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1のみ重複、2からは新たに設定等思い出せないので当初の予定とは変更して投稿します。

 勇者(おさななじみ)率いるパーティには、かなりめんどくさい仲間がいる。


 ……いや、かなりどころじゃない。



 大いに面倒くさい仲間がいる。


 ぶっちゃけ、俺から見れば仲間といえるのか謎だし、仲間とは到底認めたくない理由(わけ)があるのだが……。



 理由(わけ)、というのも勇者(おさななじみ)自身が何の魔術かそいつと絶対に解けない呪いのパーティを組まされている。というのが最大の理由だ。

 


 普通の仲間にそんなもん掛ける仲間が居てたまるものか。というのが俺の見解だからだ。



  余談だが、そいつは俺の事は眼中にない。



 というか、とても有難い事にあまり存在を認識されてない。



 本当に、心から嬉しい限りである。


 

 ただ、そいつの所為で俺以外の一緒に戦う筈だった仲間達が一人、又一人と田舎に理由つきで帰って行った事は紛れも無い事実だ。


 古い仲間たちは元より新しく仲間が出来たとしても……だ。


 そいつは、自称魔法使いを名乗る凄腕の魔導師なのだが、この世界に魔法使いなどという職種は存在しないのに何故か魔法使いを名乗っている。


 

 いや、厳密には大道芸等の見世物的なショーなんかには、魔法ショーみたいなものが存在しているので、手品的なものを披露したり、ほうきに乗ってアクロバティックなショーを手がける人間を俗語で魔法使いと言わない事もないが。



 一般的には、そういう人たちはショーの案内人(マジクテニスト)と言われている。


 

 事の発端はよくある話で、道中に得体の知れない自称魔法使いを助けた?事なのだが、助けてすぐにその自称魔法使いが、勇者様(おさななじみ)の事を



"助けてくれてありがとう、好みの人!あぁ、なんて……ダメ……好きぃ…"


だの



〝撃退なんて簡単でも……。ハァ……どうしよう……好きぃ……。〝



だの。


 やけに高めの小さな声で不気味にボソボソ言い出して勇者(おさななじみ)をストーキングし出したのだ。




 最初はしゃがれた老婆の様な声を出していた癖に。



 

 ……それが、そんな事があったのが、今から丁度一年半前。


 

 それ以降というもの、俺たち仲間と勇者が変な仲にならないようにとよく分からない変な魔法で監視するわ、

ちょっとでも勇者に近づく奴が居たら男女関係なく弱みを握って脅すわ潰すわ、

仲間と勇者がちょっと良い雰囲気だったからと自白剤盛って勇者への気持ちを確かめた上でえげつない事するわ、

食後にの食べカスやら捨てた筈の勇者の衣類等色々こっそり盗むわ、

勇者の衣類だけ洗濯したがるわ。


 もう何もかもが気色悪い事この上ない。


 

 しかもそいつはその行為を全部、勇者が好き故の行為だという独りよがりな独り言も俺は聞いてしまっている。


 そもそも仲間と良い雰囲気って、女性が居た試しなんてほんの二、三人だけで、勇者の仲間は俺も含めてほぼほぼ男ばっかりだったんだぞ……。


 勇者(おさななじみ)に男色の気は断じて無いし、疑惑もない。

 

 意味も解らない。気色も悪い。


 ちなみに俺がそいつについて解ってる事は、喋り方が独特な事と恐らく女性であるという事、痩せっぽちで身長が155センチくらいという事。


 普段の声はわざとしゃがれさせている模様だが勇者や周囲のいないところでの声はやけに甲高く、なんというか……こう幼い感じというか、嫌な感じの甲高さではないのが、こう表現しづらい様な……癖のある、良く言えば特徴のある声だ。


 後は服がだぼだぼ過ぎて、これまたなんと言えばいいのかモッサい……そして黒い……。


 それから考えられない事に魔術系統全般が規格外に使えるという事と言わずもがな勇者が好きすぎて気持ち悪いという事だけだ。


 この世界で全ての系統魔法に通じて、且これ程凄腕の魔導士、魔導連合組合にも歴代存在しなかったんではないかと思われる。


 しかもこれまでのこいつの言動、行動から察するにどうも魔導士の資格は保有していないかもしれない疑惑まである。


 まぁ、まさかこの国でそれは無いと信じたいが……。


 


 何故こいつ程の魔道士が国王守る中枢に()らず、なんの役職も与えられず、誰にも追跡されないままに俺たちと行動を共にするのかは謎だし、それが許されている理由も分からない。


