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肝試し。  作者: ハル
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帰還。



 次に目が覚めたのは真っ白な天井、清潔そうな真っ白いシーツ。

 何かほかに目につくものがないかと探していると

 横に目を向けると、点滴が目に映った。

「あぁ・・・私倒れて・・・ここ病院か・・・」

 私の意識はあまりはっきりとしてはいないが、今ここがどこであるかという予想はついた。

 そして、何か顔のほうに違和感があって、そちらのほうに右手で触れようとすると、鋭い痛みが走り、左手のほうで顔を触ると、包帯のようなものが巻かれていた。

 そのぼやけていた視界が鮮明になっていくと、右腕のほうに包帯が巻かれていた。

「夢じゃ・・・なかった」

 この目視で確認できるこの怪我で、あれが現実だったという事実を再確認してしまった。

 夏の暑さにやられて、熱中症になって、あんな夢を見ただけだと思いたかった。でも今私の今見た光景であれは夢なんかじゃない現実で起こったことだということを再確認してしまった。

「あああああああああああああああああああああああああ」

 叫んだ。頭からそれを消し去るために。


 なにもなにもなにもなにもなにもなにも・・・・なにもかも・・・私の頭は、私の心は、私の感情はそれを受け入れることを拒んだ。


 私の叫び声に気づいてなのか。

 慌ただしく誰かが部屋に入ってきた。無意識のうちに私は首を掻きむしろうとした手を取り押さえつけられた。

「落ち着いてください、C奈さん」

 その人は私を押さえ付ける前に、ナースコールを押していたらしく、間もなくして、白い服を着た人たちが現れ、私が押さえられていることに驚いてなのか、その足音は止まった。だけど、少し声が低い女性の声がすると、私の押さえつけに参加して、白い服の誰かが何かしたんだろう。だんだんと私は眠くなってきた。

 だんだんと眠くなって抵抗が小さくなると、白い服の人が私が苦しくないように軽めに押さえこみ、薄れゆく意識の中でこんな会話を聞いていた。



「大石さん・・・あなたは・・・・」

「連続誘拐殺人事件の唯一の●●●●ですよ?自殺なんてされたら溜まったもんじゃないですよ」

「はぁ・・・大石さん、しばらくはこちらの方の病室には来ないでください」

「それじゃあ・・・事情聴取が・・・」

「彼女の今まともに話せると思いますか?・・・そんなことも分からないで焦ってるなんていつものあなたらしくありませんよ」

「いやはや・・・面目ない・・・また後日伺わせてもらいます」

「2、3日ではなく、最低でも1週間は開けてください、その間にあなたも休みなさい」

「今は休んでいられるほど余裕はないんですけどね・・・やっと・・やっと生きて居る唯一の手がかりですよ?まぁ、先生が言うなら仕方ないでしょう、それに先生が見ていてくださるなら、彼女は星のようにどこにも逃げませんしねぇ・・・」

 所々聞き取れなかった・・・だけど、だけど・・・今なんて言った?

 『唯一の生き残り』?

 扉がガタンと閉まる音ともに、私は意識を手放した。

 


 それから1週間がたった。

 最初起きた時の行動に私の精神状態はダメなところにいるとみられ、手は拘束された。

 トイレに行くとき、食事をするときなんかは外してもらえるけど、最低でも周りに2人の看護師の服を着た

体格のいい男の人と普通の女の人が見守ってくる。トイレの時やお風呂の時なんかは体格のいい女の人に監視が変わるだけだけど・・・・

 毎日あの声が少し低い女の先生に診察してもらって・・・だいぶ自殺したいという気持ちは収まった・・・だけど、死にたいという気持ちは今もまだ残ったままだ。

 そんなある日・・・いつものように監視されながら窓の外を眺め過ごしていると・・・

「やぁ、こんにちわ」

 あの日の人が私に会いに来た。

「・・・こんにちわ」

 よくその人・・・ちょっとお腹がでていて、髪が白髪まじり、顔は人の好さそうな笑みを浮かべながら・・・こちらの顔を見ている・・・じっと何も言わずに眺めていると困ったように笑いながら、頭を掻いている。

