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第5章ー17

 こういった状況のために、共産中国政府の統治下にある土地においては、様々な物資不足の為に多数の死者が続出するようになった。


 この当時、四川省等の奥地にまで日米満韓連合軍の空襲の脅威は及んでおらず、四川省等では住民が必要な以上の食料が何とか生産可能だったのだが。

 問題は、それを陝西省や湖北、湖南省等に運ぶ方法だった。

 人力で運べる量は、そもそも限られているといって良い。

 いわゆる大八車、人力で運ぶ荷車で、どれだけのものが陸路から運べるだろうか。

 更にその道中に坂道があっては。

 かと言って、水運も。


 既述のように、1941年秋の時点では日本空軍の攻撃圏内では、まともな機械で動く船は遺っておらず、帆船さえも稀な存在となっていた。

 人が一丁艪で動かす木造船が、日本空軍の攻撃圏内では水運における主力となっていたのである。

 これでは、水運でも充分な物資を運ぶのは困難だった。


 こうした状況に鑑みて、共産中国政府は統治下にある領域において、住民の現地自活を奨励した。

 政府自らは軍需生産を督励し、民需に関しては現地自活を求めるという方策である。

 しかし、この方策は。


 それこそどんな小さな村でも完全自活と言うのは難しい。

 他の村と協力することで、塩等の生活必需品を交易等で確保するのが、小さな村でも通例なのだ。

 生活必需品が欠乏しては、最低限の生活の維持さえも困難になってくる。


 それこそ農具が無くては田畑の耕作が困難になるし、肥料等が無くては農産物の生産量が激減するという事態が発生する。

 そして、塩等が無くては、身体の維持ができなくなる。

 また、医薬品が欠乏しては、伝染病の蔓延を阻止できないし、餓えた身体では、健康な状態なら一晩寝れば回復する程度の軽い風邪さえも、重症を引き起こすようになる。


 そういった民需軽視の共産中国政府の考えが、共産中国政府統治下の領内において、悲惨な事態を引き起こしたといっても間違いなかった。

 勿論、日米の航空隊の戦略攻撃が、重大な打撃を与えたのは否定できない話だが、それ以上に共産中国政府の考え、行動が、住民の間に悲惨な事態を招いたのである。

 それなら、何故に共産中国政府の領内の住民の多くが、そんな共産中国政府を支持し続けたのか。


 それはまず第一に、どうのこうの言っても共産中国政府が対内的にも対外的にも清朝から中華民国に、更に現在まで続く正統な中国政府だったという事である。

 これまで、基本的に共産中国政府と書いているが、公的な呼称で言えば、中華民国政府が正しい。

 ただ、ややこしいことに蒋介石が率いる満州国政府も、公的な呼称で言えば、中華民国政府である。


 これは国共合作等により、中華民国政府において事実上の一党支配体制を敷いていた中国国民党が事実上の分裂を来し、本来の中国国民党執行部をいわゆる左派が掌握して中国共産党と完全に手を組み、中国共産党員が中国国民党執行部を牛耳るようになって、現在の共産中国政府が成立した。

 その過程で、中国国民党の右派や中間派はほぼ粛清されてしまった。


 こうした状況において、1927年の日中戦争、南京事件において、日米英等の連合軍に敗北して投降したことから、日本で亡命生活を送っていた蒋介石は、日米等の後援を受けて、正しい中国国民党を取り戻すとして、満州において中国国民党の右派や中間派の残党を駆り集めて、満州事変に乗じて満州に自らを首班とする中華民国政府を樹立した。

 これが、通称、満州国政府の由来である。


 こういった状況からすれば、多くの中国の住民にしてみれば、蒋介石政権は日米の支援を受けた漢奸政権に過ぎず、共産中国政府が正統な政権と考えるのは、ある意味で当然だったのである。

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