 当初は余りの戦力っぷりに魔王の陰謀すら感じた程だ。


 本来ならこれ程の力を国が野放しにするとは考えにくいので認識された上で放置されてるのだろうが、それとも勇者と一緒に行動を共にしているという事で良しとされているのだろうか。


 王族が関与しているのかという事すらも今のところ分からない。


 ちなみに俺たちはこいつの顔についても分からない。


 なにせ、いつも真っ黒なローブを身にまとい、顔を覗こうとするとサッと身を交わすか魔法を使って絶対に素顔を見せようとしない様にするからだ。


 何らかの理由でもありそうだから仕方が無いし、顔とか本気で全くかけらの興味もないからいいっちゃいいんだが。


 今までの仲間に対してもフードに手をかけようとすると逃げていたし、頭に靄が掛かる不思議な魔法をかけてくる上に顔に掛けてる変な黒い眼鏡を外そうともしやがらないから、ある時酒の席で実は不細工すぎて困ってるんじゃないかと仲間内で噂が立ったっけか。


 勇者関連に関しては、男にまで嫉妬する辺りや、勇者(おさななじみ)に話しかけられるとしゃがれた声でも甲高い声でもなく、くぐもっている上に上ずってる感じで話す事から、もしかしたら変声期前の少年なのかもしれないと思わなくもない辺りが俺から見た感想だ。


 いや、ぶっちゃけ少年にしては……とも思うし、そもそも人間という種族じゃない疑惑もあるんじゃ、と思わなくもないが、、勇者(おさななじみ)を好きだという以上、俺的には性別に関してだけは女だと信じたい。


 

 頼むからせめてそこは女であってくれ。


 両性ならまだマシとして、いや、女、同性、男性の順で無理な訳だが、もう男だったらと考えてしまったら、気持ちが悪いを通り越して生理的に受け付けないから。


 

 たとえ女でも気持ち悪いと思うのに。



 男だったらもう俺頭抱えて寝れなくなりそうで……。


 大切な幼馴染のケツが狙われてるかもしれないとか、過切るだけでも無理すぎる。

 

 俺の心の安寧の為にもせめて性別は女のカテゴリーであってくれ。


 

 最初の頃はこんな奴でも仲良くしようと俺なりに色々頑張ったし、こいつの事を知るために色々質問したもんだが、自分の事を話すのが苦手なのか、いつ何をどんな風に質問しても上の空で、勇者だけを見て不気味に笑う辺りで、もう仲良くどうこうどころか話すことさえ諦めた。


 街で買い物してるところを目撃するに、老婆の声で喋ってはいるものの同じパーティの仲間が近づくと急に声をくぐもらせるしな。


 だいたい、黒すぎる気味が悪いフード姿も鳥肌が立つ気味の悪い要因の一つだと俺は思っている。


 チラチラ見える裏地が桃色花柄なのにも、どんなセンスだよ!とかなりツッコミを入れたい。



 全身、不自然な程黒くて不気味なのに、手を出すときだけ奥からちらりと見える布だけが桃色花柄は妙に浮くから!


 浮きすぎて逆に釘付けになるからっ!

 


 そもそも、俺が質問しなくたって、何がしたいのかいつも訳の解らない事をぶつぶつつぶやき出した後、なんならたまに、はぁはぁ言いながら身をくねらせている姿を見ると、本当に気持ちが悪いし、

俺としてはぞわぞわと身の毛がよだち、吐き気がするレベルな訳だが、幸いにも勇者(おさななじみ)はそれを気にしている様子もなければ寧ろ微笑ましそうにしているのは本当に勇者(おさななじみ)に感服だ。

 


 その辺勇者(おさななじみ)は勇者なだけあってなのか、感覚が人とは違うのか……。


 とにかくすげーと思う。


 


 くどいかもしれないが、勇者(おさななじみ)が気にしちゃいないのも分かってはいるが、勇者(おさななじみ)も変なのに好かれたものである。



 ここまでくどくどと同じような気持ちが悪いということを繰り返し説明してしまったが、間怠っこしいのではっきり俺の考えを言っておこう。



 『魔法使いマリル』


 

 そう名乗った得体の知れないそいつを、俺は心底嫌いだ。


 

 大体、小さな声でボソりと呟く「マリル」という名前も本名かどうか怪しいものだし、勇者の事を好きだという名目で好き勝手してくるのも気に入らない。


 正直に言えば、こいつの性別関係なくしても、もう俺や勇者(おさななじみ)の目の前から消えて欲しいとさえ願っている。



「……勇者にも解けない魔術、いや、呪い(・・)って一体なんなんだよ……。」


 

 夜が近づく夕闇の中で、俺は野営用の薪を拾いながら深く、それはもう深く、深くため息をついた。

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