「こちらはお見舞いの品です」

 その人は持っていたフールツの盛り合わせを私のベットの横にある棚の上に置いてくれた。

 でも、まだ私は話す言葉に迷っていると・・・突然その人が謝りだした。

「先日は申し訳ありませんでした」

 綺麗に腰を折り、私に謝罪をしてきた。

「こちらこそ・・・あの時は助けてくださってありがとうございます」

 自殺を止めようとしてくれたんだ。本当はこの人が謝ることなどない。全部私が悪いんだから。

「いえ、私は当然のことをしたまでですよ」

 そうにこやかに微笑んでいる・・・でも、私は眠る前に少しだけこの人と先生の会話を聞こえていたんだ。

 たぶんこの人がなんらかの形であれにかかわってるとしたら・・・それはたぶん・・・

「・・・警察の方ですよね?」

 そう私が控えめに聞くと、一瞬驚いたような顔になり、すぐに笑顔を貼り付けたような私を不安にさせないためだろう。人の好い笑顔を浮かべていた。

「いやはや・・・知ってましたか、私は警察の大石と申します」

 そう苦笑いをしながら、頭を掻きながら、懐から警察手帳を取り出して、私に見せてくれた。

 たぶん・・・私に話があるんだろうな・・・と思ったから。

「・・・どうぞ、座ってください」

 横にあるまだ誰もお見舞いの人が座っていない椅子に座るのを促した。

「こういうのもなんですけど、私はあの事件のことを聞きますから、まだダメだと思うなら、追い出してくれても構いませんよ」

 そう大石さんは言ってくれた。

「あの看護師の方も・・・出ていったほうが?」

「あぁ・・・ここの人たちですか・・・ここの人たちなら大丈夫ですよ」

 そう彼は自分の耳に手を当てて、彼らのほうを指さした。そうして目を凝らしてみていると・・・何かが入っていた。

「耳栓ですよ」

 そう彼は教えてくれた。

「よく私達の関係者や被害者なんかがお世話になる病院でそちらのほうの対応などもやってくれるんですよ、こういう気が利くことなんてのもあるんですけど、時々被害者に横暴なことをする警察官もいますから、こういう私らに対しての監視の意味もあるんですけどねぇ~ははは」

「・・・」

 それを無言で私は聞いていた。

「事件が事件ですし、マスコミなんてのも来ますし、マスコミが親族の方を狙ってきたりもしますから、大変なんですけどね~ここの病院はそれらをやってくれますから、本当に助かってます。被害者にとっても私ら警察にとってもね」

 私のところにお見舞いの人が来なかったのはそのためか・・・大方私の親族を偽ってここに入ろうとした人や、無理やり来ようとした人がいたんだろう。

 あ・・・でも、音とか聞こえなかったな。

 一瞬納得しかけて、難しい顔になった私を察してか大石さんがこんな言葉をくれた。

「ここの全病室防音室なんですよ」

 この答えであってるかな?という人の好い笑顔を浮かべた大石さんが私に向かってにこやかに微笑んでくる。

「・・・そうなんですね」

「親族の方にはこちらの病院から話をしていただいて、あなたの精神が落ち着くまでは面会謝絶という形を取らせていただきました、すみませんね」

「・・・いえ」

 たぶん今の私だと・・・家族にひどい言葉をかけそうで会うのが怖かったのも心のどこかであったんだろう。少しほっとした。

「では・・・」

 いよいよあのことを聞くんだろうと身構えていたら・・・

「今日はこれで失礼しますね~また後日」

 拍子抜けするほど大石さんはあっさりと私の病室を後にした。

 それからというもの大石さんは2日から3日のペースで私の病室へと訪れた。

・犯人についての特徴、何か心当たりはないか?

・被害者たちの様子。

・誘拐されたと思われる廃墟で怪しかったこと。

・あそこに行くまでのこと。

・あれを誰が提案したのか。

・途中の道で何か気になること、些細なことでも違和感。

 そういうことを特に前2つを念入りに聞かれ、私の精神が乱れたと感じたら、看護師の方が止めに来て、大石さんはそういう時は決まって3日後に来る。

 そして、慣れてきたころに私のほうからも質問をさせてもらった。

「唯一の生き残りってなんのことですか?」

 それを聞いた瞬間、大石さんはこれまでに見たこともないほどに驚いて、私に凄く申し訳なさそうな言いにくそうに・・・でも、重い口を開いて私に話してくれた、

「あなたと一緒に生き残ったA子さんはその翌日に自殺しました」

 私はそれを聞いた瞬間意味が分からなかった。

「A子が自殺?」

「えぇ・・・そうです」

 そうその言葉を私の脳内で繰り返す。この現実を受け入れるために・・・だけど、私には・・・そう思っていると大石さんが私の両手を握りこんでいた。でも、それは痛くはなく、包み込むようにでも、決して私が何かしないために包んでいてくれていた。

「落ち着きましたか?」

「・・・はい」

 なんとかその言葉を私は吐きだした。

 そうして、次第に大石さんも私からあらかた話を聞き終えたのか次第に事情聴取という形からただの知人に会いにくるような感じになった。そのころには私の両親、仲の良かった大学の先輩や後輩なんかも来てくれるようになって。

 そして、私は3か月後に退院した。

























『み~つけた』



 


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