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第6章ー5

 ちなみに伊海軍だが、仏海軍より多少はマシとは言え、大同小異と言われても仕方なかった。

 1942年のこの当時、伊海軍が保有している空母は、「アクィラ」1隻しかなかった。

 もっと空母が必要だという意見が、伊海軍内に無い訳では無かったが、対ソ戦を考えると陸空軍が優先であるという判断に伊政府、各軍の上層部が至り、貨客船「ローマ」を改造した空母「アクィラ」1隻を1942年初頭に竣工させたのみで、それ以外の空母となると、今のところは建造予定が無いというのが現実だったのである。

 もっとも、艦載機開発という点に関して言えば、自国開発に伊は成功しており、仏を上回っていた。


 伊のレジアーネ社が開発し、独のDB601を伊でライセンス生産して搭載したRe2001、また、似たような経緯で独のDB605を伊でライセンス生産して搭載したRe2005の2種類の艦載機を伊海軍航空隊は保有していた。

 なお、両方とも、一応は爆撃機としても使えるが、基本は戦闘機であり、日米英の海軍航空隊関係者から、艦載機が戦闘機1種だけとは極端にも程がある、と陰で言われる始末だった。

(艦上戦闘機自体の性能としては、Re2001は零戦前期型と、Re2005は零戦後期型と同等以上と言う評価が一部からなされるくらいで、初めて開発した艦上戦闘機としては標準以上だった。)


 ともかく、伊海軍も、そのような事情から虎の子の空母1隻を冒険的任務に投入することを拒絶したのだ。


 こうした事情から、日米英三国の空母部隊が、バルト海において大暴れすることになったのである。


「ところで、バルト海沿岸に対する攻撃任務の第一陣は、日本海軍が当然、務めるということでしょうか」

 角田覚治中将が、小沢治三郎中将に尋ねた。

「いや、我々は第二陣だ。先陣は、米海軍が務める」

 小沢中将はそう答えた。


「どうしてです。我々の下には、「翔鶴」、「瑞鶴」という2隻の空母が駆けつけたのです。それに、金剛級戦艦4隻を主とする護衛艦隊が、8隻の空母を護衛します。潜水艦の脅威を無視はできませんが、朝潮型を改良した陽炎型駆逐艦が来ています。空からの脅威も、秋月型駆逐艦が投入されつつありますし、我々が先陣を務めるべきでは」

 山口多聞中将が口を挟んだ。


「確かにな。空母戦力はともかくとして、護衛艦隊の質量を考えれば、我々が先陣と逸るのも当然だ」

 小沢中将は言った。

 三人共に脳裏に浮かぶものがあった。

 米海軍は、高速戦艦としてアイオワ級を建造中だが、就役にはまだ時間が掛かる。

 そのために、空母部隊の護衛は重巡洋艦が精一杯だ。

 いざとなれば、護衛艦隊に戦艦を含み、戦艦部隊との砲戦も可能な日本海軍が先陣を務めたい。

(それに、(沈没寸前だったが)戦艦を空母の砲撃で撃沈するという戦果まで、日本海軍は挙げたのだ。)


「しかし、万が一の損傷を考えると、米海軍に先陣を譲るべきだろう。何しろ、米海軍は10隻もの空母をこの作戦に投入するのだから」

 続けられた小沢中将の言葉に、角田、山口両中将は呻くような声を挙げた。

 こちらが、やっとの思いで建造した翔鶴級2隻を投入したのに、向こうはエセックス級空母4隻を悠々と建造して投入してくる。


 その後、小沢中将は、今後の日米の建艦予定を述べた。

 翔鶴級の後、装甲空母として大型化した天城級空母4隻を、日本海軍は建造予定だが、その代償として伊勢級空母2隻を予備役に回す予定だ。

 一方、米海軍はエセックス級空母12隻を更に建造、更に日本と同様に大型装甲空母を建造するという噂が流れている。


「国力からして当然の差なのですが、ため息しか出ませんな」

 強気をもって鳴る角田中将がぼやいて、山口中将も肯いた。

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