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第1章ー3

 ともかく英国も核兵器開発に乗り出していることを、日本政府、軍の最上層部は掴み、更に日本単独での核兵器開発は困難であることも把握してしまった。

 だからといって。


 日本単独での核兵器開発は困難と言うのは、理研の仁科研究室における判断である。

 独ソが核兵器を開発できないか、というと、仁科研究室からは不可能とも可能とも答えられない、という率直な意見が返ってきている。

 日本が開発できないとはいえ、独ソが開発してしまっては。


 米内光政首相直々の決断により、(事実上も含めれば40年近い日英同盟の誼もあったことから)英国との協力を日本政府は、核兵器開発に関して図ることにした。

 そして、この日本からの核兵器開発協力要請を受けた英国だが。


 正直に言って、日本からの要請を受けた際に驚愕したというのが正直なところだった。

 まさか、自国の最重要機密が日本に掴まれていたとは、想像できなかったのである。

(チャーチル首相が、この要請を受けた際に、

「優秀過ぎる弟子は、師匠にとって困った存在だ。弟子を我が国の先達はもっと吟味すべきだった」

 と皮肉ったという噂がある。)

 とは言え、独ソの存在を考えれば、日本からの協力要請を拒むというのは、英国にとって困難で、1940年夏から秋の時点で、日英は核兵器の共同開発に乗り出すことになった。


 一方、他の米仏等の核兵器開発事情だが。

 米国は、既述のようにこの時点では核兵器開発に余り動いてはいなかった。

 それでは、仏はというと。


 実は仏もそれなりに1940年夏段階で、核兵器開発について、それなりの危惧を抱いてはいた。

 何しろ仏も物理学については、キュリー夫妻やベクレルを輩出する等、文句なしの先進国である。

 更にキュリー夫妻の遺児であるイレーヌ・ジョリオ=キュリー等の科学者が仏には健在だった。

 だから、仏が最初の核兵器保有国になる可能性はそれなりにあった。

 だが。


 仏は従前からの経緯から、共産主義者、国家社会主義者等の勢力が国民の間で極めて強かった。

 特に皮肉なことにイレーヌ・ジョリオ=キュリーの夫、フレデリック・ジョリオ=キュリーは、熱心な共産党員として知られた存在であり、本人自身は、

「私は共産党員である以前に、フランス人である」

 等と主張してはいたものの、仏政府自身、フレデリック・ジョリオ=キュリーは、ソ連のスパイではないかと疑っていた。

 そのために、彼は第二次世界大戦中、仏政府の厳重な監視下に置かれることになり、後に述べるマンハッタン計画に際しては、ジョリオ=キュリー夫妻が米国政府から協力を拒まれる原因にもなった。

 そういった事情から、仏は核兵器開発に遅れを取ることになり、ほとんど研究はされていなかった。


 そのために1940年段階においては、日英が核兵器開発において連合国側では先陣を切っていたといってもよかった。

 日本では理研の仁科研究室が、英国ではケンブリッジのキャヴェンディシュ研究所が中心となって、核兵器開発を進めていた。

 とは言え、この時点では日英両国政府、研究者共に、核兵器開発は第二次世界大戦終結までに間に合わないという考えが多数を占めていた。


 第二次世界大戦終結後に訪れるであろう米国のヘゲモニーに対処するために、(表立っては言わないが)日英両国政府の上層部は核兵器の開発に勤しんでいたというのが、本音のところだったのである。

 だからこそ同盟国なのに、米国は日英から外されていた。


 だが、そういった思惑が崩される事態が起きた。

 1941年9月、独のほぼ全土を連合国軍は占領したが、独の科学者の多くが行方不明になっていた。

 この情報を知った日英は動揺した。

 独の核兵器情報が、ソ連に流れたのではないか。

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