金色のリボン
その小さな町の大通りには、美しいものやきれいなものを売る店が、ずらりと並んでいました。通りの一角に、その店はありました。
『メリンとリサの店』
古びた店の中には、色とりどりのリボンがあふれています。十年近くここにいる店のあるじは、静かな面持ちの男でした。
彼の商うリボンは、人びとに幸せをもたらしました。恋をなくした娘が手にしたばら色のリボンは、新しい恋人を招き、親とはぐれた子どもの手にした虹色のリボンは、再会の喜びにきらめきました。
この店に来る事で、たくさんの人びとのほおにほほえみがのぼり、胸に喜びがあふれたのです。
ある日、町に一人の娘がやって来ました。悲しい顔をした娘でした。その目が『メリンとリサの店』に止まった時、娘は店の名前をしばらく見つめていました。やがて娘は扉を開けると、中に入りました。
「いらっしゃいませ」
ドアベルの音に、あるじが顔を上げました。
「どのような品をお求めですか」
「わたし、リボンを見に来たのではないの」
悲しい顔をした娘が言いました。
「店の名前に驚いて、入ってきてしまったの。わたしの名はリサ。父の名はメリンだったわ」
あるじはこれを聞くと息を飲み、青ざめて立ち上がりました。
「お待ちしていました、この十年。許して下さい。あなたの父親を殺したのは、わたしです」
「でも父は、ドラゴンと戦って死んだのよ。食べられてしまったと聞いたわ」
「わたしがそのドラゴンです。魔法使いメリンは食べられるにあたり、わたしに呪いをかけました。
『心を持つ』という。
以来、わたしから安息は去りました。自分の罪に、おののかずにはいられなかったのです。
店を開いたのはそれからです。つぐないに、わたしが苦しめたのと同じだけの人を、幸せにしようと思ったのです。ですがそれも、今日で終わる」
あるじは涙を流すと胸に手を当てました。
「ここに、メリンの心があります。あなたのものです。どうぞお受け取りください」
その言葉と共に、彼の胸から金色の血が流れだしました。血は、リボンに変わりました。きらきらと輝く細い帯は、あとからあとから生まれ出て、終わりがないかのようでした。
やがて娘が気がついた時。そこには誰もいませんでした。店は金色のリボンでいっぱいで、温かい光に包まれていました。
リボンはさやさやと音を立て、くりかえしくりかえし、ささやきました。愛しているよ、可愛い子。わたしの大事な宝物、と。
* * *
『マリーゴールドの金色ゼリー』
ハーブで言うマリーゴールド(ポットマリーゴールド)は、キンセンカの事です。カレンデュラとも言います。
材料
粉ゼラチン 10グラム
マリーゴールド(ドライ)小さじ2、3
湯
レモン汁少々
ゆず茶少々
砂糖 お好みで
1.ゼラチンをぬるま湯でふやかしておく。
2.マリーゴールドのドライ・ハーブをポットか急須に入れて、湯を注ぎ、5分ほどむらす。
3.ふやけたゼリーとマリーゴールドのお茶をまぜ、レモン汁、ゆず茶、砂糖を混ぜ合わせる。
4.容器に入れて、冷ましてから冷蔵庫で固める。
ゆず茶がない時は、砂糖やはちみつで。
マリーゴールドの花びらを混ぜ込んでもOK。