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第6章ー6

「しかし、米海軍もそんなに空母が必要なのですかね。大量に作ったものの持て余す、ということになりかねませんが」

 山口多聞中将が口を挟んだ。


「かつての戦艦とある意味、空母は似通ったところがあるからな。お互いに海軍力の象徴としてある程度は保有したいのだ。日本でも、対米英対等の海軍をという声が、海軍の旧艦隊派を中心に根強いからな」

 小沢治三郎中将が言うと、他の2人は苦笑いをした。


 それは全くの事実だった。

 ワシントン海軍軍縮条約時はまだしも、ロンドン海軍軍縮条約では、日本海軍が真っ二つに割れる事態にまで至った程だ。

 最終的に海兵隊出身の斎藤實海軍大将が、退役していたのに海相に復帰し、喧嘩両成敗で条約派のトップの財部彪海軍大将と、艦隊派のトップ加藤寛治海軍大将を共に予備役編入処分にしてその時は事が収まった。

 もっともその後も、山梨勝之進海相と末次信正軍令部長の間に微妙なしこりが遺る等、未だに条約派と艦隊派の対立は底流として遺り続けている。

 それを想えば、日米共にお互いさまのところがあった。


「なお、米海軍が先陣を務める代償として、我々には極上の目標を残すということだ」

 小沢中将は、場の雰囲気を変えるためもあり、意味深な発言をした。

「極上の目標とは」

 角田中将の目の色が変わって、問いかけた。

「ガングート級戦艦2隻だ」

「それは、極上の目標ですな。リスクも大きいですが」

 小沢中将の答えに、山口中将が闘志を内に秘めて言った。


 ガングート級戦艦2隻は、連合国側の情報網によれば、レニングラードに近いクロンシュタット軍港に引きこもっているとみられている。

 この2隻の戦艦は、言うまでもなく、ソ連に遺された最大の軍艦である。

 従って、連合国海軍にしてみれば、最大の目標と言って良かったが、何と言っても場所が場所だ。

 バルト海の奥に殴り込みをかける危険を冒さねばならない。


「米海軍機動部隊が、タリン、リバウに空襲を掛け、これらに配属された艦隊に打撃を与えた後、我々がクロンシュタットに対する空襲を行う。その後、英海軍機動部隊が、三度目の攻撃を加えて、ソ連のバルト海艦隊を根絶やしにしようというのが、大雑把な作戦だ。何か疑問はあるか」

「ありませんな。極めて妥当な計画に思われます。ちなみにどれ位の期間で行うのです」

 小沢中将の言葉に、角田中将が疑問を呈した。


「最初の米海軍の空襲から英海軍が空襲を終えるまでに5日と考えている。余り時間をかけると、後方からソ連空軍の増援が駆けつけるだろう。我々は、基本的に一撃離脱で敵艦隊に大打撃を与えるのだ」

「確かにあまり長いこと、バルト海に居座っては、ソ連空軍の反撃に遭いそうですな。速やかに短期間の空襲に止めるべきでしょう」

 小沢中将の言葉に、山口中将も同意した。


「なお、米海軍のハルゼー提督や英海軍のサマヴィル提督と話し合った結果、本作戦は月の明りの余りない3月15日から19日にかけて行うことにしたい。つまり、我々は3月17日にクロンシュタットに対する空襲を行うこととしたい」

 小沢中将は、そうも言った。

 この言葉は、角田、山口両中将にも納得のいく話だった。


 この当時、電探技術については、日米英はソ連に対して圧倒的優位に立っていた。

 陸に接近して砲撃を浴びせるのなら、この当時の電探の性能から言って、月の明りが欲しいところだが、対空、対潜戦闘を行うだけなら、むしろ月の明りの無い方が、電探性能の優れている日英米側がソ連に対して相対的に優位にたって戦えるだろう。

 従って月の明りの無い闇夜を活かして、バルト海に突入して攻撃を行う方が、日米英にとっては有利、と多くの日英米側の海軍軍人は考えていたのである。 

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