃 ̄∇)ゞ
これは、7つのマンガー・オーブを追う壮大な物語……ではありません、コメディです。
異能力バトルを装ったコメディ文芸です……!!
1部辺りも大体5000字前後で収まるように努力していますので、肩の力を抜いてお読みください。
連載、頑張っていきますので、どうかお付き合いよろしくお願いいたします! ヾ(*゜∇^*)ノ~
ガヤガヤと、放課後の教室は慌ただしい。
部活のためいち早く教室を出ようとする者、寄り道の相談をしている者、周りの音に負けまいと声を張ってお喋りをする者。それぞれの声が交わって響く教室内はとてもうるさく、声が通り辛い。
そのため好太郎の「また来週」と発した言葉が、その声を聞いてほしい当人に届くことはなかった。
今朝登校中に、『部活動の用事があるから今日は先に帰っていて』とあらかじめ言われていたから、挨拶くらいはしたいと思っていたのだが。
考えていたよりも大切で急な用件なのだろう、夏希は早々に教室を飛び出して行ってしまった。
「あーあ。フラれてやんの」
声に反応してもらえなかったことに、少しショックを受ける好太郎の背中に軽口が投げられた。
ちょうど好太郎の真後ろの席にいる男子生徒だ。ついでにその周りの生徒たちも『あちゃ~』みたいな顔をして生温い視線を向けてきている。
「なっ……別に、フラれてねーよ」
「でも、反応はしてもらえてなかったみたいだぜ?」
「……お前たちがうるさくて聞こえなかっただけだろ」
口を尖らせて言い返す好太郎に周りの生徒たちは軽く噴き出してしまう。
「なんだよ! からかってんのか!」
「あははっ……何でもないって。ごめんごめん」
本当に悪いと思っているのか分からないくらいに軽い口調で謝るその男子生徒に、好太郎はムッとするが、すぐに矛は収めることにする。別に感情の起伏が激しい訳ではなく、日常的によくあるやり取りだったというだけだ。
「ふぅ」と息を吐いて体に入っていた力を抜いた。すると男子生徒が別の話を振ってくる。
「今日さ、帰りに秋葉原寄らないか?」
「アキバ? 何か用事あるのか?」
「発売日なんだ。ラノベと、ゲームの」
男子生徒の声は少し上ずっていて、とても楽しみにしているのだろう事がありありと分かった。
「それにしても、今日両方買うのか? つい先週もアニメDVDを予約したとか言ってなかった?」
先週の平日も、そういえば秋葉原のア○メイトに付き合わされていたと思い出し、好太郎は問いかける。
「そーなんだよ、最近出費が激しくてさ……」
「それ大丈夫なのか? ちょっとくらい我慢した方がいいんじゃないか?」
第一、いったいその財源はどこから出てくるのだろうか。
好太郎は周りの友人たちのお小遣い額がかねてから気になっている。好太郎のお小遣いは月5000円。比較対象が今まで少なくて、どれくらいが平均なのかよく分からない。
かと言って堂々と聞くのも憚られたので、結局その疑問は放置されたままだ。
とにかく、好太郎のお小遣いから鑑みるに、この男子生徒の買い物は赤字になっているのでは、と思ってお節介をしてしまうわけだ。
そんな好太郎の言葉に男子生徒は、何故か疲れたような笑顔を返す。
「いやぁ~何というか最近、前よりこういうサブカル? そういうのがすごく楽しく思えてきてさ。新刊や新作が出たらどうしても買わなきゃいけない気がしてくるんだよなぁ」
「いけないって、義務じゃあるまいし……」
男子生徒は何かをはぐらかすように「ははっ」と声だけで笑う。これ以上言及されたくないということなのだろうか。嫌がっている話題を無理やりに続ける意味もなく、好太郎は追求をしない。
しかし思考は回る。
どうにも最近秋葉原の方面が潤っているようだ、と。もちろん経済的に。
ニュースでもやっていた。どうやら空前のサブカルチャー・ブームがやってきているらしく、マンガやラノベ、アニメDVDなどの売り上げが、6月は前年比の1.5倍だとか。
コミックマーケットに向けて、今月の7月そして来月8月と紙不足が懸念される勢いだそうだ。
「それで? 寄り道はどうする?」
男子生徒の声に、好太郎は巡らせていた考えを止めて目の前に意識を戻した。
そして自分の経済状況を確かめるべく
――シュガッ
「財布を取り出し中身を見ると390円しか入ってないな。何とも心もとない……家に帰ったら補充しなくちゃいけない。というわけで悪いんだけど、俺は今日寄り道できそうにないや」
「マジかよ。ていうか390円てお前さ、最低1000円は入れとけよな。何かあった時大変だぞ」
「まあ、正論ではあるけど……考えなしに金を使ってるお前には言われたくないんだが……」
「うわっ! 手厳しいっ!! でも、そういうことなら分かったよ。今日は俺1人で秋葉原行ってくる。途中まで一緒に行こうぜ」 テクテク
「あっ、ちょっと待てって! 俺まだ教科書をカバンに詰め終わってないんだからさ。えーっと、宿題が」
――シュンッ
出ていたのは数学だけだったと、好太郎は数学Ⅱの問題集とノートだけカバンに入れて、席を立つ。
そして教室の出口へと向かって歩き始めて――
「……ん?」
――何か違和感に気が付いた。
「どうしたんだよ? 置いてくぞ?」
前方から焦れた男子生徒の声が掛けられる。
「あ、うん……何でもない」
掴めない正体に疑問が晴れることはなかったが、好太郎は特に気にする程のことでもないと考えて教室を出る。
そのまま学校を出て、男子生徒と中身の無い馬鹿な話を繰り広げながら駅へと向かう。
電車に乗る頃には教室で感じた違和感などはとうに忘れて、明日からの2連休のことしか頭になかった。
今日は金曜日。明日は土曜日。
どこに行こうか、何をしようか。まだ予定は無いが休みというだけでワクワクしてしまう。
変わらない平穏に包まれた安息の2日。
そうなるハズだった休日に、急激な変化が訪れることになるなんて、好太郎はまだ知らない。
――世界の表現力が奪われるなんて、いったい誰が想像できただろうか?
次回から本格的に物語が始動します。
好太郎が感じた違和感の正体とはいったいーー?
(2019/05/10 追記)
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