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第6章ー8

 この米海軍機動部隊のタリン、リバウに対する空襲は、全部で5波に渡って行われた。

 タリンに延べにしてだが約1000機、リバウに延べにして約700機が空襲を浴びせたという。

 この空襲によって、この時に両軍港に在泊していたソ連海軍、及びドイツ海軍の軍艦のほとんどが大破以上の損害を受け、過半数が着底したという。

 また、バルト海沿岸の航空基地に展開していた民主ドイツ空軍機も大損害を受けた。

 この米海軍の露払いを受けて、日本海軍機動部隊は、クロンシュタット近辺に突入した。


「対空電探に探知無し、「翔鶴」からも同様の発光信号です」

「良し、全空母は風に立て、クロンシュタット軍港に対する空襲を開始する」

 3月17日の黎明、小沢治三郎中将の命令により、日本機動部隊の空母8隻は200機余りの第一次攻撃隊を発艦させた。

「第1目標は、ソ連海軍の戦艦2隻。これを必ず沈めろ。それが沈んだ後は、クロンシュタット軍港に在泊しているソ連海軍の艦船全てを攻撃する」

 小沢中将はそう命じた。

 なお、角田覚治、山口多聞両中将からも同様の命令が発せられた。


 これに対して、ソ連空軍(及び海軍航空隊)は捨て身の反撃を試みた。

 タリン、リバウの惨劇により、空母機動部隊の猛威をソ連空軍は身に染みて分かっている。

 クロンシュタット軍港に在泊しているソ連海軍の艦船を囮として考え、敢えてクロンシュタット軍港の防空を行わず、全てのソ連空軍機(及び海軍航空隊機)は、小沢艦隊に来襲したのだ。

 だが、一つの飛行場から同時に飛び立てる攻撃隊には限りがある。

 そして、機上無線を活用して、ソ連軍機が連携して行動する等、この当時は無理な話だった。

 そのために、ソ連空軍の惨劇は起きた。


「対空電探に感あり。高度1000メートル。本艦からの距離20海里に接近」

 空母「瑞鶴」の電探は、着々とソ連軍機の来襲を探知していた。

 同様の事が、他の日本海軍の多くの艦船でも起こっている。

 小沢中将は、ソ連軍機に半ば憐みの想いすら湧いていた。

 これでは、レニングラード沖の野鴨撃ちだ。


 第1波のクロンシュタット軍港への空襲に際して、防空戦闘機部隊が皆無だったことから、小沢中将は第二波、第三波の戦闘機を敢えて半分以下に削り、機動部隊の上空直掩に当たる戦闘機を増やしていた。

 そして、ソ連空軍は、ノルウェー沖におけるドイツ空軍の戦訓を忘れているようだ。

 レーダーピケット艦を無視して、我々の空母への攻撃をひたすら試みている。

 その結果。


「こちら納富、部下と協同してソ連軍の攻撃機を2機撃墜、ただ燃料はあるものの弾薬がほぼ尽きました。着艦許可を求めます」

「了解した。瑞鶴に着艦を許可する。ただ、弾薬を補給次第、再発艦してくれ」

「分かりました」

 小沢中将の耳に、通信士官と戦闘機乗りとのやり取りが微かに聞こえてくる。


 ソ連空軍の攻撃隊は、少数で五月雨式に来襲しているため、電探探知により優位高度からの先手を取れる我が戦闘機部隊の防空網の突破にほぼ失敗している。

 それを何とか潜り抜けた一握りも。


「こちら、秋月。対空射撃で1機落としました」

 護衛任務にあたっている駆逐艦からの報告が入ってくる。


 射撃用対空電探との連動射撃が可能な秋月級は別格としても、それ以外の陽炎級や朝潮級も装備している捜索用対空電探を活用して、出来るかぎり敵機への濃密な弾幕を構成していることから、ソ連空軍の攻撃隊は、我々の空母には一指も触れることができないようだ。


「ガングート級戦艦2隻の撃沈確実です。他の艦船もほぼ大破以上の損害です」

 第三次攻撃隊からの最終報告が入った。


「よし、引き上げよう」

 小沢中将は十二分に心から満足し、空母部隊に命令を下した。 

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