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第6章ー2

 しかも、その護衛戦闘機を操る面々が、この当時としては世界で一流の腕自慢の面々なのだ。

 後に「ワルシャワのリヒトホーフェン」、「吉良俊一提督の再来」と謳われた笹井醇一中尉(皮肉なことにワルシャワに赴任した際には、ほぼ初陣だった)等が中隊長を務め、第二次世界大戦時の日本空軍トップの撃墜王の西沢広義や、戦後に回想録「大空のサムライ」を描いた坂井三郎といった、この当時、既に撃墜王に達していた歴戦の下士官を多数抱えているワルシャワ近郊に展開した日本空軍の99式戦闘機を装備した戦闘機部隊は、味方の米英仏等からも垂涎の的と言えるほどの腕っこきを揃えた精鋭だった。

 本当に、敵のソ連空軍や民主ドイツ空軍の面々からすれば、厄介極まりない戦闘機部隊だった。


 実際、米陸軍航空隊の戦略爆撃機部隊が、本格的なソ連本土への空襲を、日本空軍戦闘機部隊の欧州展開と共に開始し、それを日本空軍の99式戦闘機部隊を装備した戦闘機部隊が護衛するようになると、特にソ連空軍は頭を痛めるようになった。

 何故かと言うと、米陸軍航空隊は高高度(といっても、この当時は高度8000メートル程度だったが)からの爆撃を好んだのだが、これを迎撃しないといけないソ連空軍にとって、高高度は鬼門だった。


 この当時の日本空軍も、本来からすればソ連空軍と大同小異だったと言われても仕方ないのだが。

 ソ連空軍が戦略爆撃任務を考えていなかったわけではないが、第二次世界大戦勃発から2年余りが経つ間に戦略爆撃機部隊が、主に日本空軍との死闘の果てに、ほぼ消滅と言って良い程に損耗してしまっていた。

 更に、独は事実上、打倒されてしまい、共産中国の戦況も実際にはそう悲観する程のものでは無かったが、航空戦力はほぼ失われてしまっており、ソ連空軍が単独で、米英日仏伊等の連合国空軍に対峙しているといっても間違いではない状況に追い込まれたことから。


 1942年を迎えたソ連では、専らソ連本土の防空任務にあたる戦闘機と、地上部隊を支援する軽爆撃機等のみが大量に生産されており、空軍の搭乗員もそれに主に当たるように、大量に訓練養成されているという現実があった。

 そして、本土防空に当たるとはいえ、戦略爆撃への対処方法として、主にTB-3を装備していた自国の戦略爆撃機部隊を基準として訓練に当たっていたことから、高高度から戦略爆撃を行う米陸軍航空隊に対しては、対処が困難になるという事態を引き起こしてしまったのである。


 勿論、この当時のソ連空軍が、高高度に上がれる戦闘機を保有していない訳ではない。

 ミグ3戦闘機が代表だったが、問題は低火力で、操縦性も悪く、悪く言えば速いだけの戦闘機だった。

 こんな戦闘機で、99式戦闘機が護衛する「空の要塞」B-17の大編隊を迎撃するのである。

 99式戦闘機の集団を何とか突破しても、火力の低さからB-17は火を噴かず、防御用の銃火の前にソ連戦闘機の多くが返り討ちにされる始末だった。


 実際、草鹿龍之介の再来のように、B-17の銃手から何人もの撃墜王が誕生するのでは、という有様を呈し、また、99式戦闘機とB-17の組み合わせが猛威を振るうのを見て、ソ連空軍は慌ててミグ3戦闘機の改良等に努める羽目になったが、これは文字通りの泥縄対処になった。


 幸いなことに、ライン河を米英仏日等の連合軍の地上部隊が渡った頃から、ソ連本土においては、ウラル山脈近辺やシベリアへ、ウクライナ等からの工場疎開を積極的に進めていたために、連合国軍の戦略爆撃が、ソ連本土に対して開始された当初から、ソ連の工業生産に大打撃を与えることは無かったが、これはソ連にとって先行きの昏さを感じさせた。

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