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お久しぶりです。
マリルです。
今日も勇者様がたまらんです。
こないだ、たまたま知り合った花の精霊達に何故勇者様と一緒に居るのか聞かれて、前の世界のことも含めて思わず色々話しちゃったけど、あいつら精霊だからなのか、人の話ぶったぎるし話してる途中で質問してくるしで、誰でもいいから誰かにこの溢れんばかりの気持ちを語らい尽くしたかった筈なのに不完全燃焼で終わってしまって身悶えが止まりません。
こう、色々途中で説明止められたり、突っ込まれたりしたという部分の所為で、これまた色々と暴走が収まりそうにない私は、これからどうしたらいいですか?
そういう時もこういう時もその答えは一つだけ!
今日も今日とて勇者様観察です。
いやね、確かに私は毎日毎時間勇者様を見ていたいし、実際余程眠くなってくたばったりでもしない限り近くに居て見つめてるんだけど、今日はもうそれじゃ足りないの!
たった今、そう思うくらい、思っても仕方ないくらい、勇者様不足を感じてるの!!
いや、そうじゃなくても普段から見つめるだけじゃ勇者様不足なんだけど。
いっそ瞳を閉じて脳内で思う存分勇者様の事だけを妄想し続けるのも幸せっちゃあ幸せだけど、目を閉じちゃうと本物が見れない訳で、でも見るだけじゃ足りなくて。
一日中見つめていたい、一日中妄想していたいこの気持ちをホントどうにかしたい!!
いっそ見つめなくても妄想しなくてもこの世の全てが勇者様一色になるような方法ってないのかしら……。
いやそれが叶ったとして、やっぱり見つめられなくなるのも困るし妄想できなくなるのも困るのだけど……。
ってか見つめてるだけ、妄想してるだけじゃ足りないのが目下1番の悩みなのよね。
……で……出来れば近寄って匂いを嗅ぎたい……。あわよくば髪の毛一本くらい……。
落ちてるのを拾うんじゃなくて、こう手渡しで……。
吸って吐いた息辺りも保存できないものかしら。
こんなに、こんなに素敵な、素敵すぎな勇者様が目の前にいるんですよ!?
これくらい、というかどれ程の事を思ってしまっても仕方が無いと思うのです!
そりゃあさ、そりゃあさ、色々考えた結果の末がそんな妄想自体も見つめる自体も全てに置いて恐れ多いけど、恐れ多いけど!
恐れ多いんだけど、両思いとかなんとかなっちゃって勇者様と両思いっていうのも魅力的でしょ?
あああ、違う。
両想いになんてなっちゃったら私が生きてけないわ。
あらゆる意味で生きてけないわ。
でも両想いって魅力的でしょ???
全世界の生きとし生けるものが憧れる事よね???
でもこればっかりはさ、中々私でも難しくって、何故か惚れ薬も魅了薬も媚薬も束縛剤も呪縛の魔法も魅了の魔法も……って書き出せないほど色々試したんだけどさ、ぜーんぶ効かなかったのよね。
そんなもので心を縛って手に入れて嬉しいかどうかじゃなくて、
御免なさい……。
建前言いました。
そんなことして手に入れた勇者様でも嬉しいんです!
ええ、知ってます。クズですよ?
クズですよ!!
クズって呼んでもいいですよ!?
でもでもクズでもいいの!
いや寧ろクズになったごときで勇者様の何かが何でもいいから手に入るなら……。
そりゃ、一般女子としてさ、心も全て手に入れば嬉しいことこの上ないよ?
でも全部なんて贅沢言わない私のこのスモールハートを数多の方々に共感して欲しい!
私ってホント謙虚……。
しっかしなぁ……。
どうして勇者様には魅惑系の魔法や薬が効かないのかしら。
追跡の魔法と捕縛魔法の一種はどうも効いたみたいだからパーティーは組めてるんだけど……。
一応私の魔法って訳あって、というか転生関連でどうもチートだから、この捕縛の魔法だって普通ならパーティーメンバー全員勇者様が私のものだと認識する筈だし、勇者様も私に優しく微笑みかけてとことん愛でてくれる予定の魔法だった筈なんだけどね。
こちらに飛ばされたときに話したあのくそ女神の話と大きく食い違っていて、勇者様にはやっとこさ仲間?と認識されてる程度の効果しかないみたいなのに突っ込みを入れたい。
試しに他のどうでもいい人に使ってみたらものすっごい惚れられて痛い目みたからもう勇者様以外には使いたくもないけど……。
一応さ、なんでもかんでも複数人の心を操ったり出来るようにはしてくれなかったみたいで、王道的に唇へのキスで魔法が解ける様には設定はしてあるし、この魔法で一度に三人までしか使えないとも女神に言われてるし、私が死んだら効力が切れちゃうって言われてはいるんだけどね。
試しに使ったって話したさっきの男は、魅惑の魔法を転嫁出来ないか何とか考えて頑張って、勇者様に色目を使う同じパーティーのガチムチ男に呪いとして擦り付けて事なきを得たけれど……。
材料集めるのも魔法を組むのも地味に大変だったなぁ……。
もう二度とあんな魔法、勇者様以外に使わない。
いやーでもまぁ、男のくせに私の勇者様に色目を使うなんてそんな事するから、どう追い出そうかと思ってたけれど、二人一緒に片付いて本当に助かったから結果オーライ?
