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第5章ー19

 こういったこれまでの経緯から、うち続く戦禍のために、もう戦争は御免だ、平和な世界で暮らしたい、と中国の民衆の一部、いや大部分が想うようになっていても、そのようなことを公然とは言えなくなっていた。

 それは言うまでもなく、中国がまたも日本に敗北したという事実を認めることに他ならなかった。

 更にこれまでの推移から考えれば、漢奸政権の蒋介石政権の統治下に自らは置かれ、日韓に多額の賠償金を支払うという屈辱を甘んじて自らは認めるという事でもあった。


「死ぬくらいなら奴隷となっても生き延びた方が」

という言葉と、

「奴隷になるくらいなら死んだ方がマシだ」

という言葉と、どちらが周囲に言いやすいだろうか。

 余程のことがない限りは、多くの人が後者の言葉を周囲に言うのではないだろうか。


 それは民衆どころか、共産中国政府、軍の上層部でも同じだった。

 いや、これまでの中国国民党の右派や中間派に対して行った弾圧、粛清の為に、より深刻だった。

 満州国政府の首班、蒋介石のみならず、その周囲の上層部は、皆、本をただせば中国国民党の右派や中間派の出身だった。

 彼らの家族や友人の多くが、拷問の末に嘘の自白をさせられ、売国奴として公開処刑されていた。

 その恨みを蒋介石ら全員が覚えている以上、この戦争で講和条約が締結され、中国全土を蒋介石政権が握ることになったら、共産中国政府の上層部は家族もろ共、全員が同じ目に遭うと覚悟していた。


 そう言った事情から、大量の死者を出しつつも、共産中国政府の上層部から民衆レベルに至るまで講和(実質的には降伏)の声が大きくなることは無かったのである。

 なお、こういった共産中国の状況については、日本政府のみならず、米国政府の一部を始め、連合国側の各国政府、軍の上層部の多くが承知していることだった。

 しかし、だからといって、ここまで第二次世界大戦が深刻化し、アドルフ・ヒトラー率いるドイツ政府が独本土から打倒されてしまった現状からすれば、共産中国に対して温情的な講和の呼びかけ等、連合国政府側も呼びかけづらいというのが、現実というものだった。


 少なからず話がずれたので、来春に発動される共産中国打倒の作戦について、あらためて述べるならば、主力となるのは日米両軍になる予定だった。

 何故に来春になるかというと、それは対ソ戦に投入されていた部隊を再配置することで、米国と言えども対共産中国戦用の部隊を基本的に編制するしかないからである。

 今後、米本土で動員可能な部隊の多くは対ソ戦に向けられることになっていた。

 まず対ソ戦が第一、対共産中国戦が第二になる以上、それは仕方のない話であり、マッカーサー元帥といえども渋い顔をしながらも、そうせざるを得なかったのである。


 現在における最終的な作戦案では、米軍24個(歩兵)師団、日本軍12個歩兵師団が、対共産中国戦における前線の侵攻兵力になる予定だった。

 その兵力は、予備も含めてだが、米軍は120万人、日本軍は60万人に達していた。

 なお、満州国軍や韓国軍は、どうしているのかというと。


 韓国軍は、対ソ戦の大損害から、事実上の兵力引き上げ状態にあった。

 表向きは6個師団を再編制の結果、韓国陸軍は保有しているし、海空軍も未だに書類上は健在だった。

 だが、内実はボロボロで、韓国内に韓国軍はほぼ引き上げてしまい、ウスリースク以南の警備に2個師団を展開するのが精一杯と言うのが現実だった。


 満州国軍も、韓国軍よりマシとはいえど、対共産中国戦における中国本土の後方警備任務や満州、ソ連極東領の治安維持が兵力的に手一杯だった。

 こうしたことから、対共産中国戦では日米が主力を占めることとなったのである。

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