その後の彼らの事は想像したくないけどね!!
私の場合、運が良かったのは、チート能力もらえて、魔法だけじゃなくてこっちに来てから知り合った師匠のお陰で物凄い薬剤の知識も植えつけてもらえて、何より魔法に関しては、今居るこの異世界で私より魔法に秀でている”生き物”なんて居ないって事になってるっぽいってとこなんだよね。
ええと、女神がかなり曖昧な表現でそう言ってたのよ。
女神の話から察するに魔物は生きとし生けるものに分類されてないっぽい印象も受けたんだけど、少なくとも捕縛魔法以外の魔法をちょこちょこ魔物に試したら、面白いくらいさっくさくにいけるのよね。
ってことは生きとし生けるものに実は分類されてるのかしら……。
このチート能力も薬剤系の師匠になってくれた人が優秀すぎて、ひとしきり驚いた後面白いからと使い勝手教えてくれたから便利すぎで、それはそれで色んな意味でとってもとっても楽しいんだけどね……。
師匠には色んな事に突っ込み入れられたり、なんなら頭はたかれたりしまくったけど……。
最初会った時は美形だなぁと思ったけど、美形でもあの性格じゃモテないだろうなぁ……。
あ、だからあんな場所に籠って人と関わらないのか……。
まぁ、どんなに性格の良い美形でも勇者様には勝ちようがないんだけどね!
あんなドストライク、この先一生現れる気がしませんわ。
魔物と戦うあの剣裁き。
舞う様に殺される魔物達。
彩を添える様に撒き散らされる魔物達の血飛沫。
あれは本当に一枚の絵画の様で、いつまでもいつまでもいつまでも見ていたい……。
私の事だけじゃないのが悔しいけれど、私の事も気に掛けてくれて、こちらに敵が来ないようにしてくれてるのも実は知ってるし、嬉しいの!
ぶっちゃけ魔物なんて、私の手に掛かれば近づく前に跡形もなく消したりなんかできちゃったりするんだけどね……。
それは守ってもらわなくていいんじゃないか?と思う人もいるかもしれないけど、こういうのは倒せるとか倒せないとかの問題じゃないんですよ。
私が勇者様を守るとかも確かにできるよ?
勇者様を私に近い程度に強くする事だって勿論出来ないこともないよ?
多分魔王だって、会った事ないし強さも分かんないけど、多分私で倒せるレベルだと思う……。
でもさでもさでもさでもさでもさ、私だって女の子だよ??
乙女心としては、勇者様みたいな素敵な人に守ってもらったり守ってもらったり守ってもらったりしたいじゃない?
まだまだ発展途上でもがきながら頑張る姿に萌えたいじゃない??
っていう願望くらいあるじゃない?
当然もって然るべきじゃない??
っていうか他にも、大丈夫?と優しく囁かれながらそっとお姫様抱っことかされたいじゃない!?
普通に恋したら、まずはその人の体液が欲しくなったり皮膚に触れたり、爪切った後の爪とか貰ったり、なんなら身に纏ってる糸くずのひとつでも掠め取ったりしたいじゃない!!!???
恋する乙女はみんな普通にすることよね??
っていうかしない乙女なんているの??
出来れば……、出来れば、よ?
文明の機器を使ってその姿を撮影したり、目覚まし代わりにそのお声を録音したいのは、ただの恋心で、ごくごく一般的で健全な乙女の思考回路だと思うのよ。
っていうか、この程度、寧ろ控えめなくらいよね?
ほんと、このチートな能力と引き換えにしても惜しくないから、勇者様が私の所有物になる日は来ないのかしら。
こんな細やかで乙女チックな考えに耽ってた私は深い思考の中で、勇者様からほんのコンマ一秒でも目を離してしまっていた事に気が付いてそっと前を歩く勇者様を盗み見た。
何万分の一秒でも見つめる時間が減るなんて勿体無い。
有意義と錯覚しそうな勿体無いだけの時間の無駄遣いだったわ、その1秒減る行為が!
ああ、でも考えずにはいられない仕様のないこの脳みそ。
出来れば分裂して自分会議開きたいわ!
「……分裂……分裂かぁ……くふっ……くへへへ……」
素敵思考に身をゆだねてる私に向かって、なんかどこかでキモッとか聞こえたのはきっと気の所為だと思う。
パソコンの下りでフラグを立ててしまったのか、子供たちに充電の先端を壊されていました……。
家族と子供優先なので中々書いてる時間もないのに……。
下の子が捕まり立ちする様になって目が離せずドキドキしてます。